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はじめてのギャラは500円でした(7)

広告コピーって。

なんかカッチョいいコトバをテキトーに言って、
フワッと品物を売りつける錬金術。

・・だと、なんとな~く思っていました。


少し(←当時ね)前の80年代にはコピーライターブームというのがあって、
糸井重里さんや、林真理子さんが世に出てきたのも、その頃。

「おいしい生活。」
「不思議、大好き。」
「ルンルンを買っておうちに帰ろう。」

うまくまとめてるなーとは思ったし、語感は「かわいいな」と思ったけど、
広告としての良さがどこにあるのかは、正直、よくわからなかったです。

なんでもそうだと思うけれども、本当に「すごい人」というのは、
その「すごいこと」を、いとも簡単そうに難なくやってのけてしまうから、
素人ほど「自分にもできそう」って思ってしまうんですよね・・・
そのことについて学んだことのない人・やったことのない人に、
実際の「すごさ」というのは、よくわからないものなので。


だから、自信のないわたしでも、
やってみようと思えてしまったのかもしれません。

曲がりなりにも「編集者」というコトバに関わる仕事をずっとしていて、「コトバを使う」という点での親近感もあったし。



でも、それが大誤算でした・・・



お金と引き換えにスクールで受け取った黄色い封筒の中に、
「第1回目の課題」が入っていました。


ふーん。
課題なんてあるんだ。


養成講座って言うから、行きさえすれば、0から100まで全部教えてくれるんだろう程度の小学生並みの認識でいたので、
習う前から宿題があるということに、ちょっと嫌な感じがしました。

しかも、講義開始の数日前までに事務局へFAXするようにと書いてあって、
ますます萎えました。


課題は

「○○のキャッチフレーズを作りなさい」
「100本書いて、ベスト1を提出すること」

の、2行。


あっさりしてるなー
じゃ、しょうがないからやろうかなー


100本ね。はいはい。

ノートに、1から100まで数字を書いて、
上からどんどん埋めていけば簡単だと思いました。

決まったことを書くんじゃなくて、思いついたことを書けばいいんだから
楽勝だと思いました。

・・・・30本を越す頃までは。




これねー

ホント、これから書くことを信じられないって人がいたら、
ぜひ自分でもやってみるといいです。(←やつあたり)
なんなら、このときもらった課題のテーマをお教えしますから
メールでもメッセージでも、わたしにください。



40本。
同じことの繰り返しが多くなり
言葉の前後を入れ替えただけのものが連発し


50本。
オノマトペに頼り始め、
句点を入れたり、読点を入れたりして無理矢理変化をつくり


60本・・・は、もう、
アタマ真っ白。

振っても、逆さにしても、何も出て来ない。


でも、
「○○について、100本コピー書く」
っていう指令が脳に出ちゃってるから、終わるまで、止まらない。



寝れない。


ゴハン食べられない。


歩いていて電信柱にぶつかる。


気がつくと、○○について考えてる自分と出会う。


電卓打ち間違える・・・のは、まあ、
見てればわかるように、そもそも計算が危うい人で
元からそうだったから仕方ない(笑)としても

魔除けのために全身に念仏を書いた耳なし芳一のように、
あるいは、
金太郎アメのように。
わたしじゅう、どこを切っても「○○」しか出て来ない。


期日ギリギリに、フラフラになってやっとFAXを送りながら


(これはえらいことになった・・・)


と。


お金と時間ばかりか、体力と精神力まで引き算してしまった自分を悔やんだのでした。

なんで後悔って、後にしかできないんだろうねえ?


・・・で、続く!

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