流れを読む野球観戦

野球観戦をするのが好きだ。球場に来て発見をするのがとても楽しい。自分がどんなところを見ているのかを書き留めたいと思う。

座席

どこにでも座れるのであればホームベース延長線上の、なるべく高い所を好む。投手がベースの端をコントロールできているか、審判はどこまでをコールするか、打者のハーフスイングや反応などを見るのにも良い。ランナーのリードの深さや守備位置の変化に気づきやすいのもこの席だ。
つまり、テレビで放送されないものを見つけるために、ホームベース延長線上に座っている。

試合前

いわゆる「アップ」の時間はフリーバッティングよりもキャッチボールやシートノックを好んで見る。レギュラーではない選手たちの二遊間のダブルプレーの処理などはレギュラー選手と比較して早いのか遅いのか、どこに違いがあるのかなどを見る。外野手であれば捕球と頭を越す判断をどのタイミングでするか、ナイターの場合は照明への入り方などだ。風が強い日は、球団旗のなびき方、木の揺れ方、選手のユニフォームのなびき方の違いでそれぞれの高さでの風の感じ方の違いを捉えることができる。意外とグラウンド上は防風、防塵ネットに覆われていて風を感じないことがあるため、高く上がる打球が選手の想定以上に伸びることもある。

フリーバッティングは個人的には騙される事の方が多い。例えば打率.250の選手のフリーバッティングはヒット性のあたりが4回に1回かと言われるとそうではない。ただ、4回に1回相当か以下の場合は調子の悪いバロメーターとして考えても良い。
取り組み方の良い選手になるとその時々で課題を持ってスイングしているのでフリーバッティングの打球は全くアテにならないこともある。

プレイボール前(初回表裏攻撃前)

選手が各ポジションに散らばると、内野手に注目する。ボール回しでの一塁送球の正確性を見る。投げる位置が定位置よりどれだけ前後左右しているか、球の速さや、選手の遊び具合を見る。普段から遊べる余裕のある選手の表情が真剣だったり、例えば打席終わりにスイングする仕草などをしていたら打撃の状態を気にしていることだろう。

それ故に投球練習はあまり見ない。ラストボールだけは捕手の送球を見るので確認するが、それ以外の時間は野手に目線が行っている。投手については「音」で判断する。(暴投した投球がネットに当たる音やキャッチャーのミットを鳴らす音など)イニング途中での投手交代はピッチャーを見ることが多い。流れを左右することもあるからだ。打者に関しては基本的にはノーチェック。

応援チーム攻撃時

プレイがかかると自分もゲームに入る。攻撃時、特に序盤は相手投手の出来を見ることが多く、サインに首を振るかどうか、投げた球に対しての反応、ボールの貰い方、野手の反応などを見る。守備位置と照らし合わせて打者への攻め方や調子を図っている。捕手気分で配球を考え、実際で答え合わせをする。自チームの選手をよく見ている分、苦手コースや球種などを知っているからこそ自チームへの攻め方を研究してしまう。2アウトになったときに投手がベンチ前に出てきてキャッチボールを始める時には投球間隔や体のどこを気にしているかなども目に入れておく。ランナーが出たときはどういう作戦でランナーを返すのか、相手に対してどう攻めていくかというのを考えながら見る、作戦実行シーンでは次打者のことを考えながら失敗時の次の行動も考える。だが頭の中でシミュレーションしていることが実際の目の前で起こると、とても楽しい。

応援チーム守備時

むしろこっちの方がメインになる。いかに流れを失わないか、いかに質の良いアウトを取れるかというのを見る。球の走りや打者、走者の反応、ファールのなり方から野手の追い方などを凝視する。見方としては投手を中心に見るが、リリース前からは野手に目線をずらし、持ち球と配球、狙い球などが合致するかを見る。打球が飛んだときは打球の方向、角度、追い方を見ていることのほうが多い。打球が抜けていくのを見ると次にカバーの入り方や隊列の動きを見る。

流れを作る守備

野球は守りからとよく言うが、その本質は野球は投手からと言っても良い。「守備から流れを作り攻撃に展開する」というのは色んな所で使われているが、耳障りの良い言葉ゆえに使いたがる言葉でもある。では「流れを呼ぶ守備」とは?となると、結局ピッチャーが気持ちよくなげ気持ちよく抑えることだと思っている。ヒットを阻止するファインプレーやアウトローいっぱいに決まる見逃し三振は、確かに流れを産むこともあるがそれ頼りにしていては流れは来ないし、もはや野球でもない。結局はいかに良い形でアウトを積み重ねるかが大切なのだと思う。ミスなく3人で終わらせる、そして3アウト目が三振だったり、好プレーが出ることでより流れを強いものにするのだと思う。本当に流れが出るときは、次の攻撃の4番目や5番目あたりにキーとなる選手が待機していたりもする。

得点

得点が入ると、ゲームが動く。良い意味でも悪い意味でも得点は選手に精神的な影響を与える。1アウト3塁から内野ゴロの間に奪った1点も守備側からしたら「くれてやる」と割り切った1点が攻撃側は「内野ゴロで1点取ってこい」という野球をしていたら攻撃側に流れが来る。このケースは最終回でない限り、意図通りの得点というものは後々に効果が出てくるものだ。逆に本当はホームアウトができるタイミングで一塁アウトになると、守備側は嫌な雰囲気を産む。そこに長打や四死球が絡みだすと一気に流れは傾く。一瞬の隙が大量得点、大量失点に繫がるのだ。傾いているときには捕れる打球もエラーを誘発すれば暴投も多くなる。流れに惑わされないメンタルを持つ選手が中心にいたり、流れを止める声掛けやタイムなどをできる選手がいると、チームは締まる。

松坂大輔に見る魔の使い方の巧さ

ところで松坂の登板試合はゲーム時間が長くなるなんてことも西武時代には言われていた。これは松坂が持つ引き出しの多さ故である。靴紐を結び直す、マウンドプレートを外して深呼吸をする、ボールをこねる、など投球動作前の行為が自分自身のタイミングを産み、その結果打高時代の野球で防御率2点台を幾度も記録したといえよう。こういった「間」を操れる投手こそが、良い投手なのだと思う。

選手交代

閑話休題、選手交代もまた試合観戦において重要な要素だ。代打の切り札と呼べる選手をどこで出すかというのも予想していくと楽しみになる。そこで相手はどういう行動を取るのか、球場の雰囲気がどう変わるか、そういったところに注目すると尚の事面白い。

試合終盤

余程のことがない限り、想定通りに試合が終わっていく。実際勝っていても引き分けになったり逆転負けする試合は多く見てきた。そのまま負ける試合のほうが多いかもしれない。だが、誰かと観戦している時にそれを言うのはご法度だと思う。野球の神様に怒られると考えている。最後の最後までしっかりと野球を見なさい、という思し召しだと考えるので、気を抜かずにしっかり観ることの大切さを教えてくれる。

試合後

自分の場合、ここからが長い。一日の試合の総括を行うのだが、一人でも思考を纏めるには必要な時間だ。感じたことや勉強になったことを吸収するのは、やはり復習だ。その日の試合のことを寝るまで語れると思う。

最後に

これは自分がプレイヤーとしてでなく、いち野球好きとしてグラウンド外から眺めているからできることである。草野球選手としては流れを感じることはできてもそれを変えるようなことは多くなかった。とはいえ、試合を読む、流れを読むことでチームを勝利に導けたこともあった。草野球の監督業は選択の連続で気が休まることなど殆どない。だからこそこういった流れを読む、野球を学ぶということを行い、自身の観戦スキルがアップしたのだと思う。

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