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レガシー

結婚して料理が趣味になった。

家族の評判がいい料理トップ3は、茶碗蒸し、りんごの入ったポテトサラダ、巻き寿司。

すべて亡き義母が教えてくれたものだ。

他にもゆで卵がゴロゴロ入ったサンドイッチ、ローストビーフ、ミートソース、鯛めし、イカ飯、いなり寿司…結婚するまで、こんなものが家で作れるとは思っていなかった。これらの料理を作るときは義母のことを必ず思い出す。 

一番最初に教えてもらった料理が、ナスとピーマンとベーコンの味噌炒めだった。

結婚して間もない6月の初めだったと思う。黒い大きな鉄製の中華鍋で作ったその料理の美味しかったこと!
料理を作りながら、どんな会話をしたかまではっきりと覚えている。

私が一番好きだった義母の料理は、せいろで蒸したお赤飯。私も赤飯は炊飯器でよく作るが、せいろで蒸すのと、炊飯器で炊くのとは、米の立ち方が全く違う。義母の赤飯を超える赤飯にはまだ出会っていない。

当時、12月仕事納めして、ほっとしていると、義母から「餅つきするから手伝って」と電話がかかって来るのが苦痛だった笑

餅つき(餅つき機で)から始まって、大晦日の料理(巻き寿司、ぶりのあら煮)+おせち料理作りがセットだ。

餅つきというイベントを通じて、近況を語り合い、たわいない話をしながら、家族の絆が深まっていく。

当時はめんどくさかった餅つきだが、今、年末のその季節になると、みんなで餅つきをしていた当時がものすごく懐かしい。もっとあの時を噛みしめとけばよかったと思う。

おせち料理を自宅で作る人は当時でもそんなにいなかった。

錆びた釘を入れて、コトコト6時間くらいかけて黒豆を煮ていく。

花酢蓮(はなずばす)=れんこんを飾り包丁で花の形に切る。
椎茸のかさには十文字の切れ目を、肉巻きごぼうを門松に見立て斜めに切って、スモークサーモンを丸めて薔薇の花を作る。

栗きんとんはさつま芋の皮を厚く剥いて蒸して裏ごしして、くちなしの実で黄色く色付けし、最後にふきんに包んできゅっと絞って茶巾にする。

それぞれの具材の意味も教えてもらった。
もちろん私の娘2人も知っている。

手作りのおせちは言葉にできないくらい美味しい。

私は今でも正月には必ずおせち料理を作る。

4年前、結婚して大阪に住んでいた次女は「ママのおせち料理を作りたいから教えて」と、広島と大阪をzoomで結んで一緒におせち料理を作った。

代々受け継がれる家庭の味、これほどのレガシーがあるだろうか?

今、孫が私のポテトサラダを食べたら「りんごが入ってるから、ババが作ったポテトサラダだ!」と喜んで食べてくれる。
ケチャップを使わず、トマト缶とトマトジュースで作るミートソースも大好きだ。
義母の味が4代先まで受け継がれている。

朝、写真の義母と目を合わせながら、仏壇に手を合わせる時に、背筋がピンと立ち、合掌する指が伸びる。

義母はすごい人だったと今更ながら感心する。
亡くなってもなお、私が料理をする時に毎回思い出してもらえるのだから。

義母が元気な時にもっと感謝の言葉を伝えられたらよかったと悔やまれてならない。


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