「人はこの世に生まれた以上、必ずなんらかの目的がなくては叶わぬこと」とはいかにも明治のじいさまがのたまうことだなと思いはしますが、「仁者は己れ立たんと欲してまず人を立て、己れ達せんと欲してまず人を達す」というのはこの通りだなと思う。
そもそもがこんな理不尽な世の中を生きていく上で、人に言えるような夢や目標を持ちなさいというのは結構酷な話で精神安定上よくないので、私も教師の立場なのですが、そのようなことを若者に強制することは今の社会では難しいなと思ったりするのですが、孔子のいう道理にあった生き方をするのは大いに同意できます。さすが孔子さまです。
私もそれなりの学歴を保持し、外資系の会社に就職する名目で上京してきて、エンジニアとして真面目に働いてきたと思ってはいるのですが、いざ独立して仕事をするとなったとき、家族や親戚に頼りにできるものはなく、よりどころとなるものはただ自分の実力といままで培ってきた信頼しかないとヒシヒシと感じるわけです。
そりゃあ、藤沢先生ほど周りに錚々たる人たちが控え、国が近代国家として成長しようとしており、混乱や課題だらけの世の中であれば大きく活躍する夢も希望もいだけたでしょうが、いまのような成熟した世の中では、学歴や特殊技能を持たない多くの若者は自分を落ちこぼれと認識し、鬱になってしまうのもよくわかります。
そんな中、会社の仕事を副業で手伝ってくれている人が、簿記という技術が公平な経済を回していく上で一番基礎になっていることに自ら気づき、二級を取得すべく勉強をはじめたことに最近大変感銘を受けました。というのも、その人も田舎での閉塞的な暮らしに耐えられず、学歴もないのに上京してきたタイプの人で若干ブラックな企業でこき使われているOLさんなわけです。その厳しい環境で生きている中、より安定的なポジションを獲得すべくもがいている途中、これは学んでもいいかなという分野を自ら見つけ精進しているのはとても稀有なことで応援したくなります。
私も人生の目的とはなんだかよくわからないですし、そんなものはなくても充実した日々は送れると思っている人間なのですが、学歴やツテがないために苦労をしている人を陰ながら応援していくという些細なことは続けていければなと思っています。