LiD/ASDと注意の問題

かつて調べたときから、この問題といえば小渕さんという認識があった。
新しいものを見つけたので、ざっと読んでいく。

小渕千絵(2023). Listening difficulties(LiD)の評価とその課題

APDよりLiDを用いた論文が増えている。日本語訳は確定していない。

ADHDの不注意、ASDでは部分指向の注意特性や、広域への注意の切り替えの困難さがあるため、LiDに繋がる可能性がある。

「注意機能については4つの機能に分けられ,選択的注意(Selective attention),分配的注意(Divided attention),持続的注意(Sustained attention),転換的注意(Alternative attention)である。」
メモ。

カクテルパーティー効果が得られないことは、選択的注意能が脆弱と書かれている。

両耳で別々の課題をこなす実験について「2つの課題を同時に遂行する力である分散的注意,それに伴う持続的注意」とある。「分散的」は分配的だろうか。それとも先に挙げた4つには出てこない別の概念か。
ASDがマルチタスクを苦手とする、というのもこう表現されるのだろうし、ASD由来のLiDはありえそうなものだ。

※分配的注意や分散的注意を検索すると、広く注意を向けて全体を把握する、複数の対象に同意に注意を向ける、などと出てくるので、訳語の問題であって「広く同時に」という同一の注意のことと考えている。
※転換的注意が紹介されないので検索すると、「状況に応じて注意を別の対象に切り換える」と出てきた。ほとんど言葉通りの意味であるが、念の為。

「現在行われている課題や作業とは無関係な内的情報への注意のことをマインドワンダリング」というらしい。このマインドワンダリングにより注意が削がれる、「入力される刺激そのものに気づきながら注意を留めることができないマインドレスな状態」により注意を焦点化できない。
これらはADHD症状とも関与するが、LiDの全てをADHDでは説明できない。

自覚的な聞き取りにくさが検査結果に反映されない場合、検査ではある程度予測して対応できるため、日常生活での困難さを反映できない可能性がある。
また、ADHDの過集中や、ASDの部分指向の注意特性が、検査への集中をもたらすため正常とみなされる可能性もある。
→これらはまさに、リスニング試験は苦手ではないという実体験と結びつく。

逆に無自覚でも検査結果が良くない場合、性格や生活環境によって自覚がなかったのだろうとのこと。
自覚するのがよいのか悪いのかはわからないが、環境を整えられるように、または選べるようになってほしいものだ。

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