本書が書かれた時代は、まだまだ実体経済が成り立つ時代でお金儲けと言っても資本家が労働者から搾取するレベルのもので、資本家が持つ資本と言っても労働者の数を超えないレベルであったろうから、まだまだ逆転のチャンスもあるので持たざるものも期待をもって生きていける時代だったであろうと思われる。
しかし、現代では、雑誌フォーブスによると、2019年に資産10億ドル以上のビリオネアがアメリカには705人もおり、その一方で国民の半分ちかくがその日暮らしの生活をしていて、その後のコロナ禍でさらに格差が開いていると聞く。
また、最近ではメタバースという新たなテクノロジー用語の世界では、現実とは異なる仮想空間や現実を拡張した仮想空間をインターネット上に構築し、その空間上の仮想的な土地を現実世界の不動産のように売買し、バブルを起こしたりしている。さらにはNFTといういわゆる暗号資産のしくみを使って、デジタルな空間の権利情報を暗号化した情報に落とし込んで、決して権利者以外に破られることのない暗号資産として自動売買するしくみと融合させたりしている。このように土地開拓にお金がかからず、オープンで仮想的で無限に広げられる不動産取引という新たな市場を作り出し、そこで現実世界とは関係ない世界で生み出された富が、実体経済や現実世界の政治をコントロールするために利用されるというまやかしの世界が生まれようとしています。
金銭万能の考え方を「物質の奴隷」といっていたころはまだましで、本来人間が住む現実の宇宙に存在する4次元空間を離れ、ネット上に真の形而上的仮想世界を作って精神をそちらにおいて生活をはじめてしまった新人類には、金銭すら物質ではなく実態のないなにかになるのだろうか。
このような時代にこそ、メタバースがよりどころとしている半導体技術やAR/VRデバイス技術、AIや3DCG、ブロックチェーンといったリアルな技術の本質を理解しつつ、現実世界との融合による価値や汗水流して働くことによる価値を使った空想に負けない新しく古い政治や経済のしくみを作り出せたらと思う今日この頃です。