『教養としての近現代美術史』4

本日で、4回目の連載となります。

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早速昨日の続きを掲載します。

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また、モロッコ旅行の産物であり、明暗の対位法が抜群の『アルジェの女たち』(一八三二)は、 当時の西洋世界に沸騰したオリエンタリズム(東方趣味)の視覚的作例としても注目に値する一点といわなければなりません。

ドラクロワは後代の画家たちに圧倒的な影響を与えた画家としても知られますが、ルノワールは、「『アルジェの女たち』以上に美しい作品はこの世に存在しない」とまで賛美していたそうです。


(b)新古典主義
「両雄並び立たずとは古代中国の歴史書『史記』に由来する名高い一節ですが、思えば西洋近代美術史においてロマン主義のドラクロワと、近代フランス絵画のもう一つの流派である新 古典主義を率いたジャン・オーギュスト・ドミニック・アングル(一七八〇~一八六七)ほど、「両雄」と呼ぶにふさわしい存在もいなかったでしょう。

たとえばこの二人が一八五五年のパリ 万国博覧会で、それぞれ単独の展示室をあてがわれて紹介されたように。しかし、ドラクロワ にジェリコーという先覚者が存在したように、アングルにもまた、彼に進むべき道を開いた仰 ぐべき存在がいたことを忘れてはならないでしょう。

その画家こそアングルの師匠で、十八世紀後半から十九世紀序盤にかけて、明快この上ない形象と堅固な画面構成で新古典主義の基礎 を築いたジャック・ルイ・ダヴィッド(一七四八~一八二五)でした。

たとえば古代ローマの建国譚の一幕を描いた『ホラティウス兄弟の誓い』(一七八四)は、まさしくダヴィッドの明快この上ない堅固な美学の成り立ちを、余すところなく示した一点といっても過言ではないでしょう。

ちなみにホラティウスとは、ローマ帝政初期を代表する詩人で、彼の手になる『詩論』は古代ギリシャの哲学者アリストテレスの『詩学』と並び、西洋文芸の重要な基礎とみなされたものでした。この画面からも如実にうかがえるように、ダヴィッドの描く人体は威風堂々たる風格に満ちあふれ、古代ローマの格調高い彫刻像を彷彿とさせるかのようです。


以上になります。

発売日も近づいてきました。

次回が最終回となります。

その次に何を書くか、まだ決めていないのですが、まずはゆっくり休みたいと思います。