見出し画像

日本会議の研究 菅野完 自民党を支配する日本会議の正体に迫る

市民運動が嘲笑の対象にさえなった80年代以降の日本で、めげずに、愚直に、地道に、そして極めて民主的な、市民運動の王道を歩んできた「一群の人々」がいた。
彼らは地道な運動を通し、「日本会議」をフロント団体として政権に影響を与えるまでに至った。そして今、彼らの運動が結実し、日本の民主主義は殺されんとしている。
安倍政権を支える「日本会議」の真の姿とは?中核にはどのような思想があるのか?
膨大な資料と関係者への取材により明らかになる「日本の保守圧力団体」の真の姿。
日本会議が安倍内閣を支配しているのは、日本会議の「日本会議国会議員懇談会」に所属している閣僚が8割を越えていることが示している。安倍晋三、麻生太郎、高市早苗、甘利明、中谷元、山谷えり子など主要閣僚は、日本会議に所属している。
日本会議が目指すのは、「皇室を中心とした社会を創造するために、昭和憲法が阻害しているので改憲し、昭和憲法の副産物である行き過ぎた家族観や権利の主張を抑制し、靖国神社参拝などで国家の名誉を最優先する政治を遂行し、国家の名誉を担う人材を育成し、国防力を高め自衛隊を積極的に海外派兵し、各国との共存共栄をはかる」。日本会議の活動方法は、個別目標に相応した分科会的な別働部隊の団体を通して、シンポジウムを開催し、署名活動を行い、街頭演説を行う主張活動、日本会議地方議員連盟や地域の市民運動を装った日本会議の地方支部を通して地方議員に働きかけ請願書や意見書を次々に議会で採択して国に意見書を提出している地方活動。日本会議の活動を支えているのは、定例議会ごとに意見書を提出する高度な事務能力と異なる宗教団体を束ねられる理想的な圧力団体としての高いマネジメント能力。
国会議員が日本会議になびくのは、確固たる固定票を出せる日本会議の計数管理能力ゆえ。日本会議の支持者にあるのは、リベラルが嫌いで国歌斉唱に酔うという幼稚な保守っぽい気分。
なんとなく保守っぽい集団を見事に統合して圧力に変えていける日本会議事務方の優秀さが、自民党を改憲に向かわせている。
日本会議の源流は、70年代安保の「生長の家」の学生運動に参加していた伊藤哲夫のグループ(安倍晋三の政策ブレーン「日本政策研究センター」)と椛島有三グループ(日本会議を運営している日本青年協議会と日本会議国会議員懇談会)。
日本会議の戦略の始まりは、元号法制定運動の時に基本パターンが固まった。
日本青年協議会の勧誘や洗脳のやり方の源流には、生長の家があり、「保守の怒り」で日本青年協議会のオルグの実態を暴露した早瀬善彦の証言によると「1年目は生長の家の谷口雅春など四先生の教えを徹底させる、二年目は天皇信仰を徹底させる、三年目は谷口雅春の教えを植え付ける」、そして生長の家の教義には天皇という中心がありそこに一切の真理がありその真理を信じる中心帰一という教義に日本会議の主張の源流がある。
市民運動のノウハウに愚直に積み重ねた日本会議によって民主主義が殺されようとしている現在だが、在特会によるヘイトスピーチに対抗するヘイトスピーチ対策法が国会議員に対する働きかけや陳情の積み重ねで締結されたことや保育園不足の問題が市民運動によって明らかになったこと、官邸による内閣人事権を乱用する横紙破りなど安倍政権の専横を明らかにして安倍政権の支持率を下げたことを見ると民主主義を生かすのは民主的な市民運動だという希望が湧く1冊です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?