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読書感想「桟橋」

「共通テスト」の出題内容が各メディアで公開されていて、現代文に、「桟橋」(牧田真有子さん著)という小説が取材されていました。対象部分だけ読むと、先が気になったのでぜんぶ読んでみたんです。
面白ーい。
純文学なのですが、祖父が「ちゃんとおばさんと言いなさい」と主人公のイチナを叱る理由、おばさんの演技が巧みな理由、そしてなぜおばさんは風来坊なのかといったことが、その時には疑問にも思わないんです。
けど、実はこういうからくりがあったのかーということが明かされて、
なるほどなるほどー、よくできているなーこの短編と思いました。
抽象的なところも多いので、難しいとも思ったんですけどね。
「私の身体は家だから」。役者なので、いろいろな役が出入りする家、居場所ということのようです。その代わり、自分というものがないおばさん。なんだか可哀想。自分がないので、同居していても、植物のような存在感しかないらしく、おばさんが出て行ったあとは、どんな同居生活をしていたか印象に残らないとも、イチナの友人から評されています。けど、それはイチナを守るためのようです。おばさんが「本当の世界」との橋となって、自分を通してしか、イチナが世界と関われないようにしているんです。おばさんが自分の舞台を見に来ないようにきつく言い聞かしているのも、そのことと関係しています。さっきとは矛盾するんですが、おばさんは舞台でだけ、本当の自分をさらけ出しているので、それを観たら、イチナは守られなくなってしまうと考えているようです。
短編だけど深いなーと思いました。

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