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【ジャックジャンヌ】高科更文ルート感想:荒々しくも眩しいクォーツのアルジャンヌ

発売当初から絶対好きだとわかっていたジャックジャンヌ。中途半端なタイミングでやるのがなんだかもったいなく思えて、発売されてから随分月日が経ってしまったけれど、ついにプレイし始めた。

感想を書くなら多分全部プレイしてからの方がいいのは重々承知だけど、こういうのって新鮮な悲鳴を記録しておくのが良いことが多いので、鉄は熱いうちに打てとばかりに思うままに綴っていこうと思う。もちろんネタバレを多分に含む内容になる想定なのでご注意を。

今回は高科更文ルート

わたしが1人目に選んだのは主人公が所属するクラス「クォーツ」のエースで傑出したダンスの才能を持つ高科更文くん。
理由は単純に、なんかピンと来たから。(とはいえビジュアル見た時の初印象だけで超スキー!となった子はおらず、フミさんは溢れ出る自信のオーラがなんかいいな、と)
事前情報で、高科更文ルートはひときわ糖度が高く、「そういう描写がないだけのTL」「他のルートの糖度の低さがやや拍子抜けに感じられる恐れあり」等々言われているのをみて、彼から攻略すべきかは正直かなり迷った。けれど乙女ゲームの一巡目のプレイほど新鮮に記憶に残るものはないので、やはりピンと来たルートにすべきだよなーと思い、このルートを選ぶことにした。

残酷なまでに「才能」を描く

結果…、本当にこのルートにして良かった。。。

ジャックジャンヌは男性だけが所属できるユニヴェール歌劇をテーマに扱う作品。それだけあって才能の描き方が残酷だ。
ユニヴェール生である以上、ひとりひとり何かしら光るものは持っているはずなのに、上には上がいて、芸事の世界だからクラス賞や個人賞といった形で常に競争にさらされている。まだ一周目だけど、「このキャラはこのキャラにこういうところでは敵わない設定なんだろうな…」という明確な序列をプレーヤーが感じ取ってしまうほどには、才能に対する苦悩を随所で匂わせてくる。

一方、高科更文はその序列のなかで常に上位に君臨し続けるいわゆる「強者」側のキャラクターだ。クォーツのアルジャンヌ(クラスで1番の女役)として登場する彼は、とにかく最初から艶やかで華やかだ。だから、舞台の上ではびっくりするくらい色っぽい女の人の姿をしているのに、普段は男気溢れてめちゃくちゃ後輩思いで面倒見がいい「フミさん」になる彼を見て、正直脳がバグりかけた。新しい性癖を植え付けられた気分である。

強者たる彼は、見ているものも考えていることも常にこれからのことだ。もちろん彼にも、立花継希の卒業後、燻っていたクォーツを導けなかった冬の時代がある。それでも彼はいつも自分の才能と真摯に向き合い、これからも舞台に上がり続けることに迷いはない。

ルートを終えてつくづく思ったのが、フミさんはいつもダンスルームか稽古場にいたなあ、、ということだ。主人公の希佐と距離が縮まる重要なシーンではかなり色っぽい雰囲気になるんだけど、その時も大抵稽古場とかユニヴェール劇場にいて。(ところで彼の親愛度シナリオはびっくりするくらいエロい。その件は後述)
他のキャラも似たような感じなのかもしれないけれど、この人ほんとずっと踊ってる。年中無休。これについていける希佐もやっぱりすごい。

フミさんが彼女を恋人にしたくなった理由は、希佐が彼の複雑な家の事情を気にかけてくれたり、彼女がクォーツのみんなに心を配りバラバラの個性をまとめあげる歯車の役割を担えた、というのももちろんあるとは思うけど、やはり「ずっと彼と同じものを見続けられる才能を有すること」が1番大きかったのではないかと思う。

パートナーを組んでいた継希さんなきあと、クラス優勝ができなくなり低迷していたクォーツのなかで彼と同じものを見ている人間はきっといなかった。それは壮絶な孤独だろう。だからこそ、常に自分の芸の上を見て進化し続ける希佐の存在が慕わしく、より身近に感じられたのだろう。

印象的だったのは、秋公演で別キャラが役を外されてしまったシーン。役に選ばれる選ばれないというのは多くのユニヴェール生にとって死活問題だが、フミさんは希佐だけに、常に選ばれるもののみが知る孤独と苦悩がある、とこぼす。彼は、役に選ばれるかどうかも重要だが、その先を見据えていなければ成長は見込めないとすら考えている。彼の言い分はもっともだと思う。だが、役に選ばれない生徒からすれば傲慢に聞こえるかもしれない言葉だろう。しかし希佐にだけはこうした内面を素直に曝け出せる。彼女なら彼の言葉を身をもって理解できるとわかっているからだ。

ところでわたしはこういう才能の話、大好きである。『ピンポン』とか『かげきしょうじょ』とかめっちゃ好きだもの。

好きなスチルの話

話は変わるけれど、このゲームは石田スイ先生がキャラデザを担当してるだけあって本当にスチルが美麗で……。お気に入りがいくつかあるのでその話をば。スチルの画像は当然貼れないので各自ゲームを買って確認してみてください。

夏合宿:水族館レストランのスチル

まさかの共通ルートのスチルだけど、ひょっとしたら1番くらいに好きかもしれないスチル。

テーブルを囲んで向かい合うフミキサ。彼らの周りはぐるりと水槽で囲まれていて、薄暗く幻想的な雰囲気。
向かい合う2人の表情もとても好き。キサがぼんやり焦点の合わない目で周囲を眺めているのに対し、フミさんはしっかりキサを見つめている。というかキサだけを見ている笑。
その視線はどこか相手を試しているようにも見えるし、興味を抱いているようにも見えるし、みんなと一緒に海で遊べない(女であることを隠しているため)彼女を思い遣っているようにも見える。楽しんでくれてんのかなー?とか、コイツやっぱかわいいわ、とか考えているのかも。なんとも曖昧な表情をしていて、それがいい。

のちにフミさんが入試の時からキサの性別に気づいていることが判明したので、この場所をチョイスしたのもめちゃくちゃ納得した。ほんと、こういうところずるい。初見の時、女だってこと知らないはずのフミさんに急にロマンチックな場所に連れてこられてめちゃくちゃびっくりしたので。

夏合宿:温泉のスチル

またまた共通ルート、夏合宿の温泉スチル。これは合宿所にある温泉(寮ごとに貸切)に主人公がこっそり夜中に入りに行くシーン。そこでフミさんに鉢合わせる、というもの。

えー?!どうなっちゃうの?というシーンでもあるし、このシーンから、フミさんやっぱキサの性別気づいてるんだろうなあという考えになった。

このシーンに限らず、フミさんの距離感の取りかたってすごく良くて、来る時は予想だにしない深さまでくる(後述)のに、キサが舞台に集中している時には胸に秘めた熱い想いで彼女を困惑させないように精一杯配慮してるのを感じるし、この温泉のシーンも、極力距離をとって、なんてことない顔でやりすごしてくれる。うーん、好きだなあ。

(たぶん)ド定番:看病スチル

物語終盤、ユニヴェール公演をまえに体調を崩してしまったフミさんをお見舞い行ったときのスチル。乱れたフミさんの髪が色っぽいのは置いといて、ずっと先輩として導いてくれていた彼の弱い姿や、すこし甘えた姿を見られる貴重なシーン。
もうすぐ三年生が卒業してしまうという事実も相まってすごくすごく切なくて愛おしくて胸が苦しくなりながら、フミキサの今後に思いを馳せてしまった。

ところで、このシーンがユニヴェール公演の演目「央国のシシア」の最後のアドリブにも繋がるわけだけど、正直あの脚本はフミキサのためにあるような脚本だった。フミキサの異世界パロ二次創作かと思った(?)他ルートだと別脚本になるんだろうか……。あるいは配役が変わるんだろうか。まだまだ知らないことも多いので、これからが楽しみ。
ちなみにクォーツの公演演目は、個人的にはストーリーでは「オー・ラマ・ハヴェンナ」、フミさんの役目線だと「メアリー・ジェーン」が1番好きだった。メアリー・ジェーンの高科更文、えげつないくらい可愛い。狂う。
ジャックジャンヌは作中の劇のシナリオがめちゃめちゃクオリティ高くて本当に観劇してる気分になれてそこも最高。たぶんこの作品でなんだかんだ1番えげつない才能の持ち主は根地先輩なんだろうなー。

最後に:落雁のスチル

え?めっちゃ序盤では?と思われたかもしれないけど、これはわたしが確実に高科更文に「落ちた」思い出のシーン。

あまりに突然すぎる「お前のこと好きだわ」発言にめちゃくちゃ動揺させられたのも大きいけど、彼の鋭さと観察眼にも驚かされた。親は納得してんの?とキサの訳あり事情に鋭く切り込んだり、お前って基本的には陽の人間ぽいのにときおり影さすよな、とキサの感情の機微に気を配っているのもわかるし、彼の言葉ひとつひとつの説得力に印象がガラリと変わった。

彼のビジュアルから若くて美しいお兄さんならではの軽薄さのようなものをどうしても想定してしまっていたので、彼のユニヴェール歌劇への真摯な姿勢に裏付けられたこういう真面目さや面倒見の良さですっかり彼のことが大好きになってしまった。そういう女子、多いのではないだろうか。あと、パンクロックな見た目のわりに生い立ちの影響か好みがばりばり和風なのがカワイイ。

垣間見える「男」

高科更文ルートを語るうえで避けて通れないのは、彼のなかにめらめらと熱く燃え盛っている「男」の部分だろう。

前述のとおり、フミさんの距離感は絶妙で、キサが学内での立場を危うくするようなことは絶対にしないし、彼女の芸の上達の邪魔になるようなこともしない。キサもフミさんへの感情に流されて芸を疎かにすることは絶対にない。それが見ていてすごく気持ちいい。

ただ、キサが彼の懐に飛び込んできた時ばかりは別なのだ。キサが彼への想いをほのめかせると、彼は空腹の獣のような視線を送ってくる。ただ、キサのことがあまりに大切すぎて、彼女のうぶなところや微妙な境遇を慮って行動を起こすことはしない。でもキサのことが欲しくて欲しくてたまらない。そんなフミさんが焦れに焦れているところはあまりに眼福すぎてやばい。
それだけ「男」が垣間見える彼だからこそ、キサの告白に頬を赤らめて微笑むちょっと初々しい反応もまた可愛くて苦しい。

彼のこういう、恋愛に対しても貪欲な姿勢が、このルートの糖度を高めている要因なのだろう。高科更文は、迷うこともあるけれど、結局自分の決めたことに自信を持って突き進む男なのだと思う。だから夢も恋も、彼が主体性を持ってどんどん進めていく。

ところでエンド後、春から暮らす部屋の鍵をフミさんが渡してくれたが、そんなことしたらもうあっという間に食べられてしまうんでは?と思ってしまった。続編の制作が決定しているので、その辺も描かれるのかな。期待。

おわりに

絶対に好きな予感しかしないと思いつつプレイし始めて、いざ一巡目を終えたら、喪失感がすごくて、早くユニヴェールに戻りたくて、でもわたしの会いたいフミさんにはもう会えなくて……という気持ちが消化できず、長々と書いてしまった。

とはいえ経験上、乙女ゲームの1人目の攻略キャラが最推しになることはそんなに多くはないので、まだ本当の魅力に気づけていないキャラがいてはいけないのでメインキャラクターは近いうちに攻略する予定。

ここまで、クリア当日の新鮮な悲鳴でした。読んでくださった方ありがとう。

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