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エッセイ「花のある生活」とは。

みなさんのご自宅には、どれくらいの花瓶がありますか?
”どれくらい”というのは、個数もですし、大きさも含めて。

というのも、私は花屋を開業して1年の駆け出しのフローリストでして。

生まれて30うん年、リアル花より団子でやって参りましたが、食ってばっかの二人目妊娠中の産休期間に、何か自分の肥やしになること(食べ物以外で)を身に着けたいと思い、お花を習うことを決め、産後まもなく小さな赤子を抱えながらの猛練習猛勉強の末、育休中に花屋開業まで漕ぎつけました。

日々、花屋とは、デザインとは、センスとは、商売とは、そんなことを考え咀嚼し時に飲み込んだり吐き出したりしながら、よりよい花屋になるべく試行錯誤を繰り返しています。

花屋を始めてから、様々な角度から”花のある生活の提案”、”花を飾りませんか”と訴求を試みてきましたが、シンプルに売れなくて、私、気付いてしまいました。

「日本では花のある生活が定着してなさすぎる。」

お花を買っても1本~数本だけとか、1種類だけとか、枝物だけとか、そういった買い方の人が本っっっ当に多いです。(私調べ)

私のように無店舗型でブーケやアレンジメントを制作してオンラインで販売しても、なかなか皆様のご希望に沿うことができておらず、だから売れないんですよね。


花の都(少々意味が違うが)であるフランス・パリでは、自宅に花を絶やすことがないほど日常的に花を飾る文化が根付いているため、需要が多く、花屋の数も圧倒的に多いです。

パリの花屋は他店との差別化を図るためにブーケやアレンジメントで個性を表現し、鍛錬を積んだフローリストたちの実力は物凄いレベルの高さになっているそうで、日本のフローリストたちはパリへ花留学に行くほどです。


日本で日常的にお花を扱うというのは、嗜好品・贅沢品というカテゴリーに当てはまってしまう人が多いと思います。お花はすぐ枯れてしまうし、その割には高いし、毎日の水替え面倒だし、飾り方もよく分からないし、そもそも花瓶持ってないし…。

ここから冒頭部の「どれくらいの花瓶を持っていますか?」の問いかけにつながってくるのですが、意外と花瓶を持っていない方って多いのではないでしょうか。

事実、私もお花を始めるまでは一輪挿しの花瓶1つと、某海外家具ショップ(青と黄色のあそこです)にて799円で買った花瓶しか持っていませんでした。

花に興味があっても、花瓶までちゃんと用意している方って意外と少ないと思います。花瓶もなければお花を買おうと思わないし、花瓶を持っていないかも、と思ったらお花をプレゼントするにも気が引けてしまいますよね。

以前知人宅にお邪魔した際に、手土産として私が束ねたブーケを持参したことがあります。
花材選びから始まり、花1本ごとに配置や高低差、全体の見え方に色の重なり、どこから見ても綺麗な自信作。

渡してすぐにほどかれました。笑

渡した方に悪気があった訳ではなく、とても喜んでくれていたと思います。

そのお家には大きい花瓶がなかったので、そのまま飾るという発想がそもそもなくて、家中の一輪挿しをいくつか集めて、ばらして飾ってくださったのです。

私は衝撃を受けまして。
渡した相手のこと、まったく考えられていなかったのだと自責の念に駆られました。

飾る花瓶がなければそりゃバラして飾るしかないしそんな世間のお花に対する価値観や常識も知らずに一人でこだわって自信作だぁつって一人で気持ちよくなっていて恥ずかしいったらありゃしない(ここまで早口)

この出来事が、私が花屋という仕事により一層本気で向き合うきっかけとなったように思います。

私はもっと、肩ひじ張らずにお花を楽しんでもらえるような「花のある生活」を楽しんでほしいと思っています。
皆さんにお花の扱い方から知恵や工夫、裏技などお伝えしたいことがたくさんあります。

そして、切磋琢磨し腕を磨いたフローリストたちの個性とこだわりがつまった「ブーケ」にもっと興味を持ってもらう。
ブーケを置くことで必然的に大きめの花瓶が必要となり、どのご家庭にも一つは大きめの花瓶が用意されていることが当たり前になる。

それだけ「ブーケ」を世間に普及させる。
それが自分の使命だと勝手に思っています。


お花と共存する日常っていいものです。

部屋の一角にお花があるだけで温度が違うような、ふと視界に入ったお花の色彩にキュンとして、水を変えた時に蕾のほころびを見つける喜びに、窓をあけたら風に乗って運ばれてくるお花の香りとか、季節を感じて思い出を増やしたり、はたまた思い出したり。

そんな一瞬一瞬の微細な変化が、私たち人間の心を豊かに彩り、日々の生活をより味わい深くしてくれるのだと思います。


私がお花を作るにあたっていつも思い描くデザインは、野に咲く草花をそのまま集めてきたような、ナチュラルで、それこそ日常に寄り添ってくれるような、そっと彩を添える優しい草花たちを中心に花材を選び、束ねています。雑草と呼ばれるような草や枝も多く使いますし、花より草の方が多いアレンジメントなんかも作ります。

自然豊かな風景の一部を切り取ってお家の中でも自然を感じられる、そんなひとときを提案していけたら、と思っています。


どのご家庭にも大きめの花瓶が存在して、花屋ごとフローリストごとの個性とこだわりがつまったブーケが、見た人の心を動かす、そんな日常が当たり前になるように。

皆様の「花のある生活」がより身近で充実したものとなるよう、私は日々誠実にお花と向き合って、お花を通して皆さんのお役に立てたらと思います。

そのために、こういった創作大賞などのコンテストやSNSを利用して、様々な形で「花のある生活」を提案して訴求して参ります♡


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