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東芝日曜劇場『ビルの谷間』(大阪テレビ放送)

 OTV(大阪テレビ放送)の芸術祭参加ドラマに「ビルの谷間」という東芝日曜劇場のドラマがあって、中之島の夜中のビル街のたこ焼き屋台を舞台にした作品なんですが、これが計算づくの映像美・・・だったらしい(現物が残っていない)。
 
 ビル街に現代の大阪を、屋台に昔ながらの大阪を象徴させたというわけだが、屋台の中のシーンはひたすら狭苦しく見せるため必ず柱を写し、屋台を一歩出たらひたすらビル街の大きさを出すために「縦の線を強調した」と、ディレクターズメモに書いてある。しかも、ビルの高さを表現するために、マンホールの蓋をあけてそこにカメラを置こうかという案まで出たという。テレビでエイゼンシュタインをやるようなとんがりかた。
 
 また、注文したたこ焼きを、窓から吊るした箱にいれて引き上げるシーンでは、屋上にカメラをおいて、真上からたこ焼きを撮影したという。当時、テレビカメラは真下に向けてはいけないと説明書きには書かれていたのだが、そのワンカットのために、禁を犯した。
 
 撮影は深夜おこなわれ、3台のカメラで撮影してマイクロで本社に送り、そこでVTRに記録し「カミソリで切り貼り」編集。こんな方法はAmpex社でも想定していない。当時の感覚からすれば「ハードディスクを切り貼りする」くらいの無茶だったようだ。本国アメリカでもこんなことはしなかった。しかし、それを駆使して、冒頭の三分間、音楽に合わせて中之島の夜景を自由自在に映像構成したという。ラジオ局のスタジオからはじまり、そこに置かれた時計にオーヴァラップして、OTVのアンテナタワーのてっぺんに上って撮影した中之島の夜景。しばらく空中浮揚して、ビルの谷間を覗き込む用意着陸する、というものだったという。3分間に勝負をかけたとメモにはある。
 

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