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アルベリック・マニャール 「ベレニス」、三幕からなる音楽悲劇 Op.19 その2

 第一幕第一場、ローマが見渡せる春の夕暮れ、嵐の前触れな空の下でのベレニスとリアの対話。病床にある父皇帝ヴェスパズィアンを見舞っているティテュスの帰りを待つベレニス、恋に身を焦がし浮かれている彼女を諌めるリア。時には厳しい言葉でしゅんとなるものの概ね長調を目指していく。そこにティテュス帰還のメロディで大浮かれ、リアは退場し第二場ベレニス独唱。第三場ティテュス参上、二人の対話に。「憎い方」「いつも新しい悦び、薔薇よりも美しい」てな事で抱擁接吻、オーケストラのみの愛の二重唱(カノン)。長大で複雑な交唱の末にお互いje t’aimeと呼びかわし夜が訪れて、「庭の合唱」なるヴォカリーズの四部合唱を背景に愛の重唱。合唱パートはカノン等対位法が駆使される。歌詞や曲調ともトリスタンとイゾルデと言うより、ベルリオーズ「トロイの人々」第四幕終盤エネとディドの二重唱や「ベアトリスとベネディクト」第一幕終盤エロとユルシュールの(こちらは女声ですが)二重唱へのオマージュとも言うべき。この陶酔は第四場荒々しいオーケストラによって絶たれムシアンが手勢と共に登場、「こんな時間に何事か」「お許し下され、皇帝のお具合が」「何と」、私もひと目お会いしたいというベレニスに待ておれ、若し皇帝を継がなければという時七日間喪に服し我が新たなる義務に想いをはせねばならぬ、そが済めば宮殿で会おうと。「さ早く」「また会おう/また会いましょう」第五場残されたベレニスにリアが寄り添う、「私が皇后に?」かりそめの休息に静かに第一幕が閉じる。
 愛の二重唱に謎な合唱が彩りを添えるのが面白いんですが、演奏は余計大変になるんでは。主役二人は出ずっぱりだし、ゲルクールとはまたちょっと違う上演の困難さがありそう。この合唱、第二幕との対比で絶大な効果があると私は感じておりますが。…続く

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