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TVアニメ『推しの子』人気の理由を徹底考察

2023年4月期、各ストリーミングサービスで常に上位にランクインし続けていたTVアニメ『推しの子』。放送と同時に、原作漫画が売り切れる書店が続出し、最終回放送後には、第2期の制作も決定した。絶賛話題沸騰中の作品である。

ちなみに、私は生まれてから一度もアイドルを好きになったことがない。そんな私が、アイドルを題材にした『推しの子』にハマってしまったのはなぜなのか。その答えを探るためにも、この作品の魅力を徹底的に考察したいと思う。

(以下、第1〜3話のネタバレを含みますので、ご注意下さい。)

第1話で視聴者を惹き込む構成

『推しの子』の第1話は、約90分である。TVアニメの尺としては異例の長さであり、人気が出るか出ないか分からない状況でこの長尺にするのはかなり挑戦的なのではないかと思う。しかし、第1話を長い時間をかけて描き切ったからこそ、その後の人気に繋がったと言っても過言ではないくらいに、素晴らしい構成だった。それは、そこまで描かなければ『推しの子』がどんな話かを伝えられなかったからだ。

物語は、絶大な人気を誇るアイドルグループ、B小町のセンターであるアイが、16歳という若さで妊娠するところから始まる。田舎の病院ならバレないと思っていたアイだが、偶然にも担当医のゴローは自分のファンだった。研修医時代に出逢い、救うことができなかった患者のさりなちゃんは、アイのことが大好きで、さりなちゃんの姿に重ねて、アイを全力で推していたのだ。紆余曲折ありながらも、ゴローはアイに元気な子を産ませることを約束した。しかし、出産予定日、アイのストーカーと思われる男に、ゴローは殺されてしまう。「もし、芸能人の子供に生まれていたらって、考えたことはない?」そんなさりなちゃんの言葉が脳裏をよぎると、アイの子・アクアとして生まれ変わっていた。そして、双子の妹・ルビーは何処となくさりなちゃんに似ていた。ここまででも、かなり衝撃的な展開である。なるほど、転生モノなのか。信じられない結末を知らない間は、そう思って観ていた。ゴローを襲ったストーカーがアイの自宅に現れ、アイが刺されてしまうまでは。母であり、推しであるアイを亡くした二人は、絶望に打ちひしがれる。そんな時、アクアにあるアイデアが浮かぶ。芸能界にアイを殺した犯人がいる。ならば、必ず見つけ出して復讐してやる。そう、『推しの子』は、単純なアイドルの話ではない。いや、アイドルの話ではあるが、転生モノでもあり、復讐劇でもある。第1話に『推しの子』とは何かが完璧に詰め込まれており、すぐに続きが観たくなった。これはずるい。ハマってしまうに決まっている。完全に視聴者を虜にさせる構成であった。

目の肥えた視聴者を裏切る演出

『推しの子』は、芸能界の裏事情も非常に細かく描かれている。例えば、第3話の「漫画原作ドラマ」。子役から活躍する有馬かなは、現場では上手い演技をすることが全てではなく、そのドラマが何を目的に企画されて、その為に自分に何が求められているかを汲み取ることも、使ってもらえる役者になるのには必要なことだと淡々と語る。そんな芸能界に根強く残る暗黙の了解に、それで本当にいいのかと、堂々と斬り込むアクアの大胆な行動も、様々な作品を観て目が肥えた視聴者を驚かせる。毎話、想像を遥かに超えていき、鳥肌を立たせるのだ。

オープニングテーマ・エンディングテーマ

この作品のオープニングテーマはYOASOBIの『アイドル』、エンディングテーマは女王蜂の『メフィスト』である。『推しの子』を語る上で、なくてはならない存在であり、作品の一部である。

『アイドル』は、アイの生涯を描いた楽曲であるように思える。アイドルとは、嘘という愛で星のように輝く生き物である。それでも、いつか本当に愛することが出来たらと願ったアイの瞳の星は、最期まで輝き続け、嘘ではない愛を手に入れることが出来た。アイの瞳の星を受け継いだアクアとルビーも、スターのオーラを隠すことは出来るはずもなく、人々を魅了していく。

一方の『メフィスト』は、アクアとルビーへの鎮魂歌であるように感じる。母と推しを一度に亡くし、蘇る前世の記憶と闘いながら、再び人生をやり直すという計り知れない葛藤を抱えながら生きる2人が、どうか幸せになれるように、次こそは安らかに眠れるように、そんな願いが込められているように思えてならない。

視聴者を惹き込む第1話、想像を超える演出の数々、主題歌、書きたいことはまだ沢山あるが、他の作品では観たことがない唯一無二性が、皆をこの作品の虜にさせているのだと思う。

もし、まだ『推しの子』を観ていないなら、まずは第1話を最後まで観てみて欲しい。そして、そのまま最終話まで観て、もう一つの「推しの子」の意味に震え上がって欲しい。

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