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KBS日本語放送のドクター・シンが、ゴーン氏逃亡事件の『見方』と『考え方』をコーチング。


韓国KBSの日本向け日本語ラジオの人気番組『玄界灘に立つ虹』。音楽プロデューサー・ドクター・シンが担当する月曜日のコーナー『高みの見物』から。

2020/1/20放送分では、前二回に引き続き『カルロス・ゴーン逃亡事件』について。リスナーからのさまざまな意見をメールで紹介しながら、ドクター・シンの見解。

シンさんは、いかなる場合も『結論』を下してリスナーに言い切ることはしません。そのかわり、リスナーの持つ視点や思考の癖や傾向を指摘して、その問題をさらに広く、深く見て、時流や経験に流されない分析をしてくれます。事件分析のコーチング・マネージャーになってくれます。ドクター・シンが時事問題を語るのを聞くと、最初は『ドクター・シンは誰の味方なのだ?どっちサイドの人間なのだ?』と思われるかもしれませんが、答えは一つ。『リスナー=あなた』の味方。あなたが、あなたの答えを得るために考え抜くチャンスを提供してくれているのです。

さて、ゴーン氏逃亡事件に関してですが、リスナーの多くからは、ゴーン氏の主張はともかく、日本の法律を破って逃亡した、ということへの反感が寄せられ、かつ、そこにゴーン氏が会長就任後に行った、大胆かつ無慈悲に思えるほどのコストカット(特に工場閉鎖などによる大量の人員整理)などへの感情も重なって、ゴーン氏に対する評価は大変低いものとなりました。
 それに対して、シンさんは13日と20日の放送で、以下のような話をしました。以下、要約です(詳細はリンク先で放送をお聞きください)。

●13日放送分

http://world.kbs.co.kr/service/listen_again.htm?lang=j&broad_date=2020-01-13

●20日放送分

http://world.kbs.co.kr/service/listen_again.htm?lang=j&broad_date=2020-01-20


●ゴーン氏の逃亡事件で、日本人は『逃亡』という点に拘って論じているが、彼の功罪についてもう一度確かめた方がいいのではないか。
●ゴーン氏は日産の再建のために多くの労働者をクビにして恨みをかったが、それによる経営再建と体質改善の成果には称賛が上がっている。今回の逃亡劇はゴーン氏への恨みの一面と結びついて悪評に繋がっているようだ。
●ところで、日産とフランスの国営企業であるルノーはゴーン就任時は単なる提携関係(アライアンス)であったが、経済産業担当大臣であったマクロン氏が、日産をルノーに吸収合併できないか(つまり、三菱自動車や日産を事実上のフランスの国有資産にしてしまうこと)とゴーン氏に勧めたが、ゴーンは『それでは日本人は許さない』と拒否し、マクロンとの仲は悪くなった。のちにマクロンが大統領になった際再びこれを勧めたが、大統領からの要求ということで『三菱・日産・ルノーの合併』にむけて動き始めたところで逮捕された、という状況があった。
 つまり、合併で日産や三菱が『フランス政府の傘下』になるのを、一度は食い止めたという功績がゴーン氏にはある。

 正確にはぜひ番組をお聞きいただきたいと思いますが、ドクター・シンは常々、日本の報道メディアに関して『細かいところに入りすぎて、全貌を見失うことが多く、重要な注目点を大衆に打ち出せない』と指摘します。
 今回の場合『逃亡』の細部に入り込むメディアが多いのを見て『逃亡に至った理由と背景についてあまりに無関心だ』と警告を発してくれています。
 ゴーン氏の味方をするのではなく、逃亡の是非、ゴーン氏の人間性と言った細部からいったん目を離して、ゴーン氏が捕まったタイミングや、そこに至るまでの経緯をもう一度確認して、この問題を再学習しよう、と、コーチングしてくれているわけです。
 
 たとえば、ゴーン氏の側から考えると『経営を立て直した日産や弱体化していた三菱がフランスの手に渡るのを守ってやったではないか。そうして日本の資産を守ってやったではないか。あれだけ自分を高く評価し、信頼してくれていたのに、日産も日本政府も掌を返すかのような扱いで、しかも、囚人扱いした』とも取れるわけで、もしそんな『恨み』があるとすれば、今後、ゴーン氏から政府や日産経営サイドに関する暴露などもあるかもしれない、という見方もできます(これはあくまで例であり、シンさんの意見ではありません)。

このように、気楽なジョークや音楽業界、ドラマ、映画、スポーツ情報に加えて、スリリングな世界の見方を教えてくれるのが、月曜日の『玄界灘に立つ虹』の特徴です。日本にはないタイプのラジオ番組です!


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