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失神、





手術を受けることになった。
全身麻酔のための説明を受けているのだが、担当医が不在で、助手の女医がしどろもどろ自信のない口調でありきたりのことを言っている。
「・・・そのほか、患者さんのアレルギー反応に留意することも踏まえて・・・」
ん?アレルギー?へー。そういうことも事前説明に入れるんだ・・・意外な気持ちで聞いている。いつも一緒に仕事しているスタッフだからか?


と、そこへ主治医のDr.Hがひょっこりと顔を出してきた。
「アレルギー喘息のこと、ちゃんと言っておいてね」
思わず、「先生、わたし、喘息があるんですか?」と訊いてみた。この先生とは何度もオペに一緒に入っていて、わりと親しい。手術も早くて上手い。大好きな先生なのだ。
「あるよー君は全身アレルギーの塊みたいなものでしょう」

そう言われればそうだ、と腑に落ちた。全身に出た蕁麻疹とか、シーズン的なアレルギーとか、皮膚を強めに引っ掻くと赤く線が浮き上がるとか。

「先生、手術前に思いっきり、失神させてくださいね」

失神、だなんて、バカみたいな表現、、、でも咄嗟にそう言っていた。
H先生は飄々と笑いながら

「失神、させるよ〜」

と言った。




12/13/2016





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