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欧州は猛暑による死者約5万人。日本は?

スペインの研究機関調査によれば、欧州(35ヵ国)では2023年、猛暑が原因で4万7690人が亡くなったらしい。2023年は、産業革命前と比較して気温が約1.54℃高い観測史上最も暑い年で、欧州も産業革命前よりも2.12℃〜2.19°C高く史上2位を記録。ちなみに、史上1位は2020年で、産業革命前比2.53°C~2.71°C高かったのだとか。

死亡率を国別にみると、ギリシャ、ブルガリア、イタリア、スペインと続き、いずれも猛暑となりやすい南欧諸国。そして女性と高齢者の死亡率が高かった。逆に、たとえば30℃を超える日が年に数日の欧州でも北に位置する英国では、高温による死亡率は当然ながら低くなっている。

このレポートの分析で興味深いのは、暑さへの社会的適応が死亡率を下げているというものだ。2000年〜2004年、2005年〜2009年、2010年〜2014年、2015年〜2019年の気温と死亡率のデータに、2023年の気温をあてはめた場合、どの程度の死亡者が出たと推測できるかを、明らかにしている。たとえば2000年~2004年に、2023年レベルの気温が記録された場合、8万5千人の死者が出ただろうというのだ。2023年の死者数は、4万7690人だから、20年前の暑さに対する脆弱性は、約1.78倍高かったということになる。このレポートでは、その間、暑さに対し、社会が適応していった、それは技術的な進歩、個人の行動、公衆衛生対策などの成果だと指摘している。

欧州の気温は、パリ協定で設定された1.5℃の閾値を、2023年はほぼ半数の日が超え、世界平均の2倍の速度で温暖化が進んでいるという。このままのペースでは、1.5℃の限界は、2027年以前に超過する可能性が高いのだとか。果たして、この温暖化に対し、今後、どのように社会は適応すべきなのだろうか。このレポートは、あくまで死亡率のデータを扱うものゆえ、まずは脆弱性の高い高齢者等への対応が急務とするが、高温の弊害は、健康に及ぶだけのものではない。農作物への影響は大きいだろうし、製造現場においても高温対策コストが上昇することになる。水不足による取水不足が原因で、パナマ運河の通行量は減少を余儀なくされたように、高温は物流にも影響する。また、水力発電や原子力発電の稼働にも影響する。

日本では、今年の猛暑で、空調ベストが売れているというニュースも見かける。日本において高温を原因とする死者数がどれほどなのか、そのデータは調べてはいないので分からないが、少なくとも元々、高温多湿の気候の日本、この界隈の独自の技術は多様に存在する。空調ベストに限らず、濡らすと冷たさが持続するタオルしかり、冷感シャツに冷感パッドなど、あれこれと。欧州でそんなものはあまりお見かけしない。これは、日本の高温対策技術は、世界に対し、様々な場面でポテンシャルを有するということだろう。

このレポートのニュースを見て、そんなことを思う今日8月14日。ロンドンにて。

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