ウマ娘がまさかの完成でびっくりしたのでサイレンススズカの思い出を書く

たまたまテレビを見ているとウマ娘のCMが流れていた。

「ウマ娘みたいなゲームのCMをやっているなぁ」と思ったらウマ娘だった。

ウマ娘とは「ウマ娘 プリティーダービー」という最近(2021年2月:執筆時)リリースされたスマホゲームのことなのだが、このゲームはもともと2018年冬に配信されるはずだった。

競走馬を擬人化してレースをした後に、何故かライブが始まって歌い踊るという昭和のバラエティーで、アイドルが持ち歌を歌うためにゲームとかクイズをするみたいなノリのゲームである。

アニメも2018年冬の配信に合わせて、夏ごろに放映されていて、マルチメディアミックスで展開を目論んでいたのだか、本命のゲームが一向にリリースされない。

もともとアイマスを手がけていたプロデューサーが辞任をしたりと「事前登録?ずいぶん前にしたな!」という感じになっていた。

FGOもメンテナンス頻発な上にシナリオ流出して、えらい滑り出しだったが、今やメガヒットコンテンツだし、最近では日本一ソフトウェアのディスガイアが半年間のメンテナンスというのがあった。

やらかした分、その後の成功につながることもあるが、課金者や株主にとってはたまったものではない。

しかし、ウマ娘は、今や絶賛セルラン1位を爆走中なのである。

絶賛1位爆走中と言えば、サイレンススズカ。

サイレンススズカとは、20年ほど前活躍した競走馬だ。

今の団塊ジュニア世代はダービースタリオンというファミコンゲームをやりこんで、競馬ファンとなった層も多い。ウマ娘とはだいぶ毛色は違うが競馬を題材としたゲームの先駆けである。

ダビスタのおかげでだいぶ競馬が盛り上がって、客層も変化したのではないだろうか。

しかし、最盛期は170万本も売れたダビスタも2020年に6年ぶりに発売されたswitch版最新作は苦戦しているようだ。

競馬といえは耳に赤ペンを挟んだおっさんたちが、競馬新聞を握りしめて「差せ!差せ!」と叫んでいるイメージが一般的だった。

実際、場外馬券場に行けばそんなおっさんたちがいっぱいいた。なんか知らないが服のあちこちに赤ペンの跡がついた。

当時は法律で学生が馬券を買ってはいけないことになっていたので、建前上は学生は競馬場や場外馬券場には、存在しないことになっていた。

しかしながら、ダビスタ世代が大学生になるとパチンコも覚えてギャンブルに手を出す者も増える。必然的にリアルの競馬もやっていただろう。

そんな時代に圧倒的なスピードで勝つ馬が現れた。

サイレンススズカである。

サイレンススズカなんて聞いたことがないという人がほとんどだろう。

これがディープインパクトなら、競馬を知らない人も聞いたことがあると思う。知名度もさることながら、ディープインパクトこそ最強だと言われることも多い。

近年だとキタサンブラック、牝馬ならばアーモンドアイなどの名前が上がるだろう。

なぜ僕はサイレンススズカが最強馬だと思うのかというと、その勝ち方と物語にある。

サイレンススズカは初戦こそ圧勝したが、そのあとはパッとしなかった。

数あるレースの中でも選ばれし競走馬だけが走れる最高ランクのG1。その中でも別格の3冠と呼ばれるレースがある。皐月賞、日本ダービー、菊花賞の3つだ。

サイレンススズカは皐月賞にむけたトライアルレース、弥生賞で大敗。結局3冠レースは不発で終わることになる。

それが一変したのは金鯱賞だった。

金鯱賞はG3とグレードは高いが、それほど観るべきレースでもない。昔は5月とか6月あたりの地方競馬場のレースだったので、めぼしい賞レースの裏で、賞レースに出れなかった馬のためにある感じだった。

そもそも夏は気温も高くバテてしまう。秋のG1レースに向けて休養するので、夏に走る馬はもう賞レースからこぼれ落ちている。

当時の僕は地方も含めレースは全部予想していた。レースを見ないで結果だけ見ることも多かったが、たまたま金鯱賞は中継を見ていた。

金鯱賞のサイレンススズカはすごかった。


サイレンススズカは気性が荒く、ゲートインもうまくいかなかったり、ゲートが開いてもかかってしまい暴走する馬だった。

金鯱賞でもこんなに最初から逃げてどうせ続かないだろうと観ていたら、最初から最後まで逃げ続けるのだ。

なんと後続に10馬身以上の差をつけて、それも圧倒的なスピードでレコード勝ちをした。

10馬身というのは文字通り馬10頭分だ。

競馬というのは逃げ馬はほとんど勝てない。

予想を立てる時も逃げ馬を本命にすることはまずない。よっぽど展開が良くないと勝てることはあまりない。せいぜい波乱の展開になって、なんとか2着に残る程度だ。

サイレンススズカは毎日王冠でエルコンドルパサーとグラスワンダーというG1馬たちを抑えて勝利し、ついには宝塚記念でG1を制する。

どれもこれも大逃げをうって勝利するのだ。

まさに飛ぶように走る。

僕がサイレンススズカが最強だと思うのは、大逃げで勝つからだ。

最初から最後まで誰も前を走らせない。こんなかっこいい勝ち方があるだろうか。

ゴール前追いつくどころか、サイレンススズカにペースを狂わされどんどん離される。

圧倒的なのだ。

サイレンススズカに惚れ込んだ僕は、金鯱賞から必ずサイレンススズカを予想に入れている。

そして運命のレースが訪れる。

天皇賞秋。

この頃には中距離では無敵、いや、世界最強ではないかというくらいすごかった。ウマ娘でもアメリカ遠征の話題が出ているが、実際にそういう話もあったと聞く。

僕はサイレンススズカを軸に、オフサイドトラップとステイゴールドが根性で残るだろうと予想

サイレンススズカは当然として、ステイゴールドは連対率が非常に高い。勝たなくても2着をとってくる馬なのだ。その後、まさかリーディングサイヤーランキングでディープに迫る馬になるとは思わなかった。種牡馬になっての活躍がすごい。

オフサイドトラップはトニービン産駒で、その前の夏競馬で調子を上げて、天皇賞秋にピッタリ調子を合わせている感じだった。トニービン産駒は東京競馬場でやたらめったら強い。

まぁ。サイレンススズカにどれか絡めば良いだろうと考えていた。

レースが始まり、予想通り圧倒的なスピードでサイレンススズカが逃げ始めた。

サイレンススズカに関しては逃げという言葉は相応しくないように感じるくらいだ。

明らかに絶好調。

それが第3コーナーを回っていよいよ最後の直線へ向かいカメラがアップになるというときだ。

サイレンススズカが一気に後退していくのがわかった。どんどん距離を縮められ、馬群に沈んでいく。

もう僕はオフサイドトラップもステイゴールドもどこに走ってるかを見てなかった。

サイレンススズカはゆっくりと横たわっていた。

そして、アナウンサーが予後不良で安楽死処分をされたことを告げた。

もうサイレンススズカと夢を見れなくなってしまったのだ。

僕はこの後、競馬を見ることはなくなったし、馬券を買ったことはない。

後で気づいたのだが、この時の馬券は100倍以上のオッズの万馬券だった。もし換金していたら、昔は基本1000円単位だったので10万円以上だったはずだ。

そんなことも気づかないくらいに、サイレンススズカがどうなっているのかが心配だった。

あのレース鞍上の武豊騎手の話によると、サイレンススズカの圧倒的なスピードでは、普通は骨折したら走ってられずに倒れ込むらしいのだが、サイレンススズカはゆっくりとスピードを落として、武の安全を確認するように倒れたという。

強いだけでなく。心の優しい馬だった。

今でもサイレンススズカが僕の中で最強馬だ。


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