見出し画像

フランスのヴァイオリン・ソナタ

 と言いながら一曲目はベルギー出身のセザール・フランク(1822/12/10 - 1890/11/8)のヴァイオリン・ソナタ(1886)。もうこれは定番かと。緩急緩急の四楽章構成でどれも素晴らしいですが白眉は第4楽章のカノン、そして循環形式からの大団円。私のお勧めはフェラス=バルビゼ、デュメイ=コラール(再録音)、この曲に限ってはピレシュとのデュオよりも良いと思います。
 次はサン=サーンス(1835/10/9 - 1921/12/16)、第一番(1885)、第二番(1896)、部分的には指の練習曲みたいだったり陳腐に感じる事もあるのですが、それはそれとして華やかを楽しんで。若き日のオリヴィエ・シャルリエと重鎮ジャン・ユボーの演奏がなんとも味わい深いです。
 そしてフォーレ(1845/5/12 - 1924/11/4)、第一番(1876)、第二番(1917)。若き日のフォーレ代表作である第一番が何しろメジャーでティボー=コルトーの名盤もあり、青春の調べみたいに言ってる人もいますが(31歳ぐらいすがね)、個人的にはフォーレ後期の魅力に痺れているので。やはりお勧めはフェラスかデュメイになっちゃいます。
 生誕年でいくと次はドビュッシー(1862/8/22 - 1918/3/25)、晩年の唯一のヴァイオリン・ソナタ(1916-7)。ドビュッシーって独自すぎてやっぱりすごいですよね。お勧めはちょっと捻ってイザベル・ファウストで。
 ガブリエル・ピエルネ(1863/8/16 - 1937/7/17)のヴァイオリン・ソナタ(1900)も佳品、

軽やかで晦渋なところは全くなく、しっかり最後に冒頭主題が回帰して盛り上がります。シャルリエ=ユボーで。
 ロパルツ(1864/6/15 - 1955/11/22)は三曲。第一番(1907)は全三楽章が続けて演奏されます。冒頭ピアノがユニゾンで奏する12小節のメロディがプレリュード、インターリュード、そしてポストリュードとなって各楽章を橋渡す上に全曲のメロディの核ともなっています(例えば先回お示しした第3楽章の踊りもこれの変奏です)。第二番(1918)も冒頭にモットーなんですが明るく軽やか。サン=サーンスの交響曲第三番やピアノ協奏曲第四番を想い起こすそれぞれ二部分からなる二楽章構成です。第1楽章後半のスケルツォ部、3 or 2/8拍子です(変拍子ずきだなあ)、実はこれバルトークに近い記譜とかしてんすが、聴こえは実に自然。第三番(1927)は四楽章構成、さらに軽く、先述したピエルネのソナタを想い起こす爽やかさが。録音はTimpaniの室内楽ソナタ集が良いかと思います。
 アルベリック・マニャール(1865/6/9 - 1914/9/3)のヴァイオリン・ソナタ(1901)はもう別世界。全四楽章でなんと40分以上かかる大規模な音楽で、ベートーヴェン後期の音楽、「ハンマークラヴィア」を想起します。私にとっては大空を駆け巡るペガサスの様な音楽です。第1楽章終結部でのカノンは師匠フランク超えですので度肝を抜かれますよ。フランクのヴァイオリンソナタお好きな方でどうしてこの曲を聞かない、そんなんもったいないす。これはデュメイ=コラールで。
 アルベール・ルーセル(1869/4/5 - 1937/8/23)、二曲あり第一番(1907-8、改訂1931)は三楽章構成、中間楽章は緩徐部分をスケルツォで挟む、初期のルーセルらしい硬質でダイナミックな大作。第二番(1924)は凝縮された3楽章で中後期の軽やかさが。終楽章は好物の五拍子っす。ブリリアントからオランダ勢のルーセル室内楽全集があって聴く事が出来ました。
 ギヨーム・ルクー(1870/1/20 - 1894/1/21)、早逝のこちらもベルギー出身フランク最後の弟子です。ヴァイオリン・ソナタ(1892)、全三楽章。第1楽章冒頭のモットー主題が再現部で第一主題と一緒に再現されるのが感動的です。第2楽章は熱に浮かされたような7/8拍子の緩徐楽章、決然と始まる終楽章はモットー主題の回帰とともに締められます。フェラスかデュメイで。
 ルイ・ヴィエルヌ(1870/10/8 - 1937/6/2)、オルガンのイメージが強いですがヴァイオリン・ソナタ(1905-6)があり、シャルリエ=ユボーのお陰様で知ってました。四楽章構成、フランク直系、生真面目な音楽です。
 モーリス・ラヴェル(1875/3/7 - 1937/12/28)は若書きの一曲もあるそうですが、よく知られているのは三楽章構成(1927)、中間楽章がブルースと題されてます。ラヴェルらしい曲ですが、意外と録音は少ないか。
 フランシス・プーランク(1899/1/7 - 1963/1/30)、唯一のヴァイオリン・ソナタ(1942-3、1949改訂)。彼の作品の中で最も荒々しい、情熱的な曲で三楽章構成。ガルシア=ロルカの思い出に捧げられています。古い録音ではメニューインとジャック・フェヴリエがありました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?