You are not alone!

学年便りの5月号に寄稿した文章をブログに再録します。

 コロナ禍に見舞われ、全世界の風景が変わりました。私たちは去年まで過ごしてきた生活を2度と取り戻すことができないのではないか、そんなことを感じる時間を強いられています。歴史の時間に習ってきた、人類が経験した多くのことは、自分とは無関係で、遠い昔の話なんだろうな、と思うのが私たちの偽らざる正直な気持ちだと思います。

 つい2月末までは、今の状況なんて誰も想像していませんでした。友達や先生と学校で過ごし、家族と過ごし、週末には外出をして、ということが当たり前でした。でも、今はもう違う。今はもう、そんな世界ではなくなりました。「いつになったら通常の生活に戻れるのか」という苛立ちや不安が、社会全体に鬱屈しています。我慢をし合って生活している、と誰もが思っている。だから人に対してとても攻撃的になってしまったり、あるいは、無防備で、簡単に落ち込んだり、傷ついたりしてしまいやすくなっています。勉強のこと、生活のこと、コミュニケーションのあり方のこと、これからのこと。誰もが不安で、誰もが先が見通せない。自宅での生活を強いられたまま、日々、時間が過ぎていく。

 コロナが発生して、3月にみなさんと会えなくなってから少しの間は、僕もそのように考えたし、同じような気持ちになっていました。

 でも、そんな気持ちにじっと止まっていても、コロナは去ってはくれないし、いつ自分がコロナに感染罹患するかもわからない、その前提は変えられないんだ、という風に考え方を変えました。自分たちの置かれている現状について、before corna, after cornaと区切って、コロナ前、コロナ後、という見方をするのではなく、with corna、コロナと共に今後の人生は進んでいく、そんな風に捉えていくようにしたんです。数週間、コロナのせいで気が滅入っていた気持ちが、少しシャキッとしました。

 この危機的な状況、生活条件が変えられないのであれば、コロナが発生する以前の人生を前提に物事を捉えるのではなく、コロナはもう蔓延しており、自分たちは感染の可能性と隣り合わせで生きていくことが当たり前になったんだ、と捉え直すことにしたんです。

 授業はどうなってしまうんだろう、と考えたりしていましたが、僕は大学院でe-learning(ネットを通じて受ける授業を構築する学習形態)について勉強をしていますので、授業のネット配信を学年の先生たちと一緒に取り組みたいと思っていました。ほどなくして、ネット配信をする方向で先生たちとチームで動くようにシステムが出来上がっていきました。これはコロナ前ではなかった発想です。

 もし仮に、コロナが収束して、学校が再開されたら、今皆さんに配信しているような動画を、授業の予習や復習のために、教育の道具として使うことが可能になったのです。また、プリントを無くしたり、もらってなかったりしても、ネットにPDFファイルで貼り付けておけば、いつでも家庭で見られるようになる、という仕組みもできたことになります。

 紙ベースが前提で進んでいた学習形態が、ネットを通じて、オンラインで行う形態へと変容したのです。これは大変画期的なことだと思います。例えば今後、予習内容や、みんなに考えてきてほしいことを予め動画で配信し、ドリルや反復練習などは家庭でしっかりとやりつつも、学校では、友達と協働作業をしたり、話し合いをしたり、プレゼン発表をしたり、と、実際に人と会わなければできない学習活動を行うことも可能になったのです。

 オンラインの動画配信が始まって、多くの人は楽しんで動画配信を使って学習を進めていると思います。でも、不慣れだったり、どうしても動画配信に気持ちが向かない人も、僕はいると思います。

 先ほども述べたとおり、今はafter cornaのことを考えつつ、with corna、コロナと共に生きていく覚悟を決めなければいけません。これまでのライフスタイルとは全く異なるライフスタイルを、あなただけではなく、全人類が強いられています。変わらなければいけない時なのだと思います。人類全体が、正体不明のウイルスの蔓延により、生き方を転換せよ、と言われているわけです。

 くよくよしたり、感情的になったり、新しい変化について不安を抱えたり、放棄したりする気持ちはとてもよくわかります。僕も同じ気持ちだし、先生たちもみんなきみと同じ気持ちです。

 さっきも言いましたが、それでもコロナは、あなたを待ってはくれません。コロナ前後のことを考えて一喜一憂したり、逃げ出したりするのではなく、コロナのようなウイルスの蔓延が今後も起こる可能性があるんだ、と思い、備えつつ、人生の設計をすべきだと僕は思います。その方が良いのです。

 在宅学習が始まってから2ヶ月弱時間が過ぎました。学校から送られてきた教材を見て、思うように気持ちが向かない人もいると思いますし、動画配信も、なかなか見る気がしない人もいると思います。

 You are not alone! あなたは一人ではありません。一緒に、共に前に進みましょう。急激に変化に対応できなくても良いから、少しずつで良いので、変化に順応していきましょうよ。全力で皆さんをサポートし続けます。
 
 送られてきた教材の中から、これならやれそうだ、と思うほんの小さなことからスタートしてください。全てをやらなければ、もうおしまいなんだ、などという、大げさな考え方はやめましょう。誰も幸せになりません。できることからで良いので、在宅学習を少しずつ自分のペースに合わせて進めていって欲しいと思っています。
 
 動画配信や教材の発送で先生たちが歯がゆい思いをしているのは、発信が一方的で、みんなの反応や意見が見えないことです。これが一番じれったく、もどかしい部分です。何かできることがないか、みんなで話し合っていますが、なかなか良い方法が見つかりません。皆さんとどうすればうまくやり取りをし、関係を取り戻していくことができるか、そんな課題に取り組んでいきたいと思っています。
 
 同じ条件で皆が平等にこの状況下にいます。みんな一人ではありません。共に頑張っていきましょう。

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