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『テレビ映画』と『テレビドラマ』の、ほんとうの違い

1950年代、テレビドラマのほかに「テレビ映画」と呼ばれるものがあった。これは現在も映画会社制作のテレビドラマ(長時間サスペンスものは、かつての「赤いシリーズ」など)に引き継がれているが、昔は決定的な違いがあった。
 「テレビドラマ」は、生放送が主体で、録画ドラマであっても、後で編集することなく「撮って出し」にすることが多かった。一方「テレビ映画」は、映画用フィルムで制作され、カット編集を経て放送された。つまり「テレビ映画」は、クオリティを保証されたテレビドラマということでもあったのだ。
 テレビドラマの場合「大きくて操作性の悪いテレビカメラを使う」というハンディがあったため、できあがる映像に限りが生じる。現在のように立体的なセットをスタジオ中央に組む方式がとれなかったため、(照明を効率的にあてにくい)スタジオ壁面にセットを並べて立てる「水族館方式」のセットにしなければならなかったため、映像のみならず、ドラマの演技そのものも平坦にならざるを得なかった。
 しかしOTVはこの問題を打ち破るため、オールトランジスターによる国産初のポータブルカメラ「OT Vison」を自社で開発し、さっそくドラマ「ビルの谷間」で活用した。屋外にオープンセットを組んで、まるで実況映像のようなドラマを展開したのだ。それまでのドラマにない躍動的な映像は人々を驚かせた(芸術祭で部門賞を受賞)。
 テレビドラマ制作のノウハウがほとんどなかった関西テレビは、系列の宝塚映画社が製作するテレビ映画をたくさん流した。80年代後半まで関西テレビ発の全国ネットドラマのうち、必ず、フィルム制作の「妙に品がいい」ドラマが一本あったのはその流れである。当然、出演は宝塚の女優さんたちでした。

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