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映画 ダークシティ(1998年 アメリカ)

概要

 隠れた名作、1998年公開のアメリカSF映画『ダークシティ』について解説します。翌年公開の映画『マトリックス』は、この作品のセットをそのまま利用しています。

あらすじ

 ジョンマードック(ルーファス・シーウェル)は、ホテルの一室のバスルームで記憶喪失の状態で目を覚ました。部屋を見て回ると、謎の人物からの電話があり、逃げるよう促される。室内には女性の死体があり、動揺しながらホテルを出て、夜の街をさまよう。ジョンの後を黒装束の集団が追っていた。 街では娼婦ばかりを狙った連続殺人事件が起きており、警察のバムステッド警部(ウィリアム・ハート)は、殺人現場のホテルの客室に宿泊記録が残っていた事からジョン・マードックが、連続殺人の容疑者であると断定し、ジョンを追う。 ジョンの妻エマ(ジェニファー・コネリー)は、行方のわからなくなっていた夫ジョンを捜索していた。ジョンの訪問で一度再会するもバムステッドの追跡で離ればなれになる。

さらに街では、不可解な出来事が起きていた。

①街は、夜が明けることはなく住民は、必ず 午前0時に強制的に眠らされていた。
②街の構造が、街の建造物が動くことによって変えられている。
③街の住人たちは、それぞれ記憶と職業や立場を入れ替えられていた。
④黒装束の集団は、0時に眠る事なく街の人々の配置を変えていた。
 

警察と黒装束の集団に追われながら、ジョン自身の性質に気づいていく。

A ジョンは、他の街の住人達とは違い午前0時に眠らない。
B 物体を動かしたり、午前0時に起こるのと同様の建造物の構造を変えるなどの超能力を使えた。
C ジョンは街の外、故郷のシェルビーチへはどうやっても行くことができない事に気づく。

 ジョンの自称精神科医シュレイバー博士(キーファー・サザーランド)は、黒装束の集団達に脅され協力し問題の中心にいた。街の住人の記憶の改ざんなどを行っていた。シュレイバーは実はジョンを操り、黒装束の集団たちへ暗躍を行っていたのだった。


ネタバレ

 ジョンは電話帳にあった住所から叔父のカールを訪ねた後、異邦人たちに追われるが、バムステッドとエマに救われる。警察で拘束されるが、同じく街の不可解な出来事に疑問を持っていたバムステッドに逃がされる。 ジョンは、シュレーバーの元を訪ねるが、注射を打たれそうになる。背後からバムステッドが、シュレイバーに銃を向け、形勢逆転する。二人とも疑問に思っていたシェルビーチへと案内させる。橋がなくなり街中を流れる川をボートで進みシェルビーチへと向かう。 道中、シュレイバーから事実が語られる。

①黒装束の集団の正体は、宇宙人であり、シュレイバー曰く異邦人(ストレインジャー)と呼ばれる存在だった。

②街全体が地球から連れ去れた人間を住まわせる実験場だった。
③異邦人たちの目的は、人間の精神を学ぶ事だった。
④異邦人たちは、絶滅の危機に瀕していた。

⑤人間の精神を学ぶ事が絶滅を回避する糸口だと考えていた。

⑥異邦人たちは複数個体で一つの精神を共有していた

⑦異邦人たちはチューンという超能力で地底にある巨大装置を使い街の構造を変容させていた。

⑤異邦人は太陽が弱点だったため、街の夜が明けることはなかった。

 ジョンとバムステッドがシェルビーチの壁画を破壊すると壁画の向こうは宇宙だった。街全体は、人工惑星だったのだ。バムステッドと異邦人がもみ合い宇宙空間へと放り出される。エマを人質に取られ、ジョンは催眠をかけられ異邦人の地底施設へと連れ込まれる。

 地底施設で、異邦人たちの多数の総意ではジョンを処刑する意見で一致していたが、リーダーのミスターブックの意見でジョンに異邦人の記憶を移植する事で異邦人側に取り込む事で決まる。

 シュレイバー博士はジョンに記憶移植の注射を行うが、機転を利かせ、ジョンのチューン能力を覚醒させるための訓練の記憶を移植した。
 ジョンのチューンが覚醒し、地底施設を破壊し、ミスターブックを倒す。異邦人たちを壊滅させたのだった。
 ジョンのチューンで街全体の構造を変化させる。夜が明ける事の無かった街に陽の光がさす。ジョンは、シェルビーチの海岸で再びエマとの再会を果たした。


監督・キャストについて

監督、脚本 アレックス・プロヤス

『アイロボット』『クロウ 飛翔伝説』など。

ジョンマードック ルーファス・シーウェル
 本作、以降ハリウッド作品で、悪役を演じる事が多い。
『ロックユー』『レジェンドオブゾロ』など。

エマ ジェニファー・コネリー
 子役時代から数多くの作品に出演しているが本作に出演後、30代のキャリアを確立した。

シュレイバー キーファー・サザーランド
 ドラマ『24 -TWENTY FOUR-』のジャックバウアのような粗暴な側面を持つキャラクターが十八番だが本作の時期には、挑戦的に演技の模索を行っていた事がうかがえる。

バムステッド ウイリアム・ハート
 孤独な刑事の役で洗練された演技で渋い魅力を役に吹き込んでいる。


元ネタと見られる作品

うる星やつら ビューティフルドリーマー(1984年 日本) 

 異星人に秘密裏に街全体が乗っ取られている

アキラ(1988年 日本)
 超能力を覚醒し、街を破壊する

フィルムノワール
 殺人事件に関わった事から社会の暗部に迫るなど

ドイツ表現主義
 美術


影響を受けたと思われる作品

マトリックス(1999年 アメリカ)
 主人公が救世主的存在

スタートレック ネメシス(2002年 アメリカ)

 敵の造形

インセプション(2010年 アメリカ)
 街の構造が変容


感想

評価ポイント 

 ダークシティは、創造性を刺激する作品である。ジャンル、国籍超えて様々な作品からの膨大な引用から成り立ち、モザイクアート的な側面を持つ。元ネタを上げるとキリがなく、見る人によって着眼点も違うだろう。膨大な引用元の作品が咀嚼され、作品独自のオリジナリティもあるため、後生の作品にも影響を与える。ジャンル映画的サービスにあふれ楽しい作品であり、映画ファンから愛される隠れた名作である。


ネガティブなポイント
 只、ストーリー上ではご都合主義の目立つ部分も少なくない。これはこの作品に限った話ではないがストーリーが救世主である主人公を覚醒し無条件で勝利させるためのお膳立てが中心となってしまう部分。異邦人たちが序盤からドジを踏みまくり死にまくっているなどがあげられる。
 他には異邦人が記憶の改ざんを行っているためとはいえ、街の住民たち、登場人物たちが夜が明ける事がないこのに気づかない、海、シェルビーチへ行くことができないのに気づかないなどある。
 

 その分、物語の大半が夜のシーンで占められゴシック調の美術が強調され整合性よりもビジュアルを重視した結果の魅力がある。

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