TVドラマ感想:八つ墓村(2019年NHK-BS版)

 録画した物を本放送の一週間くらい後に見ました。
 金田一耕助シリーズの映像作品は、1976年の市川崑-石坂浩二版の「犬神家の一族」から関心を持っていくつか見ていますが、市川崑-石坂浩二版が完成度が高すぎて、特にTVドラマ版に好印象に残る物が少ないのが残念です。
 TVドラマ版金田一耕助物に好印象に残る物が少ない原因は、キャスティングに演技力が不足しているアイドルを主演級に据えたり、お茶の間の視聴者に合わせてかなりマイルドな味付けにしてあったり、放送の尺に合わせて延長、もしくは短縮仕様に改変してあるところと考えます。
 横溝正史氏原作の八つ墓村の映像化作品としては、映画(1977年の野村芳太郎-渥美清版と1996年の市川崑-豊川悦司版)とTVドラマ(1978年の古谷一行版)は少なくとも見ているはずですが、きちんと覚えているのは1977年の映画版だけです。1977年の映画版に関しては、本当にオールスターキャストであったことと、推理サスペンスと言うよりオカルトテイストの探偵映画という雰囲気だったことをよく覚えています。
 これに対して、2016年から突然開始されたNHK-BSプレミアムの枠で年一度のスペシャルとして制作・放送されている金田一耕助シリーズは、一般によく知られている俳優の出演は少なめですが、明らかに演技力に問題があると考えられる俳優は出演しておらず、脚本もほぼ原作に忠実、演出方法・ロケ地の選択・テーマ音楽の選択も充実しており、久々に楽しめる金田一耕助探偵譚となっているように思います。(相変わらず、呆然と立ち尽くすだけのへボ探偵っぷりですが。)
 今回の八つ墓村は、金田一耕助役は昨年の「悪魔が来たりて笛を吹く」に続き吉岡秀隆氏、主人公の井川辰弥役に村上虹郎氏を起用し、(野村荘吉役(國村隼氏演)の据わりがやや悪いように感じましたが、)大きな破綻も違和感もなく無事(やや衝撃的な)結末まで無事着陸させています。
 個人的には、犯人の動機がほぼ原作通りでしたし、里村典子の位置づけも原作に近く、希望のある結末となっている点を評価したいと思います。尺の都合上、省略した部分もあると思いますが、特に不自然さは感じませんでした。
 ロケ地にもだいぶ苦労したのだろうと思います。2006年の市川崑-石坂浩二版の「犬神家の一族」を見た時は、「もう、このような映画を作るために使えるロケ地は日本にはないのかな?」と思ったものでした。しかし、この作品は、NHKお得意の画像の後処理(コンピューターを使用した電線などの余計な物の除去)がかなり採用されていることが予想されているとは言え、画像全体の(時代を表現する)雰囲気はよくできているように思いました。
 演者に関しては、真木よう子氏と佐藤玲氏の全く演技の内容が対照的な二人に注目しました。特に、佐藤玲氏は私にとってきちんと見るのは初めてと言って良い女優さんでしたが、経験は豊富と見えて、全体的に暗いトーンのドラマに上手に明るさを添えているように思えました。
 賛否の議論があるとすれば、劇中での挿入歌、特にオープニングです。2016年の「獄門島」で使用されたMarilyn MansonのKilling Strangers、2018年の「悪魔が来たりて笛を吹く」で使用されたPortishead のCowboysはどちらも物語のトーンに合った曲であり、選者のセンスを感じましたが、今回は、どういうわけか、目立ったオープニングテーマは無し、劇中挿入歌としてSimon & GarfunkelのScarborough FairとEaglesのDesperadoのド定番を入れています。ドラマ前二作が徹頭徹尾アンハッピーな内容なのに対して、今回の八つ墓村だけは、やや希望を感じる結末であることが関係しているのかもしれません。ただ、個人的にはかなり違和感があったところでした。真木よう子氏の演技が素晴らしい物だっただけに、ちょっと残念に思います。
 前二作と同様、今回もラストで次の作品への伏線が見られましたので、2020年も期待しています。
 次は鬼首村の亀の湯へ呼び出しだそうです。o(^-^)o

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