5/20

今日は5/20(多分投稿するときには21日になってる)
自分が推したと自信を持って言えるアイドルグループクロスノエシスが無期限活動停止してから一年が経った。
無期限活動停止というのはあくまでライブ活動をしないということであって、ファンの中にクロスノエシスが生き続ける限り、それはそこにあるということで解散という言葉を使わずに無期限活動停止という言葉を選んだのが理由らしい。

実際には去年sound cloudにはプロデューサー兼全楽曲担当のsayshineさんがクロスノエシス名義で新曲をアップロードしていたりするし今日も多くの人が一年前を偲ぶポストをしていた。

自分はというと、クロスノエシスについて、きちんとまとめて残す!と宣言したものの、去年の5月~8月は酷い有様で、家の外を10メートルぐらい歩くとふらついて、まっすぐ歩けなくなり、建ったり座ったりする動くことが辛いので、風呂に入れず、壁にもたれかかったままシャワーを短時間で浴びたりするような状態だった。(ちなみにこれは後に双極性躁鬱症Ⅱ型と診断される)
クロスノエシスの音楽も聴けなかったし、アイドル全般効くことができず、昔のロボットアニメの主題歌ばかりを聴いていた。



自分のことはさておき、一年経って色々なアイドルの動向を見ると、みんなtiktokをはじめてなんとかネットの力で拡散させようとしている気がする(実際、ふるっぱーやiLifeはtiktokでバズったことで武道館までたどり着いたのだからそうだと思う)

しかし、いわゆる楽曲派界隈が登場した2016年頃はライブハウスから文化が広がりそしてシブヤノオトなどの歌番組に呼ばれたりメジャーデビューしたりしたが、どれこれもあまり続かずに終わっていったように思える。

そんなこんなでコロナを経てショート動画の時代が到来してみんなネットバズを狙ったところが一山当てている。

多くのアイドルもtiktokをはじめているが結局自分たちの音楽を載せているのでバズりようがない、素人に真似できるレベルではなく、これはバズらせるのは無理だろ〜ショート動画の研究本なんて無限に出てるので読んでからやり始めた方がいいぞと思うものばかりだ。
最近だとクマリデパートがブルーサバイバーのサビの動きをバズらせようと少しtiktokに載せていたが、はっきり言ってあんな動きは素人にはできない、振り付けの先生や訓練したアイドル(ちなみにクマリデパートは日本のアイドル界の中ではかなりダンスの激しいグループだと思っている)にしかできなものをバズらせようというのは無理があるよなぁと思いながらみていた。

@idm_jp

この速度についてこれるか!!!? 超!かなり!ブルーサバイバー!!! #振付師本人が踊ってみた #クマリデパート #ブルーサバイバー #blue #dance #流行

♬ ブルーサバイバー - クマリデパート

推し活という言葉も流行った。推し活で人生に生きがいを!といったような言葉も随分聴くようになった。
中森明夫によると、アイドルとファンが同じ方向を向いて向かうことが推す力ではないかと述べている。

推す力 人生をかけたアイドル論 (集英社新書)中森明夫 2024年より

今日本は失われた30年と言われるようにゆっくりと沈没していっている。
にもかかわらず企業はその凝り固まった体質を変えることができず、実質賃金は下がりっぱなしだ。
個人が何かを達成したいと思っても、企業戦士として頑張って出世する…という未来は描けない。むしろ出世しても給料の割に責任だけ増えていいことがなにもないというのが実情だが、それでも何かを達成したいと思うのが人間だろうか、自分は何者にもなれないがアイドルに成長を仮託してそしてそしてアイドルが成長してくれることの手応えが推し活の裏にある日本の問題点だと思う。

そしてショート動画と推し活がくっついたのが今の時代じゃないかと思う。
そしてtiktokというプラットフォームはシミュラークル(模造)の原理で動いている。
tiktokで好きな曲の振りコピを上げることが推し活と紐付いて、推しに貢献している手応えなんかがあったりするんじゃないかなと思う。
だから流行ってるものを見るととても簡単な振り付けが多いように思える。

とはいえ自分たちのスタイルを捨ててまでtiktokの仕組みをハックしてバズ狙いをするというのはクリエーションとして何か間違っている気がする。表現したいものが参入障壁なしでしがらみなく表現できるのがぼくの好きなライブアイドルだからだ。tiktokで受けるために仕組みを上手くハックして動員を増やすことはビジネスとしては正しいのかもしれないが音楽として正しいとはあまり思えない。(これはきっと青臭い意見だと思う)

話をクロスノエシスに戻したい。
クロスノエシスはとにかく企画力が壊滅的で、メンバーはSNSも配信も苦手だった。
前身のグループHAMYDASYSTEM では本人達が暗すぎて方向転換が行われた(https://ototoy.jp/feature/20170707005)…というぐらいなのでステージを磨く方向に活路を見いだしていたグループだった。
良いライブをすれば口コミで広がってファンが増える。
少なくとも2016年ぐらいから話題になった一世代前の先輩アイドルグループ達はそうだった。
そういう価値観をかたくなに信じていたグループだったと思う。
メンバーのRISAはワンマンの後の挨拶で「ステージに失礼のないパフォーマンスを心がけたい」と言っていてそれを口だけでなくしっかりと実現したグループだったと思う。

2023年1月に行われたワンマンライブ、salvationは実際にそれを体現する圧倒的な映像体験で魅了するというものだった。
そこには共感やエモ、(一緒に踊るなどの)一体感といった分かりやすいものが一切ない、人間の身体と限られたステージでどこまで客席に没入体験をさせることができるか?という挑戦をしてそしてそれが達成できたのだと思う。

しかし、時代はライブハウスから文化が広まる時代からtiktokで広まった曲がライブハウスで披露される時代へとすっかり逆転してしまっていた。
そこには女性人気とか共感とか分かりやすいものが強い時代となっている。またSNSを通じた疑似的な一対一の関係もまた強化されている。
ファンがライブの行き先を決めるのはステージの力ではなくファボくれる数や知り合いがいるかどうかといった要素の方が大きくなってしまったように感じるのだ。
後は酒を飲んで多動できるグループが強い、運動をするとセロトニンが分泌されるので一億総鬱の時代それは正しいと思う。

当然クロスノエシスはその波には乗れなかった。
日々減っていく動員の中でメンバーもオタクもかなり厳しい状況だった。(これは書きたくない一文ですが、残酷な事実として記さなければならないと思う。)
そんな中でも日々レッスンをしてステージパフォーマンスの力を信じ続けたことに彼女たちの強さがあると思う。

アイドルにとって成長とはなんだろうか?多くの人が動員と答えているが、日本が沈没していき可処分所得が減っていくこの時代に動員を増やすのは簡単なことじゃない。
それでも頑張れば1人でも多くのファンを増やせると考えるのはイシューからはじめよという有名な本に書かれた犬の道というやつである

安宅和人 『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』序章

そしてライブを大量に打ち続けるも動員が全く増えないことに疲れたメンバーから離脱していきグループは歌割りの変更やら新メン募集やらに終われて新しい一手を打てない。それがなんとなく自分が今感じている現状だと思う。


プロデューサーのsayshine氏は先輩グループ Maison book girlが削除された日に以下のようなツイートをしている

Maison book girlについては表面的なことしか知らないが、ステージの力で魅了し、圧倒させていたグループだったと思う。

そしてクロスノエシスもまた同じようにステージの力(共感やエモ、一体感などを抜きにした純粋なステージ力)だけでブクガとは違う形でそれを達成したグループだったと思う。

クロスノエシスは自分のたちの進むべき道を動員ではなくステージで成長を表そうとした。そういうグループであり、アイドルの新しい成長の形を示してくれたグループだったと思う。

それは決してマスに刺さるものではなかったかもしれないが、少なくとも自分の心には今でも深く刺さっているのである。