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新型コロナワクチンとがん患者

新型コロナワクチンの接種が本格的にスタートしてきましたね。

一般的な人たちのワクチンの効果や安全性の情報はよく見られるようになってきたけど、がん患者に向けた情報は、あまりありません。

不安になっている患者さんもいらっしゃると思うので、これから接種しようと考えている、がん患者さんの選択の助けになればと思い、先日、医療従事者枠で2回目のワクチン接種を終えたばかりの僕の考え方をまとめ、読んで頂いた方の参考になればと思います。

この記事は、がん患者及び、一般的な人たちのワクチン接種について、
現時点(2021年5月31日)でわかっている、効果・副作用・注意点をまとめています。また、僕が接種したファイザー製ワクチンを中心に解説しています。

ワクチン接種は受けた方がいい

まず、結論から言うと
がん患者は、ワクチン接種を受けた方がいい
考えています。

僕も接種する前日まで、
「やっぱりキャンセルしようか」と
ギリギリまで悩んでいました。

しかし、現時点で判明しているデータから、がん主要学会の見解は
一致していて積極的な接種を推奨しています。

その理由として以下の通りです。

1. がん患者は新型コロナ重症化のリスクが高い
2. ワクチン接種で感染・重症化の予防効果を期待できる
3. ワクチンはがん患者にも安全に使用できる

がん患者さんは、病気や治療によって新型コロナウイルス感染から体を防ぐ免疫機能が低下しています。

僕の場合、大腸がん原発で肝臓、肺に転移していました。

抗がん剤→手術→放射線と行っており放射線は
肝臓と肺合わせて、合計25回治療しています。
そのため治療した肺の場所は、ダメージを受けており新型コロナウイルス感染症状である、重篤な肺炎は致命傷になると考えました。

もしコロナウイルスに感染し、重症になれば致命的、今日までがんと共に生きてきたのに、未知のウイルスが原因でなくなりましたでは、やりきれません。

ワクチンの効果は、免疫反応を利用して体にウイルスの抗体をつくり、感染を防ぐもの。そのためワクチンが効くためには、免疫反応が大切な鍵です。

そのため、注意が必要な患者さんは、特に免疫力が低下(白血球減少)している患者さんです。重症化リスクが高くなり、ワクチンの効果や副作用が一般的な人と変わる可能性があるからです。

米国CDCによる報告によると健常者に比べて、がん患者さんは重症化リスクが高いと言われています(米国CDC)。

がん患者さんの中には、基礎疾患を持っている方や高齢者も含まれるため重症化のリスクが高いと考えられているからです。

そのため、ワクチン接種で感染・重症化のリスクを少しでも防ぐことが大切だと考えています。

ワクチンの副作用を知っておくことが大切

ワクチン接種をする上で一番気になるのは、やっぱり副作用ですよね。
ファイザー製ワクチン接種の主な副作用はこちら。
(厚生労働省:「新型コロナワクチンQ&A」より)

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接種したほとんどの人が、
接種部位(肩)の痛みを感じています。

僕の場合、接種後すぐに痛くはなかったけど、次の日から痛みが出てきました。また一回目より二回目の方が倦怠感は強く、熱こそ上がらなかったものの疲労感が一日続き、筋肉痛もありました。三日目には軽快していたので、副作用についてそれほど心配する必要もないのかなと思います。

それでも注意しなくてはいけないのが、まれな頻度で起こるアナフィラキシー(急性アレルギー反応)です。もし万が一アナフィラキシー症状が起きた場合でも、接種会場ではアドレナリンを注射するなど適切な対応できる準備があるので、安心して接種することができます。接種後は、通常15分程度経過観察してから帰るよう指示があるので心配ありません。

がん患者さんの副作用について

次に、治療中のがん患者さんの副作用について、治療前後にファイザー製mRNAワクチンを接種した場合の副作用についてまとめた論文はこちら。(1回投与と2回投与の安全性と免疫原性:原文)(要約はこちら)

この結果では、がん患者さんに重篤な副作用は見られていません。ワクチン接種後に出る接種部位の痛みや、発熱、関節痛などの風邪様症状は、がん患者さんの方が頻度が低いという報告もあり、免疫力の低下による反応が弱いと推察されているようです。
まだデータが少ないので、今後注意する必要はありそうですが、現時点でファイザー製のmRNAワクチンは、治療中のがん患者さんでも安全に使えると考えられています。

ワクチン接種のタイミングと感染対策

しっかりと効果を得るためにも、2回の接種を受ける必要があります。
治療中の患者さんはもちろん、主治医と相談しながら、抗がん剤治療の前や、治療後の免疫機能が回復するタイミングで接種できれば理想的だと思います。

ワクチンの効果が出るまで、2回目のワクチン接種後1〜2週間のタイムラグがあり、その期間を過ぎても、100%かからなくなるわけではないので注意が必要です。

治療中のがん患者さんの場合は、効果が不十分になってしまう恐れもあるので、接種後も、手洗い・マスクと三密回避などの感染予防はこれまでと同じように徹底することが大切ですね。

ワクチン接種と陰謀論

長引くコロナ禍の中、ステイホームでネットサーフィンしている人も多く、真実が何者かの企みによって隠蔽されているといった「陰謀論」がSNSでもよく見られます。

中でも先日驚いた記事は、「コロナワクチンは殺人兵器」、「コロナワクチンにはマイクロチップが入っていて、5G電波で操られる。打てば5年で死ぬ」などと主張する福井県の自民党県連会長代行を務める県会議員の発言。

ここまで酷い内容でなくても、「ワクチンを接種することでCOVID-19を発症する」といった噂や、「ウイルスの遺伝子がヒトのDNAに組み込まれる」といった噂を聞いたことがあるはずです。

ただでさえ病気と向き合いながら、日々真剣に生きている患者さんに不安を不安で煽るようなセンスのない発言や記事には、正直うんざりしてしまいます。

自分の命や健康が脅かされると一気に不安モードになってしまう状況は、「あなたの病気はがんです」と告知される状況と似ています。

がんをネットで検索すると、ネガティブな情報ばかり目につき、藁も掴む心境で誤った情報に飛びつき、どんどん悪化していき、さらに不安になるからです。

そもそも、インターネットで検索する情報は、自分に関心のある情報が次から次に目につくようにプログラミングされているため、都合のいい一歩通行の情報ばかりが集まり、自分の信じたいものだけを信じるようになってしまいます。これは、闘病生活中に何かに傾倒するケースによく似ているので注意が必要です。

反ワクチンを訴える情報を鵜呑みにするうちに、健康被害のイメージを受け付けられてしまい、正しい判断ができないまま手遅れになり後悔することがないようにしてもらいたいです。

最後に

新型ウイルスをめぐるあらゆる不確実さが、私たちを迷わせ、不安にさせる毎日です。世界中医療従事者たちが流行を食い止めようと尽力している一方で、事実を前後の文脈から切り離し、感染の広がりについて誤解を招くような情報が多くみられ、ワクチン接種に対してますます不安になってしまうのは当然です。

ただ闇雲に新型コロナワクチンに対して不安になるのではなく、副作用が起きたとしても、事前に起こりうることを知っているかどうかで、受け止め方は変わります。そして事実に基づいた正しい情報を選択することも大切です。

そして、ワクチン接種は、個人の自由意志によるため接種を望まない人もいます。宗教上の理由もあれば、健康上の問題で接種できない人もいます。
ただどんな理由であれ、接種したしてないに関わらず、否定するようなことはあってはいけないと思います。

自分の状況をみて、副作用等を理解した上で接種するか否か判断してもらいたいです。


▼健康新型コロナワクチンについて以下の情報も参考にお願いします。

【ワクチン】
厚生労働省:新型コロナワクチンについて
【がん患者さんとワクチン接種について】
▶日本癌治療学会・日本癌学会・日本臨床腫瘍学会の3学会合同
「新型コロナウイルス感染とがん診療についてQ&A」
国立がん研究センター:
「がん患者さんに対する新型コロナワクチンの接種について」




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