ベートーヴェン交響曲第八番第4楽章のメロディライン
ベートーヴェン交響曲の重箱の隅をつつくシリーズですが、トスカニーニ指揮NBC交響楽団の演奏で聴く交響曲第8番第4楽章、第一主題のメロディラインに改変があることに気づいただす。
ピアニッシモで第一主題の提示、速い三連符の連なりの後1stバイオリンがファ、ミミーレ、レ、ドドーシ♭と歌い、三連符が回帰して小休止、
今度はフォルティシモのトゥッティで全体を繰り返します。1stバイオリンも先ほどのメロディを繰り返しますが、赤マークをトスカニーニは1オクターブ高く演奏させます。
この改変で何が起こるか。1回目はメロディラインが低い所から登っていくのでいわば何か問いかけているような感じ、それに対し改変の結果2回目はメロディラインが高い所から降りてくることになり、問いに答えたようになってなんだかいったん完結感がって、そんな意図でしょうか。
この改変はこの呈示部、そして再現部、さらに二度目の展開部のような結尾部の初めの3回されていて、それなりに統一感を持たせています。ちなみにワインガルトナーはしていませんでした。
どなたがこれ踏襲しているか。当然のようにシャイーはオクターブ上げてました。ちょっとだけ意外だったのはクリュイタンス指揮ベルリンフィル(そうでもないか)。他オーマンディ指揮フィラデルフィア、ハンス・シュミット=イッセルシュテット指揮ウィーンフィルで確認できました。
ベートーヴェンはヴァイオリンの高音部の使用に慎重で、有名なのは第九のスケルツォでメロディの音高が目安を越えるとそのまま1オクターブ低くに移し替えたような記譜が多く、不自然だとして1オクターブ上げて演奏しメロディラインを滑らかにするのが慣習でした。最近では譜面のままの場合も増えていますが。そんなこんなを拡大解釈したんでしょうが、でもこれは改ざんの範疇ですよね、ベートーヴェンの心のどのへんに肉薄した改変なのか分かりもはん。
出版された譜面そのもので改変されているものは見つけられませんでした。しかし、ニューヨークフィルのアルヒーフで、マーラーやトスカニーニが使用したという総譜を見ることができました、それに赤鉛筆で1オクターブ上げの記号が書き込んであるのをみつけました。もしかして、マーラーが発案者? トスカニーニによるシューマン演奏にマーラーのオーケストレーション変更と共通の変更が数多くあるのは知られてることで、あながちあり得ない話ではないかも。
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