感覚過敏や鈍麻

感覚過敏はあるなと思っていたので、その辺の概念を学んでみようと思う。鈍麻は自覚しにくいのでよくわからないと思っていた。

感覚プロファイル(SP)の解釈の中心となる概念モデルを読みやすいものから引用しておく。

萩原拓(2016).日本版感覚プロファイルの概要

(1)低登録:気づき(登録)が低い。つまり,刺激に対し気づきにくい。神経学的閾値が高い状態である。または反応に遅延が見られる。観察される行動は比較的受動的な場合が多い。
(2)感覚探求:自己を安定させるため,特定の感覚を必要とする状態。多くの場合は,感覚を求める行動が見られる。これは,高い神経学的閾値を満たす刺激を求める能動的な行動としてあらわれる。
(3)感覚過敏:神経学的閾値が低いため,必要以上の刺激が入力され,苦痛を伴う。
(4)感覚回避:過敏と同様に神経学的閾値は低く,嫌いな刺激を避けるような能動的行動がみられる。

以上である。
何かの新書で感覚過敏と鈍麻は併存すると読んだ記憶かあるが、このような4分類のモデルがあると。

自分の場合はどうだろう。以下は思いつきであり、正しい捉え方かどうかは全くもって不明である。
低登録は意識するのが難しいので挙げにくいが、辛い物に強いのは鈍いからかもしれないし、暑がりだと思っているのは寒さに鈍いのかもしれない。
感覚探究は、好みの寝具が落ち着く、同じような食べ物を選ぶのもそうかもしれない。
感覚過敏と感覚回避は、苦痛ならば逃げようとするのが自然なため、時と場合による(具体的な事例でないと分類できない)ように思うのだが、暑がりはこれかもしれないし、周囲の人の声が頭に入ってきて辛い時がある(一方で工事などの騒音はあまり気にせず、低登録かもしれない)し、視覚的な恐怖症もある。
そして強い匂いが苦手なのだが、これは鼻炎由来だろうかと考えてみる。少なくとも感覚にフォーカスすると、鼻が詰まれば人より匂いを感じにくい。症状が改善すると、日頃と比べて全ての匂いを強く感じることで苦痛を感じる時がある。強い匂いとくしゃみ鼻水が連動するようなのだが、これは耳鼻科が頼りなのでこれ以上考えないことにする。そういうわけで、自分自身の中での相対的な低登録と感覚過敏を行き来している、という表現ができることに気づいた。

感覚プロファイルには、自分で回答するものだけでなく、保護者などの他者が評定するものもある。
成人の自己評価では、AASP 青年・成人感覚プロファイル Adolescent/Adult Sensory Profileがあり、「味覚・嗅覚」「動き」「視覚」「触覚」「活動レベル」「聴覚」のカテゴリで構成されているそう。
活動レベルとは何ぞや、と疑問が生じた。上に挙げた資料では子ども版について、前庭覚の活動レベルと、複合感覚の(感情•)活動レベルが登場する。推測するに、少なくとも前者はバランス感覚が良いとか悪い、あるいは車酔いしやすいかどうか、という内容だろう。

そういえば、車酔いは1度だけ経験がある。逆に言えばそれきりない。だから、自分は「車酔いしやすくはない」と認識している。これが、低登録ということになるのかもしれない。

富士しおりら(2019).自閉スペクトラム症のある青年の作業遂行技能と感覚および自己効力感との関連に関する研究
を拾い読みしたところ、AASPの感覚探求の項目は「食事にスパイスをかけるほうだ」「華やかな色の服を着るのが好き」など、ASDに広く見られる常同行動ではなく、一般的な気質的要素である「刺激的希求性」に近い内容で構成されているそうだ。知的障害を合併しないASDでは一般母集団より平均値が低いことが知られているという。この調査でも、感覚探求でのみ有意差あり、それ以外の項目ではなし。

よりASD的な感覚探求を問えば結果は勿論違うだろう。具体的にどんな常同行動を挙げるとASD向けになるのかは分からないが、こだわり自体がそれぞれ違うと設問にはしにくいだろうと想像する。
ただ、このテストでASDでスコアが低いとなると、一般的な気質的要素について無関心な傾向があるのがASD的という味方はあるのかもしれない。

好みの問題と捉えられる内容も、感覚の問題として検証することができるわけで、その背景にASD的な感覚がないとは言えないだろう。勿論、人並みはずれた激辛好きや派手な服装だからといって異常だとみなすことはできないし、ASDを疑う必要もないが。

困り事を抱えている人を正しく分類して支援してほしいし、困り事がなくても各個人が特性を把握して生きられたら良いという立場だが、あれやこれやと調べれば何らかの異常値に悩まされたり、不要なレッテル貼りを起こす社会なので悩ましい。
もし、多くの人が感覚をプロファイルしたならば、学術的には価値の高いことであるが、異常者認定を量産したとして批判されそうである。

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