見出し画像

散桜鬼 ~ヴァサラ戦記二次創作~

私はいわゆる戦災孤児と言うものです

私が幼少の頃暮らしていた村は
カムイ軍の侵攻に巻き込まれる形で終わりを迎えました

私の父は迎撃の為に駆り出され命を失いました
私は母と一緒に何とか逃げ出すことが出来ました
しかし幾許の時間と共に食べる物も、それを買うお金も底を尽き、そして・・・

「サクラ・・・私たちの下に生まれて来てしまって、辛い運命を背負わせてしまってごめんなさいね?」
「お母さま、そんなことありません!私はお母さまの所に生まれて幸せです!だからそのような・・・」

「サクラ、よく聞いてね?私たちはもう逃げられるだけの蓄えがありません
でも、サクラにはこれからも生き延びてほしい・・・私のたった一人の子なの・・・」

そう言うと母は懐から包丁を取り出し・・・

「私はここまでです・・・
もしお腹が空いたら・・・私を、食べなさい?」
「お母さま?何を言い出すの!?お母さ・・・」

「短い間だったけど・・・サクラと・・・一緒にいられて・・・よかった・・・」

私の言葉にも耳を貸さず包丁を腹に突き刺し、果てました

「お母さま・・・
お母さまーーー!!」

お母さまの遺体に縋り泣き明かしました
どのくらいの時間が経ったか分からないくらい

一通り泣き明かした
立ち上がろうとしても上手く立ち上がれない
立ち上がるだけの気力も体力もない

途方に暮れた私の目に写ったのは・・・

(もしお腹が空いたら・・・私を、食べなさい?)

・・・お母さま、ありがとう
そして、ごめんなさい・・・

私は傍に横たわる母の亡骸を恐る恐る口に運ぶ
冷めた血の味、形容し難い食感
私の為に遺してくれた最後の食事

!?

途端に心臓の鼓動が強くなる!?
身体が熱い! ゾクゾクする!

理由もなく笑みが零れる
狂気じみた笑みが・・・

「フフ・・・美味しい
美味シイワ・・・」

自分の中で何かが弾け飛んだのか
初めこそ肉を切り取ることすら躊躇っていたのに・・・
モット・・・味わいタイ・・・
次第には何かに飢えた狼のように母の亡骸に掴みかかり血を啜り、肉を噛みちぎる

「アア・・・オイシイ
堪ラナイワ・・・

ヒヒッ、ヒヒヒヒッ」

そこに幼い少女の面影は無く
ただ一心不乱に亡骸を貪る
鬼の姿があった・・・

「アア、足リナイ・・・
モット、欲シイ・・・
モット・・・」

--------数年後--------

ヴァサラ軍

天を裂き 海を割る男
覇王ヴァサラと十二の刃 十二神将を筆頭に
数多の隊員達で構成された屈強な軍勢
その一角にあるヴァサラ邸にて・・・

「物の怪の討伐依頼とな?」

「はい!調査によれば夜も更けた森に物の怪は現れ、明けた頃には惨たらしい状態の遺体が一帯に転がっているというのです」

伝令の報告を冷静に聞いているヴァサラは何か思い立ち

「そうか、分かった
早速出向くとするかのう」

「総督自ら行かれるのですか!?」

「当然じゃ
何事も自分の目で確かめねばならん
それに体もなまってきておるからのう
ハッハッハッ!」

そう軽く笑い飛ばすとヴァサラは席を立った

ーーーーーーーー

ヴァサラは八番隊隊長・武神エイザン
七番隊隊長・拳神ファンファンを連れ物の怪が出るという森の近郊にある町を訪れていた

「先生、本当にこの近くの森に物の怪が出るアルか?」

「うむ、伝令の調査によれば間違いなさそうじゃ」

「しかし、物の怪という噂ですが姿までは判明していないそうですが?」

「そうじゃな~、姿が分からんでは物の怪かどうかは疎か人間かどうかすら怪しい
対処のしようもないからのう」

「どんな相手が来ようと返り討ちにするだけアルヨ」

「加減はする様にな?」

三人は森の中に入っていったが、それらしい物は全く分からないまま時間だけが過ぎていく

「殿、あらかた調査しましたが物の怪はおろかそれらしき物すら皆目見当もつきませんな」

「うーむ、我々が何か見落としてるのではなかろうか?」

しばしの沈黙が流れた

「このままではラチがあかんな、一度町に戻って一息入れるとするか」

「そういえば近くに酒場があるアル
そこで休憩するアルよ」

「そうじゃのう、ちょうど腹も減った所じゃ」

ーーーーーーーー

「いらっしゃい!空いてる席へどうぞ!」

「ふむ、なかなか賑わっておるのう」

三人は食事などを注文するとしばしの休息を摂ることにした
食べ進める途中、ヴァサラは酒場の目立つ所にある掲示板に目をやった

「ん、物の怪の討伐依頼か・・・
店主、この酒場も物の怪に困っておるのか?」

「ええ、仰る通りで
騒ぎが出る前は今よりずっと賑わってたんですが、今じゃこの有り様で・・・」

「そうか・・・
それは難儀じゃ
早いとこ解決せねばのう・・・」

しばらく貼り紙に目を通しているとその物の怪討の紙の横にもう一枚、貼り紙が貼ってある

「この紙は?」

「ああこれですか・・・
これは近頃、傍の森を縄張りにしている賊共の討伐依頼です」

「アイヤー
物の怪だけじゃなく賊まで出るアルかー」

「ええもう、この状況が続けばこの店も何時までもつやら・・・」

「殿、これは一刻を争いますぞ」

「エイザン、お主の言う通りじゃ」

三人は早々と食事を済ませ一週間ほど手分けして森を搜索し異変があれば対処する算段で一致したが物の怪はおろか賊すらなんの手がかりも見つからなかった

「これだけ搜索しても何の情報も得られんとはのう・・・」

「先生~、一旦引き返した方が良いアルよ」

「殿、いかが致しますか?」

「ファンファンの言う通りじゃな
引き返して様子をみるか」

こうして三人は一度引き返し、しばらく様子を見て再度調査を進める方針で一致した


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?