アルベール・ルーセル(1869/4/5 - 1937/8/23)
彼の作品を印象派、印象主義(そもそもこれマネやモネへの悪口としての言葉でしたから)というクリシェで括ってしまうと、印象批評に過ぎないと誹られても仕方がない。実際にはろくに曲を聴いてないで書いてません? ただ映画のあらすじを書いただけで映画批評と称するのと同じですよ。
海軍士官から作曲家へ転身した経歴こそ語られるべき。そしてスコラ・カントゥルム仕込みの確かな作曲の技術。初期の代表作とみなされる「蜘蛛の饗宴」あたりが印象主義と呼ばれる一因でしょうが、その前後の「エヴォカシオン」、オペラ「パドマヴァーティ」という個性溢れる力作が(簡単に聴けるようにしてくれたミシェル・プラッソンの功績は強調せねば)、新婚旅行先のインド趣味に彩られている事を見ればその延長上で捉えるべきだと思います。異国趣味は否めない。
ヴァイオリンソナタ第一番や第二交響曲など大形式でぎっしり詰まった、晦渋、難しいと感じるかもしれん方向を突き詰めた後、ヴァイオリンソナタ第二番あたりからより簡潔で古典的とも言える、そして特記したいのはユーモア、明るさが増していきます。
生涯にわたって作曲していた歌曲が彼の変遷をよく示していると思います。フランクに繋がるような初期作品から、もう作品12で中国の詩を取り上げ(35、47でも再び)、作品31、32のアナクレオンの頌歌は荒々しさすら感じる独自の世界。これを印象主義っていう人はおるの?
オーケストラ曲は組曲へ調、交響曲第三、四番、シンフォニエッタ。バレエ曲「バッカスとアリアーヌ」、「エネアス」、室内楽は弦楽四重奏曲、フルート、ヴィオラ、チェロのための三重奏曲、弦楽三重奏曲など。晩年の作品ほど軽さが増し、ベートーヴェン晩年の境地に近づきます。ちょっとふわふわしたようなベースラインのない、いわば脚のない音楽。
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