エースへの最終試験 9/7 △4-4

7回のマウンドに背番号16が登ったときに「これはエースへの最終試験だ」と、確かにこの口で言った。

結果としてあと一つのアウトを奪うことができず、1点リードの状態で堀田はベンチに下がった。その数分後、ディオーネのリードは無くなった。引き分けに終わったのはせめてもの救いなのか。

昨年、プロ初勝利をきっかけに一気に飛躍を果たした。そして今シーズンもここまで一つずつ確かな成長を見せ、安定して試合を作れる投手となった。

後は球数が増える終盤、いかに失点せずに最終回に笑顔で寺部とハイタッチをするか、それを果たすと晴れて「エース」という称号が与えられる。堀田に残された課題はそれだけとなった。

この日はまさにエースになるための試合だった。
立ち上がりを攻められ簡単に先制を許す堀田の投球も決して良い訳ではなかった。夏季リーグでは見られなかった球のバラツキ方は回を増やしても変わらなかった。

我慢に我慢を重ね、5回にこの日初めて三者凡退のイニングを作るとチームがその流れに乗って一気に逆転する。堀田は6回もわずか10球でイニングを終わらせた。
どんなに状態が良くなくとも自分なりに抑える術を身に着け打線に流れを呼び込む、そのためにどうすれば良いのかを考え、実行に移す。堀田が憧れるディオーネの「エース」への道は確かに開かれていた。

しかし、堀田は最終試験に合格できなかった。試合後はファンの間でも投手交代についての議論が交わされていた。
私は一貫してこの試合の選手交代は間違っていないと主張したい。

結果として勝ちを掴むことは出来なかったが、例えば盤石を期して坂東や小原を回の頭から使って勝っても、危険を察知して早めに代えても、堀田にはもう何も残らない。ただ「最後まで投げられなかった」悔しさだけが残るだろう。それ程までに成長した投手にエースと呼ばれるための最終試験会場への案内状を渡さないなんて選択肢は考えられない。

この日の引き分けは、堀田を、チームを大きく動かす引き分けだったと思う。

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