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〔読書評〕水上勉 『雁の寺・越前竹人形』

京都の相国寺を散歩していたら境内に瑞春院という支院がありました。
ここは作家の水上勉(みずかみ・つとむ)が修行をしたお寺です。


表題作の『雁の寺』は水上自身の瑞春院での修行生活を元にした作品とされているようです。
禅寺の厳しい作務(さむ)と、お坊さん(昔の京都弁では独特のアクセントで「おっさん」と呼んだようです)たちの堕落が描かれています。
少年僧・慈念の猟奇的な自虐や恩讐が凄まじい一方で、それに対比される雁の襖絵の美しさ、優雅さが目を引きます。


『越前竹人形』は竹人形師親子2代の愛欲と純情が描かれた物語です。
花街の人情の機微、人の情、男女の情が書き込まれていてなかなか読み応えがあります。

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