悩め、4番打者 9/16 ● 1-2

絶好のチャンスだった。得点の匂いがプンプンしていた。だがそれは一瞬で消え去った。

5回の表、1アウト満塁で打席に立ったのはトップリーグに昇格して1年目の金城。球場を盛り上げる出囃子と共に颯爽と打席に入る姿はとても昇格1年目とは思えない存在感だ。
小さなステップから素早いスイングスピードで振り抜かれた打球は低い弾道で左中間を抜けていく、そんな強い打球を飛ばせるのが金城の魅力であり、何度もチームを乗せてきた。

誰もが得点を期待したその打席、金城の特徴でもある初球から打ちに行く姿勢。押せ押せムードの中、アストライア先発谷山の投げた初球を狙った。


結果は力無い打球がワンバウンドで谷山のグラブに収まった。ホームへ送球されると、その後一塁に転送されダブルプレーが成立した。
アストライアは7回1アウト満塁の場面で泉がしっかりと打球を高く、遠くに打ち上げサヨナラの犠牲フライを放ちバースデー勝利を演出した。4番打者がはっきり明暗を分けた試合だったと言っても過言ではない。

ダブルプレーに倒れた後、今にも泣き出しそうな顔をしている金城の姿をカメラは捉えていた。そんな表情になるのも無理はないだろう。まだ若干20歳、同級生には社会に出ていない大学生も居る中で金城は何百人の視線を浴び、自分の行動の結果に対して喜ぶ人、悲しむ人の声を聞くのだから。それをすんなり受け流す図太さ、メンタルを持ち合わせる20歳はそうそういない。

大いに悩んで、もがき苦しめば良いと思っている。人間、それがあるから強くなれるのだから。悩まない人間は一定のところで止まってしまうから。

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