血統に物思う

日本馬2頭が参戦した凱旋門賞において、またもや日本競走馬による同賞の制覇は成らなかった。凱旋門賞への日本馬の参戦はかなり古くから続くが、ウマ娘にも登場するエルコンドルパサー2着、最近サポートSSRカードとして追加されたナカヤマフェスタ2着、オルフェーブルの2年連続2着が最高で、
日本競馬史上最強馬とも言えるディープインパクトですら3着(薬物使用判定による失格)と、手が届きそうで届かない鬼門ともいえるレースになってきた。

凱旋門賞参戦した競走馬の中で、ほかに注目を受けた海外馬としてスノーフェアリーという牝馬がいた。
この馬は父がディープインパクトという「日本の種牡馬から生産」され、数々の海外GⅠを制している。

ウマ娘が流行するはるか昔から、ダービースタリオンやウイニングポストで競馬の世界を知った身としては、日本生産馬が凱旋門賞を制することも、日本種牡馬から生まれた馬が海外で活躍することも、そうであったらいいなあ、という願望、シミュレーションゲームのifの世界でしか考えられなかったことだ。

日本は世界の競馬から「貰う」ことはあっても「与える」ことはできない。
例えばノーザンテースト、サンデーサイレンス、上に述べたエルコンドルパサーも〇外という扱いの輸入馬だった。
日本競馬は世界競馬の中のおこぼれをいただくことしかできない競馬界の僻地としての位置づけでしかない。
そのような状況は、ついに覆されようとしているのかもしれない。

ディープインパクト3冠達成時の名実況

「世界のホースマンよ見てくれ!これが日本近代競馬の集大成だ!」

は、血統という面でも現実となりつつある。

ここで近日行われたほかのレースに目を向けてみると、スプリンターズステークスにてピクシーナイトという3歳牡馬が勝利した。

3歳馬が古馬を相手取って勝つというのもすごいことだが、このピクシーナイトの血統表をみて驚いた。
5代血統表のうち、3代前までがすべてカタカナ表記になっているのである。
カタカナ表記の意味するところは「日本所属の種牡馬・繁殖牝馬である」ということで、ほぼ純日本産の競走馬が、ことに絶対的なスピードを必要とするレースで結果を出したというのは驚くべきことだ。
(もしかしたらもっと前にもあった事例なのかもしれないが、たまたま目についてしまった)

このピクシーナイトの血統を見てみると、メジロ・シンコウといった日本古来の冠名とともに、時代を彩ったサクラバクシンオーやグラスワンダーやキングヘイローといったウマ娘勢の名前も見受けられる。
made in japanとでも標を付けてあげたい位に見ていて美しい血統図だなあ、と個人的に感傷的になってしまう。

このうちのキングヘイローについては以前に育成論などで書いたことがあったが、ゲーム中にも語られているように、この馬は伝説的な名馬を両親にもち、活躍しなければならない宿業を背負っていた競走馬だった。

父は凱旋門賞も含めた欧州のGⅠをいくつも獲得したダンシングブレーヴ
母は米国でGⅠを7勝した名牝グッバイヘイロー

どちらも、日本に行くことが決まった時には現地から大ブーイングを受けたとも聞く。
『なぜ日本などに』ということだろうと、なんとなくわかってしまう。
この両馬の配合は日本で1度だけ実現した。もしかすると日本でしか実現できなかった夢の配合なのだろう。
そうして生まれたのがキングヘイローだった。

このキングヘイローは、種牡馬となってからカワカミプリンセスなどの活躍馬を多数輩出したが、この世を去った今また「母父・キングヘイロー」で注目をされ始めている。
ピクシーナイト以外にも、その凱旋門賞に出走した日本馬ディープボンドも母父・キングヘイローで、父がディープ系のキズナである。

※ちなみにディープインパクトは父父Halo 母父父Lyphard
 キングヘイローは父父Lyphard 母父Haloという牡牝逆配合である

キングヘイローのキングとしての証明は、血統という部分で現実に証明されつつあるのではないだろうか。

ダンシングブレーブやグッバイヘイロー、そしてディープインパクトを産んだサンデーサイレンス、エルコンドルパサーと同時期に輸入され活躍したグラスワンダー、そうした「持ち込み」をいくつも重ねた結果、日本は日本独自の生産体系を築き上げ、ついに世界の競馬界の第三勢力として頭角を現してきた。

いつしか、5代血統表すべてがカタカナの競走馬が凱旋門賞を勝つ日が来るのだろうか。


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