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「償い」演説に見るイングレス・ポータルの条件

先にオコトワリしておくと、この「償い」演説は2013年の終盤の初出であり、当時のイングレスはまだ黎明期だ。同年10月にオープンβ版となり、同年12月14日の「オペレーション・13マグナス」最終日をもって正式リリースとなる、その狭間の出来事だった。なお同年3月14日よりスキャナーからのポータル申請が可能となっている。

プロジェクト・リュケイオンのブログ記事(下記にリンク)に引用したジャービス(太っちょの方)とオリバー・リントン=ウルフ(末成りヒョウタンの方)の動画は、同年12月14日(現地時間)、サンフランシスコで行われたアノマリー「13マグナス」ファイナルのステージのものだが、翻訳した原文はその2週間ほど前にG+上で公開された。

以下のリンク先が(僕のノリと勢いが多分に混じった)翻訳になる。原文が前後半に分かれているので記事も二つに分かれている。

あ、もう一つオコトワリしておくと、僕はレジスタンスである。が、それ以前にイングレスの物語を楽しむストーリー勢である。念のため書いておくと、レジスタンスとしてスタートして、ストーリーが存在することに気付いて、土屋つかささんが解説したりジールドラゴンさんが翻訳したりしているブログを読んだり、G+でミウツーさんかじぃさんやシロヤギウスさんの投稿を読んだりした結果、ストーリー勢になったので、ゲームを始める前からストーリー勢ということではない。そこんとこヨロシク。

さて本題

先頃「オペレーション・ポータルリコン」から「ナイアンティック・ウェイフェアラー」となんとも「ウェーイwww」「ファーwww」みたいな名前になったポータル審査について、よく「良いポータルの条件って何さ」って議論になってるようだけど、今回の「償い」演説の中に2013年当時のナイアンティック社の考えが反映されていたので、翻訳した御縁とともにメモ的に書いておこうと思ったってわけ。

まず頭に入れておきたいのは、これが当時のエンライテンドの指導者たるローランド・ジャービスの言葉だということ。あ、そこのレジスタンスの人、ここで拒否反応しないで。この元記事を書いたP.A.シャポーはそこにしっかりツッコミ入れてるから。

いずれにせよ、ローランド・ジャービスはエンライテンドであるが、ポータルは我々が色を付けるものであり、ポータルの価値とは色が無い物だと僕は思っている。

ポータルの発見は喜びに満ちている

さてジャービスはこう言っている。

ポータルの発見は喜びに満ちている(中略)だがそれを誰かと分かち合うまで、完全なる姿にはならぬのだ。それらの場所を分かち合うことが我らの使命である。誰かの発見を助けるのが我らの使命である。

The full joy of the discovery of a Portal...(omission)... cannot be realized fully until it is shared with others. Sharing these places is our calling. Helping others to discover them is our calling.

分かち合う(シェアする)のはどこか? スキャナー上だ。そして誰かがそれに気付き、レゾネーターを8本差さなければ「完全なる姿」とは言えない。

誰かの発見を助けるとは? 今であればウェイフェアラーでの審査が筆頭に上がるだろうけれど、当時はエージェンツは関われなかった。ならば「どうやって申請するのか」「どんなものがポータルに相応しいのか」を教え合ったりしよう、あるいは「ポータル申請方法を知った人はその知識を独占しないで、皆に正しく広めてね」ということになるだろうか。

引用を続けよう。

だが心せよ。人を欺く事なかれ、虚りのポータルに足を運ぶ事なかれ。我らが友は、斯様な愚行を認めはしない。ポータルに危険は無い。だが、人を欺く者や贋作者には、それを約束することはできない。

But be warned. Do not attempt to deceive or mislead others into visiting false Portals. Our friends are not tolerant of such foolishness. There is no danger to you in Portals. But I make no promises for deceivers or falsifiers.

この辺りは少し意訳したが、「偽の申請はしない」「偽のポータルだと分かってたら使わない」「悪意を持った申請者には何があっても知らんで」と読める。つまりまぁ、「その結果、君もしくは君の仲間がタイーホされ或いはBANされても、当局は一切関知しないからそのつもりで」って奴だ。

その辺の免責を、アノマリーという場で勝利した側の陣営の思想に載っけて告げる、というのが、実にイングレスらしいやり方じゃないか。

あとこの引用部分でジャービスが「我らが友」って言ってるけど、いわゆる「シェイパー」のことを指している。今、物語に登場している、髪があって痩せてる方のジャービスはこの表現をしたっけか、どうだっけか。

ポータルは我らの導き手である。ポータルは穏やかな心を映す場を与え、真のメッセージを我らに届ける。

The Portals are our guides. They provide the place for calm reflection where we can hear the true message.

ポータルはエージェントを導く。これは陣営に関係ないことだ。「ガイドとしてのポータル」の側面を強く押し出し、意味を持つように並べれば、きっと良質なミッションができるよね。僕はミッションあんまりやらないけど、やる時はそんなミッションをやりたい。

これらの場所について詳しく書き留めよ。特別な場所たる理由を記すのだ。本当の美しさを示す画像を残すのだ。我らが心から求めていない時の凡百の姿は捨て置き、代わりに我らをそこに導いた真価と感性を捉えるのだ。そうしたイメージを見付け出し、共有するのだ。

Write descriptions of these places. Explain why they are special. Take images of them that show their true beauty. Ignore the mundane things we see when we are not really looking, but instead capture the purity and inspiration that has drawn us there. Seek out those images and share them.

この後にエンライテンド思想に結び付けてぁゃιぃ事も言ってるけど、まぁそれはそれとして。順番を変えるが「ありきたりなものは駄目。なぜそこがポータルたる場所なのかを感じたかい?」「そこが特別である説明(デスクリプション)を書こう」「良さを表現する画像を残そう」「OK。それじゃ申請して皆に伝えるんだ」と僕は読んだ。

嬉しいことに…というのも変だけど、僕がポータルリコンやウェイフェアラーでの審査で重視してきたのがこの辺りだった。それらは僕がポータル審査どころかイングレスのイの字も知らない2013年終盤に、既に登場人物の姿を通じて、伝えられていたのだ。

なんという「物語の力」を信じた展開であることか。
なんという「人の善意」を信じた願いであることか。

彼らはこれを、そのまま、英語の通じない世界で通用させようとしてきたのだ。

胸が熱くなる話じゃあないか。

……………

……………

……………

こっそり本音を言わせてもらおう。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
これだから素人にはお勧めできないんじゃねーか。

世界に対してあまりにも不器用で、作り手の「かくあれ」という思いが純粋に出ていて、それでいてプレイヤーを「お客さん」にしない巻き込み方で物語の中に組み込んできたから、俺は万人受けするとはとても言えない、イングレスの物語の有り様が好きになったんだよ。

言わせんな恥ずかしい。


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