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ウィリアム・クリスティ

 どしても裏がとれないですが、いつかのエクサンプロヴァンス音楽祭でウィリアム・クリスティ指揮レ・ザール・フロリッサンがベートーヴェンの「ミサ・ソレムニス」を演奏したはず。とうとうベートーヴェンかと思いました。残念ながらディスクにはならず。
 フランスのバロック音楽を斬新に蘇演してセンセーションを巻き起こし、その本来の魅力を皆に気づかせた立役者で私にとって大きな礎の一つです。リュリ、M.A. シャルパンティエ、ラモー、カンプラ、クープラン、ドゥラランド、モンドンヴィルなど。それから次々レパートリーは広がっていきます。イタリアのモンテヴェルディ、ロッシ、カヴァッリ、ジェズアルドなど。イギリスからパーセル、ヘンデル。そしてモーツァルトにハイドンにバッハ。
 モーツァルトのオペラ「魔笛」、「後宮からの誘拐」、また宗教曲「レクイエム」、「ハ短調ミサ曲」が日本では今でも人気が高いのでは。ピリオド楽器のアンサンブルとしては騒音性が少なく耳触りが良い上に、歌手たちは若手中心でビブラートを抑制した清澄な歌声。次世代のスターを次々世に出していきました。ヘンデルのオペラやモンテヴェルディの「夕べの祈り」なども優美さが目立ち耽美的とも言えそうです。
 それが2007年録音のハイドン「天地創造」でちょっと変化したと思います。冒頭から物凄いアタックで以前クリスティの演奏から聴いた覚えのない騒音性が。私にとっては他のピリオドアプローチの演奏よりも強く感じられました。確かに曲が要求する描写的な音楽場面ではあります。後々の部分では随所に従来通りのクリスティらしい優美さが感じられ、表情表現の幅がさらに広がったと思いました。叡智溢れる演奏す(個人の感想です)。

 2016年ライブ(すげえ)録音のバッハ「ロ短調ミサ曲」もその延長線上にあると思います。その優美さを感想として述べていらっしゃる方が多いように見受けますが、以前よりもメリハリが強くなって、速い部分はスピード感がアップしていると思います。比較対象としてはあまり適当ではないかもしれないですが、1993年録音のヘンデル「メサイア」こそが優美と呼ぶに相応しいのでは。
 最新の録音はハイドンの交響曲第84〜7番など、所謂パリ交響曲集。「自分は今、人生において、好きなことをさせてもらえる時期」と語ったと伝えられています。何をするつもりなんすかね、もしかしてベトヴェン?

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