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見えない短歌 Le Tanka invisibili 「ひとつ」

ルール

・架空の一首評に対して短歌を作ろう!
・きっとたのしい!
・締め切りは12/12(木)!
・集まった数によるけど、全首ひとこと評する予定です。
・作品も名前もアカウントも公開するので、既発表扱いになることにご注意ください。
・公開はとりあえずnoteでやってます!https://note.mu/darekautaeyo
・ひとり一首まで!
・重複投稿の場合はあとの作品をとります!
・作り始めたばっかの人からベテランまで、誰でもどうぞ!
・タイトルはイタロカルヴィーノの名作『見えない都市 Le Città Invisibili』をもじったんだけど、イタリア語があってるかはわかりません!
・締め切りは12/12(木)!
・という企画でした!

架空の一首評「ひとつ」

ちょっとした変化によりあるものが別の存在になってしまうことがある。
色とりどりの花束から一本を抜き出したら別の表情を見せる、というように。
この歌ではまとまっていたものがバラバラになり、ひとつひとつが解き放たれていく。
歌の視点も、集団から個へと移動していく。
おもしろいのは、まとまりを解き放ったのは自分であるということだ。
自らの行動で世界の新たな面を発見していく。力のある一首といえる。

選歌の方法

名前を隠した状態でランダムに並び替え、天地人、入選を選んでます。
順番はすべてランダム。
上にあるから良いとか、下にあるから悪いとかはありません。
短歌の上に短歌を作らず、短歌の下に短歌を作らず。


ざくざくと手紙を刻む真夜中の刃からこぼれたあなたの名前
有村桔梗 @chattenoire_k
手動シュレッダー。とにかく復元不可能になるように手紙に刃を入れる。切り刻んだ紙が山を作っていく中、ふとあなたの名前の部分だけがこぼれ落ちる。自分との関係からも、手紙からも、ゴミからも切り離された名前。名前は名前だけで存在できるのだろうか。

パンと手を打てば飛び立つ鳩たちのまなざしとして広がる街よ
抹茶金魚
鳩には鳩の世界がある。人が二メートルにも届かない高さで街を見ているとき、空を行く鳩はビルよりも高い視点から街を認識している。見ている景色が違うなら、当然考えていることだって違うはずだ。

今日二組出席番号九番の名前と声とピアスを知りぬ
ともえ夕夏 @croissant_hey_z
全然知らないやつだったけど、たまたま二組と一緒で、たまたま九番のやつと一緒になって、名前と声とピアスを知る。会わなくても知ることができる名前と、会わなければ知ることのない声とピアスが並列になっている。


ホールからピースになった頂点のいちごにぜんぶ名をつけてみる
千仗千紘 @Chihiro_Senjyo
同じように切り分けられてもよく見ると違う。そのひとつひとつに名前をつける。名前をつけることは他と切り離すことで、それぞれが特別なものとなる。

二枚あるジョーカーのうち泣いている方を黙って持って帰った
沼谷香澄 kjomikatano
トランプのジョーカーは二種類あって、色ありと色無しだったりするけど、これは涙ありとなしだったみたいですね。道化は常に哀しみとともにある。そして自分はその哀しみを自分のものとする。関係ないけど映画のジョーカー見たい。

入選

星空のジグソーパズルを分解しデネブの裏の灰色の紙
橋本牧人 @ots_mh
むちゃくちゃ難しそうなジグソーパズル。

蒲公英の綿毛ふうーっと散らす野辺 ひとり風旅(かぜたび)始まりの時
沙羅粗伊
それぞれの綿毛がそれぞれの旅をする。

きっちりと結ぶ髪の毛切り落とすくせ毛はひかり輝く羽根に
桂 @katsurajingzi
呪縛からの解放とも、羽根を失ってもう飛べなくなったとも、読める。

月草の花束のうちのひとつだけ除いてしまおう移ろう心
命 @roudoukyohi
月草は万葉集でもうつろうものとくっつけられて歌われるモチーフ。それにしても月草の花束って儚さの塊みたい。

糸切れば首をふちどる純白の真珠ぱらりと個個の輝き

西藤智 @hitonosulab
真珠のネックレスを断ち切る。結句「輝き」よりいいものがある気がする。

ひともとの木よりちぎりぬ葉脈にたくわえられて地へ還る水
壱羽烏有 @summatu
すげーミクロの世界。

牛舎より犇(ひし)めく電車の塊(かい)として吊革ひとつひとつに人のたましい
新井きわ
満員電車と牛舎の掛け合わせはおもしろい。家畜にもたましいがある。

褥には月を匿う番犬が家族を埋めた静かな場所に

鬼無里 @Ajx4LslYQ2HpOFP
いなくなったものを守る。「静かな」はなくてもいいかなぁ。

卵巣を飛び出した子が五年後に道路に飛び出しこっぴどく叱る
友常甘酢 @azukicreamcup
上句すげえいい。元気良すぎる。下句は上句の良さを受けるのには弱いかなぁ。

信号を待つ傘の群れ 遠くからビニール傘の透明を見る

あやこ hasiranai_usagi
ひとりだけビニ傘だったんでしょうね。「遠くから」はなくてもいいかな。

「その腕輪、なんかいいじゃん。どこのやつ?」「ああ、これ? 手錠を引きちぎったの」
高田祥聖 575inroute88
豪腕すぎ笑った。

自販機に沈黙の列いかり肩寒いですねの声にほころぶ
ゆうや @sakigake_japan
イライラしてたりするときほど、何気ない会話が気を楽にしてくれる。

氷塊を砕く一つの欠片あり右手のピックは月も刺したり
ゆっきー @tlEsDMFKp54KWBs
月が見えるバー。欠片は氷でいいのかな?

古めいたブレスを切ってコーラルを娘の鞄に縫い付けている

真島朱火 shuca_m
少しずつ受け継がれていく。ブレスレットだと思うけど、「ブレス」と略すのは一般的なのかな?

たんぽぽの綿毛まみれの草原よ徹底的な別れのかたち

つみき
もう二度と会うことはない。

明け方のインク瓶より吸い上げしブルーの描くわたしの世界
武富純一
暁のブルー。「上げし」が過去で、「描く」が現在。時間差はなさそうだから時制統一してもいいのでは。

そしてわれは統合失調症になり自分をばらばらに解き放つ
松木 秀
統合失調症とは自らを解き放つものである。

一言にリボンさらっと解きさってわれは飛び立つ乱れた髪で
壮太
一言ですべてが変わる。

楽園を解き放つために火をつけて なんて自由な砂漠であろうか
やお @my81ana
自由とはある意味空虚。

海鳥の羽ばたく時の音の色ひとつひとつが虹色の光

さくら blossomtrill
共感覚。虹色に意味あるんでしょうかね。

身の内に篭る恋の名付けた子らひとつひとつを解き放ってく
嶽野 鏡 @TakenoKagami
精神的な話か、実際の出産か。

屋上から単語カードを散らしおり sincerity あなたに届け

袴田朱夏 @hakamada_shuka
「sincerity」は誠実、正直。言葉を降らすってのは美しいシーン。

ここはひとつ、と大人の顔で崩しくるる天井画のやうなわたしの価値観
尾崎弘子 @hiroko14oz
理想が崩れる。でも天井画が崩れたら空が見える。

沈黙の赤い林檎を齧る僕だってさよならする朝だもの
かなえ🌺🍀 @kanaekimmani
無知との決別。

ひとつだけ残つた結び目ほどきたりこの街から去る君の足音
桐谷文子
人とのつながりをほどいてくって感じかな。

ひと房の葡萄がひとつまたひとつ喉を叩いて粒となりゆく
知己 凛 @Chikorin7
丸呑みの快感。

佳作

サクラサクセーラー服を脱ぎ捨てて自由という名の至福の苦しみ
みぃ
着る服も進む道も自分で決める。下句の破調は音整理したい。

いまひとつメイクが決まらなかったので今日は下りの各停に乗る
中嶋港人 @minatotanka
化粧延長戦。

てつぺんへ一等星のはにかみをひとつのみ選るきよしこの夜

あをきはな
星だってはにかむ。

羽のようなささくれを微かに引いた巻いた茶髪のダッフルコート
ryooooota Ryota_has_haiir
上句は何のことなんだろう。本当のささくれ?

星の環(わ)や 匠のわざよと寄り見れば 遊ぶわらべのはじく石とは

T・G・ヤンデルセン @TGyandersen
ビー玉みたいなものを想像したけど、なんかすげー綺麗な石なんでしょうね。

戦中派はトラウマ今日も語るんだ 旭日旗の線一つ消すために
マゴメ @XN1sm9p9cAsK8B1
一つ一つ変えていく。

ただ我が放り砕いた粉々のひとひら拾われ真理となれり
酒匂ささ @sakenoka
欠片が真理になる。何を砕いたんすかね。

檸檬色の直方体より一枚を静かに僕の未来へわたす
無兎(のらびと) @Muto_NoRabbit
なんすかね、この直方体。未来の僕が受けとるもの。

寄れ愛せガワにワギナ身に陰嚢《ふぐり》あり具否《ぐふ》に水際《みなぎわ》に我が性あれよ
青村豆十郎 @aomura10106
「ワギナ」だけ日本語じゃなくて浮いてる感じある。

卓上のマスカット捥ぐ一粒が憂う太古の翡翠のやうに
アダムス理恵
「太古の翡翠」が美しい。「憂う」は捥いだ人が憂いているってことなのかな?

ひとつひとつの恋の終わり終わる苦しさ青空に放つ

はるかちゃん
空には苦しさが満ちている。もう少し定型でも良いと思う。

整列におなら一発 やかましく人間らしくざわめく僕ら

水無月水有 411_izayoi_rio
犯人捜しと笑いをこらえきれない犯人。

つやっつやのJKらのよなマスカット 一粒もいでケーキにのせて
くぼたけ
JKを食べるイメージでなかなか邪悪。

もろともに木組みの塔は倒れゆき我の右手に一名のユダ
松本未句 @mt3ku
右手が裏切り者。

雑煮の具 箸に摘まめば世界樹の地図になりゆく 順々に冷ゆ

夏水 samaot
「世界樹の地図」がおもしろいんだけど、どこがどう「世界樹の地図」なのだろうか。

文旦は宝石箱だ 薄皮を剥けばひとつぶひとつぶひかる

ほのふわり
宝石箱や~!の人が出てきてしまって…

人間の体積を知るための箱 圧して崩すドア横の人
煙花 @yenca5
乗車率200%。

さっきしたくしゃみはいろは歌の「ゐ」で「ゑ」までくしゃみを止めないでおく
なかやまなな
どういうことかわからんけど、結構くしゃみしそう。

鮮紅のリボンで反旗翻す黒薔薇の園わたし野茨
本屋文華 @ayakahonya
棘を失っちゃあいかんのです。

会社とて 命あるものなれば 倒産憂き目 人は去りゆく

STM_kurosawa
会社は巨大な生きものみたいなもの。

五十音刻めば「かき」「わら」「ひふ」落ちて「たな」の「うえ」には「あい」が残った
かろのうどんこ
50音表とにらめっこしてみよう!

恋愛のエモとエロ抜きをひとつと恋と愛抜きのセックスください
あゆみ https://note.mu/shiki_haraguchi
肉体か精神か。「と」の接続が多すぎて意味がとりにくかったです。

黒い服ばかり選んで着たがった子供らしさを期待されても
澪那本気子 @mionamajiko
「子供らしさ」の押し付け。

恋をしてなかよしごっこイチ抜けて呼び名上等サークルクラッシャー
沖津 ありす https://mobile.twitter.com/3pingsheep
サークルの付き合いを「なかよしごっこ」というのはなかなか恐ろしさがある。

森としてありけるひと木ひとえだを折れば左手(ゆんで)は地球儀となる
梶間和歌 @WakaKajima
木の枝を地球儀の軸にした。ってことかな。

みつあみをほどくわたしの指先があなたと絡む夜のベッドで
吉村奈美 @404notF08169144
ほぐしていた手が絡み合う。「夜の」はなくても通じるような。

白髪一本請われて抜けば若き日の母の笑顔のそれぞれの意味
けら @kera57577
請われて白髪を抜く場面とは…。なんか物語ありそう。

駆けてゆく一列の最後尾から抜け出すお前、一本のパス
西鎮 xi_zhen_ivUT
なんかのスポーツですかね。ラグビー?

ぬばたまの学生服より目を見れば意志の強そうなひとつのたましい

鮎 @sweetfish332
たましいは目に宿る。

たまかわもあおきおさむもコナンでもテレビでかたる真実はひとつ

丸本一輝
「玉川徹」「青木理」と思われる。二人に批判的なのかな?

絵替わりの夏の入れ子のアモルファス砕きてちんと尖りゆく肌理

玉井 井玉 @tamakolla
何かを鋭く尖らせている。

じゃらじゃらとシュレーディンガーの六角柱すっと一本私の未来
バンチャ @1BYGC6SUjoCQ8iA
幾つもある可能性の中の一本だけがあるってことかなぁ。

雑記

全63首!おつかれさまでした!
今回は「ひとつ」ということで、まとまったものから抜き出したひとつというテーマでした。
違うグループにいて、いけ好かないやつだったけど、たまたま二人きりになって話してみたらいいやつだった。みたいな。
そんな感じで一回もクラス一緒になったことないのにいまだに関係が続いている友だち、いるよね。いない?
集団だから見えるものもあるけれど、切り離して見える風景ってのもたくさんあるんですよね。
(逆に見えていたものが集団になって埋没してしまう。というのも)
その見えない部分が見える瞬間みたいなのを歌うとおもしろいんじゃないかと思います。
穂村さんがいう「ワンダー」みたいなのも、この辺に隠れてたりするんじゃないでしょうか。

あやまちて切りしロザリオ転がりし玉のひとつひとつ皆薔薇  葛原妙子

ロザリオを切る歌。
まとまっているとロザリオだけど、バラバラになると薔薇になる。(バラだけに)
それにしてもロザリオと薔薇って濃い組み合わせですね。
ゴシックな世界。

もうひとつのポイントは自分の行動。
短歌って立ち止まっている歌ばっかりなんですよ。
「見ており」とか。
自分がそこに存在していて、周りを見ているだけ。
まあ歌にするとき何かを見たり感じたりして歌うことが多いので当たりまえなんですけど。
だから行動があると際立つわけです。
具体的に行動を起こして、現実世界に作用していく歌ってのはやっぱりおもしろい。
作者でも主体でも、その人が世界にどうアクションを起こしていくのか。
その起こし方とかアクションの選択の仕方に否応なくその人らしさが出ると思うんです。

牛糞のこびりつきたるてのひらを洗へば北を指す生命線  時田則雄

手のひらを洗う歌。
洗ったことで牛糞で隠れてた生命線が見えるようになる。
洗ったことで北を指す。

リトルリーグのエースのように振りかぶって外角高めに妻子を捨てる  斉藤斎藤

妻子を捨てる歌。
豪快すぎて笑える。

という感じでした。
ささやかな行動でも、激しい行動でも、ガンガン歌に盛り込んでこ!

「見えない短歌」は第十回でいったん終幕としたいと思います。
正直三回目ぐらいで終わるかと思ったんですが、ここまで続いたことが奇跡です。
最後までおつきあい頂けるとうれしいです!

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どうやら佐佐木定綱さんの『月を食う』っていうめちゃいい歌集があるらしいですよ?????
終電の光を君と眺めおりそのまま銀河仰ぎ寝ころぶ
興味のないテレビを見ながら食う飯のように若さを消費していた
朝靄のなか白猫はおれと目をそらさないまま朝靄になる
みたいな歌が載ってるらしいですよ?????
これは買うしかない??????
https://www.kadokawa.co.jp/product/321904000684/

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