洗脳解除、自分は今どのフェーズにいるのか?4~6段階(全8段階)
前回に引き続き、洗脳解除の様子を段階的に記します。
4. 批判的思考の覚醒段階
●客観的に教えを検証し始める
● 外部の情報源を積極的に探し始める
●自分の考えと感情を区別できるようになる
人によって、冷静な性格の人やもともとの洗脳度合い、親の状態によって変わりますが、この段階にすぐ到達する人もいます。組織にいながら、外の情報を調べ始め、脱会した人の経験を聞くために、オフ会などにも参加するかもしれません。ネット検索制限を自分で解禁し、調べ始めます。
この時に宗教二世が必死で書き綴った本やブログなどの生の記録が役に立ちます。
3の段階で心身が死ぬほど病んで、初めて「何かおかしい」と体感的に気が付き、この段階に至る人もいます。ある人にとっては、洗脳から抜け出すための必要な気付きを得るため、「うつ病」になる必要があったのかもしれません。もちろん、その後長い間苦しむのですが、自分の心身の不調を「情けない」とか「弱い」などど思って、自分を断罪する必要は1ミリも無いのです。あなたの体は、あなたを守るために不調にならざるを得なかったのです。あなたは、あなたの体に愛されているのです。
5. 脱洗脳の開始段階
●教えの一部が誤りであることを受け入れ始める
● 新しい価値観や世界観を探索し始める
●自己アイデンティティの再構築を開始する
この段階も苦しい二世は多いでしょう。なぜなら、ずっと信じていた教えが、実は間違っていたと認めることは、自身のアイデンティティの崩壊となるからです。
崩壊は突然起きることがあります。外部からの知識を積み重ねていくと、自分の信じていたものが偽りだったことを突然理解出来るようになり、信頼していた組織に騙されていたこと、神や親にだまされていたこと、自分の貴重な人生を無駄にしてしまったこと、人生の選択を間違ってしまったという残酷な現実を目の前に突き付けられます。
その後は、まず怒りが激しく噴出します。実際に組織の建物に放火したり、親を傷つけたり、以前の仲間に暴言を吐いたりする元二世信者は、この段階にいると考えてもいいと思います。
この段階は本当にサポートが必要で、脱会した元宗教二世のコミュニティや、専門家からの助けは必須だと思います。組織内で立派に行動していた、従順で真面目な二世信者ほど、この反動が大きくなります。
この時期は自暴自棄になって、組織で禁忌とされていたことを、わざと破るようになったり、誰とでも関係を持ったり、攻撃的になったり、危険な生き方を始める人もいます。
そのまま、生きづらい人生を送るようになる人はたくさんいます。しかし、時間がたつにつれ、自身を内観したり、援助者の協力を得て、アイデンティティを再構築していく二世も多くいます。
6. 再評価と統合の段階
自分の中にあるものを再評価し、統合させるためには、下記のような3つの方法があります。
1. 過去の経験を客観的に振り返る
日記やジャーナリング*を始める
過去の出来事をタイムライン形式で整理する
信じていた教えと実際の経験を比較する
*ジャーナリング(journaling)とは、「頭に思い浮かんだことをありのままに『書く』ことで自分を知り、ストレスを軽減し、メンタルヘルスを高める方法」のこと。 紙に書き出すことで自分や物事を客観視することができ、そこから気づきや発見が得られます。とにかく書きましょう!絵を描いてもいいです。自分の中にあるよくわからないドロドロしたものも、すべて紙に書きだしましょう。その為の時間を取りましょう。
例えばAさんは、教団での10年間を振り返り、カレンダーに主要な出来事と
その為に割いた時間を記入しました。教団の教えでは「奉仕活動で幸せになれる」と言われていましたが、実際には疲労感や義務感を感じていたことに気づきました。
2. 教えの中の有益な部分と有害な部分を区別する
教えの各要素をリストアップし、プラス面とマイナス面を書き出す
他の哲学や思想と比較して、共通点や相違点を見つける
自分の価値観と照らし合わせて評価する
本を読むことが苦ではない人は、先人たちの教えを学びましょう。
いくつか本を紹介します。
哲学書・思想書
『自由からの逃走』エーリッヒ・フロム
『人を動かす』デール・カーネギー
自己啓発書
『7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー
『マインドセット』キャロル・S・ドゥエック
スピリチュアル系・宗教哲学
『ブッダの言葉』中村元訳
「ニュー・アース 」エックハルト・トール
「神との対話」ニール・ドナルド ウォルシュ
心理学書
『影響力の武器』ロバート・チャルディーニ
説得や洗脳のテクニックを理解し、それに対する防御力を養える
「嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え 」岸見 一郎
たくさん本を読んでいると、自分の考えが次第に見えてきます。すべての本の内容が絶対に正しいわけではないので、そこは注意しましょう。批判的思考を持って読むことが重要です。どんな意見にも傾倒せずに、中庸で見るようにしないと、また「別の思想で洗脳」されることもある得るので、客観的な視点で読むようにしましょう。
3. 新しい信念システムを形成し始める
自分の核となる価値観を5つ程度リストアップする
さまざまな哲学や思想を学び、自分に合うものを探す
小さな決定から始めて、新しい価値観に基づいた行動を実践する
Cさんは、「誠実さ」「思いやり」「学び続けること」を自分の核となる価値観として定めました。仏教の慈悲の考えに共感し、瞑想を日課に取り入れ始めました。また、批判的思考を養うため、多様な意見を持つ人々との対話の機会を積極的に設けるようになりました。
注意点:- このプロセスは時間がかかります。焦らず、自分のペースで進めることが大切です。感情の起伏が激しくなることがあります。必要に応じて、専門家のサポートを受けることを検討してください。 完璧を求めすぎないことが重要です。試行錯誤を通じて、徐々に自分に合った信念システムを構築していくのが健全なアプローチです。
この「再評価と統合の段階」は、洗脳解除プロセスの中でも特に重要な部分です。この段階で人は過去の経験を新しい視点で見直し、自分自身の価値観や信念を再構築し始めるからです。
この段階では、以下のような変化が見られることが多いです:
1. 批判的思考が強化される
教えを鵜呑みにするのではなく、その根拠や影響を慎重に検討するようになります。
2. 感情の揺れが激しくなる
過去の経験を再評価する過程で、怒り、悲しみ、解放感など、さまざまな感情が湧き上がることがあります。
3. アイデンティティの再定義が始まる
「教団の一員」としてのアイデンティティから離れ、新しい自己像を模索し始めます。
4. 他者との関係性が変化する
教団内外の人々との関係を、新しい価値観に基づいて見直し、再構築することがあります。
この段階を乗り越えるためには、自己への誠実さと忍耐が必要です。また、信頼できる人々のサポートや、場合によってはカウンセリングなどの専門的なサポートを受けることも有効です。
新しいアイデンティティの構築は、長い時間がかかります。宗教組織にいた時間が長ければ長いほど、困難な作業かもしれません。でも、あきらめないでください。新しい本当の「自分自身」には必ず会うことができます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?