カッティング・ジ・エーセスの準備とヒント
「マジックと意味」(ユージン・バーガー、ロバート・E・ニール著、田代茂訳、すまいるらいふ、2024年)において、著者は「カッティング・ジ・エーセス」は、「ツイスティング・ジ・エーセス」よりもはるかに優れたマジックだといっています。
その理由については本著をお読みいただくことにして、私自身は「ツイスティング・ジ・エーセス」も十分に良いマジックだと思っていますが、そこまでいわれると「カッティング~」をマスターしたくなるものです。
現在、「カッティング~」をマスターしたいと思ったとき、最も手に入りやすい本は下のカードマジック大事典だと思います。
ちょっと値段は高く感じるかもしれませんが、質・量ともに素晴らしく、全てのカーディシャンがぜひ手元に置いておきたい本です。
大事典には「片腕の賭博師」というタイトルで、このマジックは掲載されています。厳密には原案者のダイ・バーノンにもいくつかのバリエーションがあるようですが、この本に載っているハンドリングがマジシャンの間でも一般的で有名であるといってよいでしょう。
ところで、私は学生時代にカッティング・ジ・エーセスの習得を試みたことがあるのですが、ハンドリングが覚えづらく、結局挫折してしまった経験があります。
それは当時の自分の技術や理解力が不足していたからだろうと思い、最近改めて練習してみました。すると、理解はできるし、技術的にも手順をなぞることはできました。しかし、どうにも手順自体の違和感が拭えません。
4つのパケットをつくって、そこに1枚ずつエースを混ぜていくのですが、どうにも非合理で、普通はそんな混ぜ方はしないだろうと感じてしまうのです。
練習によって流れるように行えばそこまで違和感はないのかもしれませんが、実践的にも、4つもパケットをつくるので、テーブルのスペースを結構広く使ってしまい、ちょっと大仰に感じます。また、私にとっては相変わらず覚えにくさも感じました。
そこで、手順の前半部分を私なりにアレンジしてみました。すると全体がスムーズかつ合理的で、テーブルも省スペース、しかも覚えやすくなったと自負しています。はっきり言えば、カッティング・ジ・エーセスを練習したことのある人が私のハンドリングを知った場合、多くの人が私の方法に鞍替えするのではないかという自信があります。
といっても、手法に関しては大幅に変えたわけではありません。原案の良さを生かしつつ、ブラッシュアップしたつもりです。何より、このマジックの醍醐味は後半部分です。
片腕のギャンブラーのストーリーを交えつつ、片手で華麗にエースを取り出していく部分の格好良さは筆舌に尽くせず、ここに惚れ込んで多くのマジシャンがこのマジックを評価するのではないかと思います。ですから後半部分は何も変えていません。
しかもこれがごく普通のトランプで、なんの準備もせずにできるのです。今まで、カッティング・ジ・エーセスを演じたかったけど、何となくややこしくて習得できなかったという方には、ぜひ私のハンドリングをお勧めしたいと思います。
それではいよいよ解説です。解説では基本中の基本となるような用語や技法については詳説していませんので、初心者の方は都度調べる必要があるかもしれません。とはいえ、前提知識としては前述のカードマジック大事典があれば十分で、技術レベルも決して高くありません。「カッティング・ジ・エーセスを覚えたい!」という情熱さえあれば、誰でも習得可能であるとお約束します。
現象
マジシャンは4枚のエースを1組のトランプの中に混ぜてしまいます。昔、片腕のギャンブラーがいて片手だけでエースを探し出すことができた、という話をします。マジシャンも片手だけでトランプをカットし、エースを1枚ずつ見つけ出します。最後の1枚は失敗したかに思われますが、意外な方法で出てきます。
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