フリー声劇台本【タイトル:形見のおまじない】

○「(モノローグ)私は今でも幸せになっていいのかわからずにいる。お母さんとお父さんは許してくれるだろうか・・・」
●「おじゃましまーす」
○「○○入って入ってどうぞ・・・ってびしょびしょじゃない」
●「あと少しで着くって時に、急に雨降ってきて・・・最悪」
○「あぁ・・・今、晴れてるよ。はい、タオル」
●「ありがとう。えっマジで。タイミング悪っ」
○「拭いたら中に入って。そのままだと風邪引いちゃうからお風呂沸かす?」
●「夏なのに今めっちゃ寒い。お風呂お願い出来る?」
○「りょーかいです〜。スイッチ押してくるね」
●「はーい」

○「お湯枠までちょっと待ってね。コーヒー淹れるけどホットにする?アイスにする?」
●「ホットでお願い。なにからなにまでありがとう」
○「ハ・ハ・ハ、我を讃えよー」
●「○○様ははー」
○●「フフッ」※2人で笑い出す

○「はい。ホットコーヒー」
●「ありがとう。あの風鈴いい音なるね」
○「夏の時期になると必ずつけるんだ」
●「去年も鳴ってた気がする」
○「でしょ。風流でしょー」
●「夏って感じ」
○「あの風鈴特別なの」
●「特別?」
○「そう特別・・・。あの風鈴、形見の風鈴なんだ」
●「えっ!?そうなの?」
○「うん。お父さんがお母さんの誕生日にプレゼントした風鈴なの」
●「そうなんだ。風鈴をプレゼントするってなんかいいね」
○「お母さんの誕生日が夏で、あと風鈴の音が好きだったから。幼い頃よくね、お母さんと風鈴が沢山飾られている神社に行ってたんだ」
●「だからプレゼントしたんだね。いいお父さんだ」
○「そうそう、この風鈴お母さんの為にお父さんが手作りしたんだよ」
●「えっ!!そうなの?だからいい音なんだね」
○「うん。この風鈴にはお父さんの愛がつまってるの。私ね、夏休みの時、いつもこの風鈴の音を聞きながら過ごしてた。お父さんが風鈴の音には幸せを連れてくるおまじないがあるんだよといつも言ってた」
●「そうなの?聞いたことないけど・・・」
○「私も本当に?と聞いたことあるけど答えてくれなかった。調べても出てこなかったからお父さんが勝手に作ったおまじないだと思うけどね。でも・・・」
●「でも?」
○「この風鈴の音色を聞きながらね、畳の部屋から私、見えてたの。お父さんとお母さんが台所に一緒に立っている姿。とても幸せそうだった。だからお父さんが言った風鈴のおまじないも嘘じゃないかもしれないと思ったんだ。お父さんが幸せそうだったから」
●「いい光景だね」
○「その光景が心にずっと残ってるんだ。でもお母さんもお父さんも私が大学生の時に事故にあって・・・。その時一人暮らししてたんだけど、事故に遭う前に通話で喧嘩しちゃって・・・」
●「それは・・・辛いね。ごめん言葉出てこなくて」
○「いいよ。大丈夫。まだ引きずってるけど立ち直ったから」
●「話してくれてありがとう」
○「○○のこと信頼してるからね。いつも支えてもらってるし。話聞いてくれて嬉しかった。あの時、私はお母さんを傷つけた。だからこの風鈴を飾ってるのは贖罪みたいなものなの。忘れないための」
●「・・・○○、僕にも背負わせてよ」
○「えっ?」
●「僕じゃ頼りないかもしれないけど、辛い過去も苦しみも背負わせてよ。倍以上に幸せにするからさ」
○「でも・・・私・・・幸せになってもいいのかな?」
●「その風鈴、幸せを連れてくるんだろう。僕は○○と一緒にいると幸せだよ。○○は幸せじゃないの?」
○「幸せだよ。幸せ。でも・・・」
●「お父さんとお母さんのように一緒に台所に立って料理作ろうよ。見せつけようよ。僕達、お母さん達以上に幸せだよって」
○「許してくれるかな?」
●「お父さんとお母さんも怒ってないと思うよ。逆にごめんと謝ってるんじゃないかな」
○「う・・うん。私でいいの?」
●「当たり前じゃん。○○だからいいんだよ」
○「ありがとう」
●「幸せにするからね」
○「(モノローグ)私達はこれから先、大きい壁が立ちはだかっても歩いていけると思う。この風鈴のおまじないがあるから。きっと大丈夫」

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