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#大阪テレビ放送 開局前のサービス放送 1956/11/9〜

●ドジャース戦生中継
 1956年米ナショナルリーグの覇者となった「ブルックリン・ドジャース」は、日米親善野球のため、各地を巡りながらさまざまな日本人チームと試合した。
 当然、テレビもラジオもこれを中継する。11月9日から東京・後楽園球場で行われた試合は日本テレビ(NTV)、中部日本放送(CBC)、大阪テレビ放送(OTV)の3局ネットで放映された。中継実況と制作はNTVが担当した。OTVは11日までの3日間であったが、NTVもCBCはそれ以降も中継した。
 この中継には整髪料「丹頂ポマード(金鶴香水株式会社。現・株式会社マンダム)」の提供がついたのだが、既発局のNTVはともかく、まだ本放送開始前であったCBCやOTVまでがCM出稿を得たことは注目に値する。
 加えて、東京・大阪・名古屋では大きな新聞広告が打たれた。特に大阪では朝日・毎日の両紙で一面広告を打った。
 当時、丹頂といえばポマード(ゲル状整髪料)やチック(固形整髪料)のトップブランドであり、これらの整髪料はアメリカ風の恰好を決めるには欠かせない存在であった。

株式会社マンダムの社史は こちらで見ることができる
http://www.mandom.co.jp/company/corp/history.html

 この日、東京から送られてきた中継映像がCMつきであったか(のちに「黒ネット」と呼ばれる方法)、あるいはCMだけ各局から挿入する方法(対して「白ネット」と呼ぶ)をとったかは未確認だが、いずれにしても、「丹頂ポマード(または丹頂チック)」のCMが、大阪で初めて流れたものである可能性が高い(確認中)。
 この新聞広告やラテ欄の予告でドジャース戦を知った人たちは、各地のOTV専用街頭テレビに殺到した。まさに、スポンサードの無料パブリックビューイング・イベントだ。
 新聞予告された9日の試合は「ドジャース対巨人」。翌10日、続く11日の試合は「ドジャース対全日本」であった。

・11月9日(金) 初のスポンサー提供番組
昼の部
1.45 おしらせ
1.50 野球中継 「ドジャース対巨人(後楽園球場)」
制作:NTV
提供:丹頂ポマード
終了後、おしらせ。

・11月10日(土)
昼の部
1.35 おしらせ
1.40 野球中継「ドジャース対全日本(後楽園球場) 」
制作:NTV
終了後、おしらせ。
(雨天の場合)「法隆寺」「桂離宮」)

・11月11日(日)
昼の部
1.08 短編映画「世界スポーツ特集」
1.28 おしらせ
1.30 野球中継「ドジャース対全日本(後楽園球場)」
制作:NTV
終了後、おしらせ。
(雨天の場合)「法隆寺」「桂離宮」)

 ・11月12日(月)〜14日(水)まで サービス放送休止

●先発「JOBK-TV」の対応
 さて、大々的な新聞広告でOTVの独壇場となった観のあるドジャース戦中継だが、競合相手はこれにどう立ち向かったのだろうか。
 現在のような視聴率や聴取率調査はなかったが、たとえば(NHKを含め)各局が各地においた”自局専用"の「街頭テレビ」が集めた人数は、そのまま広告主にアピールできる営業データとして使うことができた。また、NHKは広告こそとらないが、自局の影響力を示すために、民放局同様に重視した。
 まず、先発局であるNHK大阪テレビジョン(第四チャンネル)は、以下の通り。

<NHK大阪テレビジョン>
・9日(金) OTVでは1.50からドジャース対巨人戦
昼の部
11.30 中学校「やせがえる」一茶
0.00 ニュース
0.15 お好み風流亭 漫才:てんやわんや 落語:桂米丸「スリル」
0.35 きもの「外出着」 岩松マス
(休憩)
夜の部 略

・10日(土) OTVでは1.40からドジャース対全日本戦
昼の部
11.30 職場訪問「化学繊維工場」升本二郎
0.00 ニュース
0.15 歌の花びら 音羽美子 恵ミチ子
0.45 短編映画「東海道」
1.00 学生フェンシング 個人選手権(明大)
引き続き全日本庭球選手権(大阪 靱)
(庭球中止の場合 東西学生柔道)
夜の部 略

11日(日) OTVでは1.30からドジャース対全日本戦
昼の部
11.30 週間ニュース
0.00 ニュース
0.15 寄席中継  落語:桃輔、木久助、柳昇
2.20 関東大学対抗ラグビー
慶明戦(秩父宮ラグビー場)
解説:伊藤真光
◇第八回全日本学生柔道選手権実況
(大阪府立体育館)
夜の部 略

 この頃、NHKテレビジョンは土日の午後にスポーツや舞台を中継放送することが多かった。
 また、11日正午のニュースの後、ラジオとサイマル放送の「のど自慢素人演芸会(現「NHKのど自慢」)」のかわりに落語が3席放送されているが、この頃、テレビでは「のど自慢」と「テレビ落語会」が毎週交互の放送だった。
 また、当時、テレビより優位にあったラジオであるが、NHK第一、そして民放の朝日放送、新日本放送ともまったく通常通り。NHK第二は10日2.00からドジャース戦を中継している。実況・志村正順、解説・小西得郎。4.30からは大阪府立体育館から日本学生柔道東西対抗も中継した。雨天時の番組としてドニゼッティの楽劇「愛の妙薬」、LPサロン「ハイドン作曲『時計』ほか」などが用意されていた。日曜日は2.20から関東大学ラグビー(秩父宮ラグビー競技場。実況:福島アナ)、4.00から第六回バレーボール全日本選抜優勝大会(東京体育館 実況:中神アナウンサー)が放送された。
 さて、この中継のあと12日から14日まで、3日間、OTVはサービス放送を休止した。それはどうやらスタジオ送出による自主番組の制作準備をすすめていたためと思われる。14日の朝日新聞(大阪)ラテ面の「アンテナ」に、まさにこのことが書かれている。

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