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エリアフ・インバルのマーラー交響曲第五番

 恐縮ですが今回は想い出話が主です。
 演奏記録はたくさんあり過ぎるので二つだけ挙げます。
 ① フランクフルト放送交響楽団 1986年1月23日~25日 フランクフルト、アルテ・オーパー
 ② フランクフルト放送交響楽団 1987年11月3日 サントリーホール

 ①を初めて聴いて、第1楽章の冒頭から恐ろしくじっくりと引き摺るように、そして最初の爆発から、更に引き摺るように葬送の歩が始まって、という風に私にはインバルの表現のが凄さが初めてダイレクトに感じられました。これがユダヤ的というのか。これまでは録音のせいかさらっとした清々しい演奏で一部、例えば第二番や第四番のスケルツォで、通常よりちょっとだけ遅めの引き摺る感じ、これがフモールというやつかなどと思ってたりはしたんですが印象((笑)!)が一変、これは只事でない。第1楽章から第2楽章へ起伏の激しい展開を経て、第二部スケルツォも初めて聴く伸縮。冒頭ホルンはたっぷりと雄大に、中間部は世紀末ウィーンの様なアゴーギグ。アダージェットの対空時間の長いグリッサンドも衝撃。フィナーレも自在で、スコアを何度も見直してその細部への読み込みに驚愕しました。
 そしてディスク発売の年の暮れにライブが。NHK収録で残されたこのコンサートですが、それがyoutubeにアップされてます。私は実際にライブの観客として聴くことが出来ました。
 正直細部は思い出せないですが、CDよりさらに過激な演奏で、観客は圧倒されフィナーレが終わった瞬間にはブラヴォーとかではなく、皆が一斉にウォーと歓声を上げて大騒ぎしていた状況でした。
 最後の大詰めティンパニが半小節ほど早く入ったり、ライブ特有のキズが目立つのがレーザーディスクで発売されたきり再販されなかった理由なのでしょうか? そんな事よりも重要なものが沢山感じられるのに、ベルリン放送交響楽団との第七番とともに簡単には観られなくなってしまっているのはとても残念な事です。

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