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『午前0時のラジオ局』のTRNラジオを推理する(1) 丘の上のラジオ局は、機能的にはサテライトスタジオではないか?

既に二冊持っているというのに、研究活動用に『午前0時のラジオ局』(愛称『第1巻』)をもう一冊買ってしまった。私の場合よくあるのだが、研究に用いる時は、書きこみをするための一冊を必ず別に購入する。これは松岡正剛校長の『本は汚せ』という教えにも叶っている。

さて、まずはTRNという放送会社についての推理だ。そもそもTRNという略称が何を略したものかは明かされていない。ただ、立地がN県であるため、そこから取った可能性はなくはない。しかしNという字はネットワークの頭文字でもあるから、油断はできない。もしかしたら、開局した頃の略称だけ残して正式名称を『ティーアールエヌ放送株式会社』に変えてしまったかもしれない。もしかしたら昔は『東洋ラジオネットワーク』などという、全国制覇を視野に入れたてい会社だったのかもしれない^_^。

TRNラジオという名称は、私が読んだ限りでは『星乃さやか〜』ではじめて登場する。

ラジオ・テレビ兼営の放送局だが、社内では『テレビ局』『ラジオ局』と呼ばれている。ただ、第1巻冒頭の鴨川アナへの社内辞令からみると、どうも管理セクションとしての『局』はないようで、しかも、冒頭章の内容からすると、出演者の大半は地元タレントで、アナウンサーの担当する生番組は平日の昼間と深夜に一つずつ。ディレクターや技術スタッフは繁華街にある本社ビル(テレビ局)からの派遣というよりは、事実上の専任勤務のようであり、ラジオ局に勤務するとテレビ番組を自由に兼任できなくなるようだ。

それはまず、ラジオ局とテレビ局の位置関係による。冒頭によれば、ラジオ局は本社から来るまで1時間も離れた場所にある。ただ(小説では『小高い丘』と書かれているが)市街地や海を見渡せる山の上にあるため、曲がりくねった道をゆくのだろう。ラジオテレビ送信所に近いところかもしれない(隣接地である可能性もある)。

とても頻繁に往復できない場所に本社とラジオ局が分かれているのだが、可能性として考えられるのは、本社とラジオ局は、それぞれ別の商圏にあるのかもしれない。

実例は神奈川県にある。横浜に本社を持つアールエフラジオ日本は、メインマスターとメインスタジオを港区麻布台の東京支社に置いている。送信所は神奈川県と東京都の境目にあたる多摩川河川敷の神奈川県側にある。本社にも昔からスタジオはあることはあったが『横浜スタジオ』と呼ばれ、補完的な役割しかしていなかった。これは、開局当時の事実上のオーナー経営者であった河野一郎が、自らが所有していた『麻布台ビル』に『本社並みの機能を持った東京支社』を入居させたからである。これにより、神奈川県の県域局免許ながら、在京キー局なみの取材機動力が得られる。

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TRNラジオ局の場所は繁華街から離れ、取材機動力からいえば悪いのではないか。第3巻によればここからラジオカーが県内を飛び回っているようだから、むしろ昼間飛び回っているラジオカーを活躍させるような番組づくりで『県内全体をスタジオ化』しているのかもしれない。昔、森繁久彌が大阪テレビ放送の設立発起人会に呼ばれた時『大きなスタジオを作るくらいなら、中継車を5、6台買いなさい』とアドバイスしたが、ラジオも、スタジオが繁華街にある必要はなく、もしかしたら『市内と港を一望できる』ことに重きを置き、街々とはラジオカーで積極的につなぐ方針なのかもしれない。

しかし、報道セクションが繁華街と離れているのは機能的ではない。そこで推理した。

●ラジオ局は、事実上、サテライトスタジオである。

●ラジオ局には、マスターコントロールは、あることはあるが、普段はスルー状態で、ラジオスタジオのサブマスターと本社マスターとが直結されており、そこを経由して送信所に送られる。しかし、緊急時にはラジオ局のサブマスターから直接送信所につないで臨時放送をすることができる。

●送信所はラジオ局の敷地内か隣接地にある可能性はあるが、今や本社からのリモート管理のため、ラジオ局ではタッチしないだろう。つまり、ラジオ局に深夜送信技術スタッフが常駐する必要はないのだ。

●ラジオ局からはラジオカーが活発に飛び回っているため、ラジオ中継の技術スタッフが、ラジオ局に昼間常駐している。スポーツ中継の機材もここに置かれているだろう。

●報道部は本社にだけあり、定時ニュースや交通情報、天気予報などは、本社のブースから生放送している。そのため、アナウンス部はラジオ・テレビを兼ねた当番制を敷いている。ラジオ報道部のようなセクションはないかわりに、報道部からの緊急原稿受けをするために、報道部員が生放送時間中に当番で入っているかもしれない。

●録音番組は、本社の音声収録スタジオでも収録できるため、スポンサードのあるミニ番組などはここで作ることもある。営業部は本社にだけ置かれている。

●ラジオの完パケ番組は、原則として本社マスター出し。ラジオ局はあくまで生放送と、生放送時間中のコーナーの完パケを送り出す役割である。


さて、それでは、なぜこんな不思議な体制ができたのだろうか。(続く)

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