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初心者が知るべき鉛筆デッサンの10の基本ポイント

 どうも。プロ鉛筆画家の中山眞治です。紫陽花が咲き始め、もうすぐ梅雨入りしそうですね。元気でお過ごしですか?^^
 
 さて、鉛筆デッサンは、絵画の制作を始める際には最適な第一歩です。シンプルな道具だけで、どこでも気軽に取り組むことができますが、初めての人には戸惑いもあるかもしれません。
 
 この記事では、初心者の人が知っておくべき、鉛筆デッサンの10の基本ポイントを解説します。基本的な技法や道具の選び方、線の描き方、影のつけ方など、段階を追ってわかりやすく説明します。
 
 この記事を読めば、あなたも自信を持って鉛筆デッサンや鉛筆画を始めることができるでしょう。
 
 それでは、早速どうぞ!

1 鉛筆デッサンの基本ツール


筆者の描画ツール収納ケースです


  鉛筆デッサンを始めるにあたり、適切なツールを揃えることは非常に重要です。本章では、初心者の人でも簡単に手に入れられる基本的なツールを紹介しながら、それぞれの特徴と使い方について解説します。 

(1) 鉛筆


  鉛筆を用いることは、はデッサンの基本中の基本です。硬度によってさまざまな種類があり、それぞれ描き心地や仕上がりが異なります。
 
 最初に用意すべき鉛筆セットは、同じメーカーの製品で2H・H・HB・B・2B・3B・4Bの7本あれば充分です。この同じメーカーにこだわる理由は、メーカーによって「描き味や濃度」が若干異なるからです。

 そして、B以上の鉛筆は柔らかく、濃い線や陰影をつける際には便利です。初めての人は、これらの硬度を揃えておくとよいでしょう。詳細は次の関連記事も参照してください。

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(2) 消しゴム


  消しゴムも、デッサンには欠かせないツールです。練り消しゴムとプラスチック消しゴムの2種類を揃えておくことをオススメします。
 
 練り消しゴムは、柔らかく、形を変えられるため、広い部分や細かい部分を消すのに適しており、プラスチック消しゴムは、強力に消すことができるので、深い修整を施す際には便利です。 

 尚、練り消しゴムは「消しカス」が出ず、「光を描く」ことや「毛並みを描く」などの、特殊な用途に欠かせないツールでもあります。詳細は次の関連記事を参照してください。

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(3) スケッチブック


  スケッチブックの選び方も重要です。紙の質感や厚さがそれぞれ異なることや、色についても、薄いベージュのようなものから、真っ白なものまでありますが、あなたの描きやすいものを選びましょう。

 しかし、作品におけるモチーフのハイライトは、スケッチブックの色をそのまま使うことになりますので、できれば真っ白に近い方が、ハイライトを強調する場合には扱いやすいともいえます。
 
 また、デッサンや鉛筆画の制作をする場合には、B系統の鉛筆が乗せやすく、トーンもきれいに出る「中目」程度のスケッチブックや紙の紙肌がおすすめです。

 あるいは、イラストなどの制作では、H系統の鉛筆で「細密描写」をする際などには、ツルツルした紙肌の「ケント紙」などがおすすめです。

 このスケッチブックについては、次の関連記事を参照してください。

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(4) 鉛筆削り


筆者の使っている鉛筆削りです
筆者の使っている鉛筆ホルダーです


 鉛筆削りは、鉛筆の芯を常に鋭く保つために必要です。電動鉛筆削りや手動の鉛筆削りがありますが、手軽に使える手動のものが初心者の人にはオススメです。
 
 また、ナイフやカッターを使って、芯を長く尖らせることができれば、横に寝かせて幅広くトーンを乗せることも可能になります。

 尚、鉛筆が、鉛筆削りで削れないほど短くなった場合には、 上の画像のような「鉛筆ホルダー」に差し込んで、カッターなどで削れば使い切ることができます。

(5) 定規とコンパス


  定規とコンパスも、正確な線や円を描くために必要なツールです。絵画での取り組みの最初のステップとして、鉛筆デッサンに取り組む際には、定規やコンパスもどんどん使いましょう。

 やがて、制作数が増えてくれば、あなたも直線や円なども、フリーハンドで描けるようになれます。何事も慣れです。

 しかし、あなたが絵画教室に通っている場合には、絵画教室の講師の人たちは、フリーハンドでの制作にこだわりのある人が多いものなので注意しましょう。

 うっかり絵画教室で使っていて、何となく振り返ったときに「真っ赤な顔の講師」が立っていたら怖いですよね。^^

 これらのツールを使用する際は自宅で行いましょう。また、定規は透明なアクリル製のものが使いやすく、コンパスは安定感のあるものを選ぶと良いです。 

 尚、コンパスを使う際の注意点は、スケッチブックや紙に針を強く指し込んでしまうと、その針の跡がどうしても残ってしまうので、画面上に針を刺しても問題のない厚手の紙を置き、使うことを考えましょう。

(6) フィキサチーフ


  フィキサチーフは、完成したデッサンや鉛筆画を保護するためのスプレーです。画面に鉛筆を定着させ、時間が経っても線が消えたり汚れたりするのを防げます。

 使用する際は、暖かい時期であれば何も問題ありませんが、冬場などでは、バケツや洗面器に湯を張り、浸して温めてからよく振って、使いましょう。

 そして、吹きかけすぎに注意しましょう。吹きかけすぎると「少し黄ばむ」こともあるからです。

 また、吹きかける際には、通気の良い場所で、画面から30cmほど離して、スプレーを均一にかけることがポイントです。

2 デッサンのための基礎知識



 デッサンを始める前には、基本的な知識を理解することは非常に重要です。これらの知識は、デッサンの技術を向上させるための土台となり、より効果的な練習を可能にしてくれます。

 本章では、デッサンのための基礎知識について説明します。 

(1) 観察力の重要性


  デッサンにおいて、観察力は最も重要なスキルの一つです。描きたいモチーフを注意深く観察し、形、光と影、テクスチャー(感触や質感)などの細部を正確に捉えることから始めましょう。
 
 そして、モチーフを観察する際には、ただ観るだけでなく、その構造やバランスも理解することが大切です。これにより、描く際にモチーフを正確に再現することができます。 

(2) 光と影の理解


  光と影の関係を理解することは、デッサンを立体的に見せるために極めて重要です。光が当たる部分(ハイライト)と影になる部分(シャドウ)を正確に描くことで、平面的な絵が立体的に見えるようになります。
 
 そのためにも、光源の位置を確認し、影の濃淡や形を観察することで、よりリアルなデッサンを描けることにつながります。 

(3) パースペクティブの基本


国画会展 会友賞 誕生2013-Ⅱ F130 鉛筆画 中山眞治


 パースペクティブ(遠近法)は、デッサンに奥行きを与えるための技法です。遠くの物体ほど小さく薄く、近くの物体ほど大きく濃く描くことで、作品に深みを持たせることができます。
 
 基本的なパースペクティブのルールを理解し、実際に応用することで、建物や風景のデッサンがよりリアルに描けるようになれます。 

 

(4) 比率とバランス


  デッサンにおいて、モチーフの比率とバランスを正確に捉えることは非常に重要です。特に人物や動物を描く際には、各部分の比率が正しくないと不自然な印象を与えてしまいます。
 
 最初に全体の大まかな形を捉え、その後に細部を描くことで、バランスの取れたデッサンを制作することができます。 

 尚、人物画を初めて描く際には、誰もがよく知っている人物を描いてしまうと、周囲の人から「てんこ盛りの似てないを連発されてヘコム」もとにもなりますので、注意しましょう。^^

 また、「最初は誰しもうまく描けるはずがない」ので、安心して取り組むべきです。筆者の初めての人物画は、いくら必死に描いても「福笑い」を脱することができませんでした。^^

  人物画での各種比率の捉え方などについては、次の関連記事も参照してください。各顔のパーツの捉え方など事細かに説明しています。


(5) 線の質とコントロール


  線の質とコントロールは、デッサンの表現力を高めるための重要な要素です。太い線や細い線、濃い線や薄い線を使い分けることで、絵に動きやリズムを持たせることができます。
 
 鉛筆の持ち方や力の入れ方を工夫して、さまざまな線を引く練習を積むことが大切です。 詳細は、前述の鉛筆に関する関連記事を参照してください。

(6) 練習の重要性


  最後に、デッサンの上達には継続的な練習が不可欠です。日々の練習を通じて観察力や技術を磨くことで、着実にスキルを向上させることができます。
 
 特に初心者のうちは、毎日少しずつでもデッサンの時間を確保し、基礎を固めることが重要です。描いた作品を振り返り、改善点を見つけることも成長の一歩になります。

 毎日練習する場合でも、例えば「完全に集中できる20分~30分」の時間が取れるのであれば、それでも上達できます。この場合には、週に一日はたっぷりと時間を使って、制作を続けられるようにできればよいでしょう。

 尚、平日の20分~30分で、毎回完結できる速写(クロッキー)でも良いでしょうし、一つの作品を毎日完成に向かってコツコツ進んでいく方法でも、充分上達の道をたどれます。

 筆者の場合には、平日は毎日2時間、土日祝祭日盆暮れ正月は、描きたくて目が覚めてしまい、am4:00頃から寝起きで制作を始め、疲れるたびに食事や家事をはさんで制作していました。

 この生活は、思いもしないメリットがたくさんあります。朝から描くためには、前の晩に早く寝ることになりますので、健康的な生活の核に据えることができます。

 また同時に、集中して制作を続けた日は、心地よく疲れ切って、酒を頼らなくても熟睡できて、翌朝はすっきりと出勤できました。

3 鉛筆の持ち方と使い方


ACから画像をダウンロード


  鉛筆デッサンや鉛筆画において、鉛筆の持ち方と使い方を理解することは非常に重要です。

 適切な持ち方と使い方を身につけることで、線の質が向上し、表現の幅が広がります。本章では、鉛筆の持ち方と使い方について説明します。 

(1) デッサン当初の輪郭を捉える際の鉛筆の持ち方


  鉛筆を人指し指・中指・親指で鉛筆の中間から1/3程度の位置を優しく「つまむように」持ち、肩と腕を振るって描くイメージで、大きな輪郭を捉えましょう。

 そして、軽く握ることで、手首や指にかかる負担を軽減できます。長時間デッサンを行う場合は、手首や指に負担がかからないように、リラックスした持ち方を意識する必要があります。

 また、イスには足を組まずに深く腰掛けることで、長時間の制作でも疲れにくくなれます。

 尚、制作に取り掛かる際の心の状態は、「時間に追われている」「イライラしている」ような精神状態では制作できません。穏やかな澄んだ気持ちでいられるときに画面と向き合いましょう。

 鉛筆に関する詳細は、既述しています関連記事を参照してください。

(2) 輪郭線を描き終えてその先へ進む場合の鉛筆の持ち方


  輪郭線を描き終えましたら、一旦休憩をはさんで、改めて輪郭線全体を点検しましょう。気分を変えて改めて画面を見ることで、修整すべき点が見えてくるものです。

 そして、その先へ制作を進めていく際には、点検の終わっている輪郭線を改めて整理する必要があります。尚、それまで使っていたデッサン用の鉛筆が2Bであったならば、2段階明るいHBで優しく整えてあげましょう。

 その理由は、濃い鉛筆でしっかりと輪郭線を描いてしまうと、不自然な作品になってしまうからです。

 鉛筆の持ち方にはいくつかの基本的な方法がありますが、この段階では、「文字を書くときの握り方」に変えて制作しましょう。この持ち方は、細かいディテール(詳細)や細密な制作に適しています。

(3) 鉛筆の芯の側面を使うテクニック


出典画像:リアル絵の基本 https://realdrawing.jp/pensilart-basic/howtohold-pencil/


 鉛筆を斜めに寝かせて持ち、鉛筆の芯の側面を使うことで、広い面積に素早くトーンを乗せることができます。紙に対して鉛筆の芯の側面を使って描くことで、柔らかく広がる線や影を描くことができます。

 このテクニックは、背景や大きな陰影を描く際に効果的です。

(4) 筆圧の調整


  鉛筆を使ってデッサンをする際には、筆圧の調整が重要です。画面に軽く接することで薄い線を描き、強く接することで濃い線を描くことができます。
 
 筆圧を調整することで、線の強弱や濃淡を自由にコントロールすることができて、デッサンに深みを持たせることができます。練習として、同じ線を異なる筆圧で何度も描いてみると良いでしょう。 

(5) 持ち替えの重要性


出典画像:リアル絵の基本 https://realdrawing.jp/pensilart-basic/howtohold-pencil/


  デッサンを進める中で、鉛筆の持ち方を頻繁に変えることも重要です。特に、異なるテクニックを使用する場合や異なる部分を描く場合には、適切な持ち方を選ぶことで効率を上げられます。
 
 例えば、細かいディテールを描く際には「文字を書くときの握り方」、全体のレイアウトを、バランスを見ながら行っていく際などには、上の画像のような持ち方も必要になることがあります。

 状況に応じて持ち替えることで効果を得られます。あなたの描きやすい「握り方」も、それぞれのタイミングで考えてみましょう。

4 基本的な線の描き方



  デッサンにおいて、線の描き方は非常に重要な基礎技術です。正確で美しい線を描くことで、デッサン全体のクオリティが向上します。本章では、基本的な線の描き方について解説します。 

(1) 直線の描き方


  直線を描くことは、デッサンの基本中の基本です。直線を正確に描くためには、まず紙の端から端まで、一定の速度で鉛筆を動かすことを意識しましょう。
 
 肩や腕を大きく振るって制作することで、安定した直線が描けます。また、最初は定規を使って練習し、その後はフリーハンドで描く練習を重ねることで、直線を描くスキルが向上します。 

(2) 曲線の描き方


  曲線は直線に比べて難易度が高いですが、正確に描くことでデッサンに柔らかさと流れを与えることができます。曲線を描く際には、手首を柔軟に動かすことが重要です。
 
 まず、スケッチブックや紙の上で鉛筆を軽く動かし、描きたい曲線の形をイメージしてから実際に描くと良いでしょう。練習として、円や楕円、波線などを何度も描いてみると効果的です。 

 尚、直線や曲線などの描線では、スケッチブックや描画専用の紙ではなくても、使わなくなったA4やB4程度の紙でも充分練習になります。チラシの裏でも良いのです。スケッチブックや描画専用の紙は大切にしましょう。

(3) 交差線とクロスハッチング


  交差線やクロスハッチングは、影やテクスチャー(質感や感触)を表現するための基本技法です。

 具体的には、あなたの埋めたい面積に対して、「縦横及び左右からの斜め」の合計4種類の線で優しく描き込んでいきましょう。

 描きにくい線の方向があった場合には、スケッチブックや紙の方を動かせば楽に描けます。
 
 この技法を用いることで、濃淡や立体感を簡単に表現することができます。線の密度や角度を変えることで、多様な効果を出すことを可能にしてくれます。

 尚、このクロスハッチングは、トーンを塗り重ねて鉛筆の層を深めていく際の基本動作なので、しっかりとできるようになりましょう。優しいタッチで、時間をかけて、じっくりと塗り重ねることがポイントです。

(4) 線の強弱と圧力


  線に強弱をつけることで、デッサンに表現力を持たせることができます。筆圧を調整し、強く接することで濃い線を、軽く接することで薄い線が描けます。
 
 この技法を使うことで、遠近感や質感をリアルに表現することができるようになれます。練習として、同じ線を異なる圧力で何度も描いてみると、筆圧のコントロールが上達します。 

(5) 短い線と長い線の使い分け


  デッサンでは、短い線と長い線を使い分けることが重要です。短い線は細かいディテール(詳細)を描く際に適しており、長い線は大きな形を描く際に役立ちます。
 
 例えば、顔の輪郭を描く際には長い線を、髪の毛や細部の陰影を描く際には短い線を使用します。この使い分けを理解することで、デッサンがより精緻に仕上がります。

5 影とハイライトのつけ方


第1回個展出品作品 夜の屋根 1996 F10 鉛筆画 中山眞治

  デッサンにおいて、光と影を正確に配置することは、絵に立体感とリアリズム(写実)をもたらす上で非常に重要です。

 適切な光と影の技術を学ぶことで、作品の質が大きく向上します。本章では、光と影の基本的な配置方法について解説します。 

(1) 光源の位置を確認する


第1回個展出品作品 野菜 1996 F10 鉛筆画 中山眞治


 光と影を描く際には、まず光源の位置を確認することが不可欠です。光がどの方向から来ているのかを確認することで、影の位置やハイライトの位置を正確に再現することができます。
 
 光源が複数ある場合には、主な光源を一つ決めて、その影響を重視して描くと良いでしょう。 

 もっとわかりやすくするためには、あなたの自宅で描くとすれば、室内の照明を消して、デスクで使っている自由に動かせる蛍光灯などの光を当ててみるのも手段の一つです。

 斜め上から、モチーフに光を当てれば、はっきりと光と影を確認することができます。

 また、小型のモチーフの場合には、「A4~B4程度の黒い下敷き」も用意できると、素晴らしい世界を展開できます。上の作品は、そのようにして制作しています。

 この場合の反射している影の描き方では、描き込んだ影に細密描写を加えながらも、最終的には、反射している部分全体を均一なトーンを慎重に重ねて、実像を引き立てています。

(2) 影の描き方


出典画像:イラスト・マンガ描き方ナビ https://www.clipstudio.net/oekaki/archives/164537


  影を描くためには、まず光が当たらない部分を見つけることから始めます。

 影には大きく分けて、キャストシャドウ(物体が他の物体に落とす影)とコアシャドウ(物体自体の中で光が当たらない部分)の2種類があります。上の画像を確認してください。
 
 キャストシャドウは、光源から遠ざかるほど薄くなります。コアシャドウは、物体の形に沿って滑らかに遷移し、濃淡をつけることで立体感を表現できます。 

(3) ハイライトのつけ方


第2回個展出品作品 モアイのある静物 2000 F50 鉛筆画 中山眞治

  ハイライトは、光が直接当たる部分に強い光の反射として現れます。ハイライトを描く際には、鉛筆を使わずに紙の白さを残すか、練り消しゴムを使って描いた部分を明るくします。
 
 ハイライトの位置や形を正確に描くことで、モチーフの質感や形状をリアルに表現できます。特に金属やガラスのような光沢のある素材は、ハイライトの描き方が重要です。 上の作品を参照してください。

(4) グラデーション(階調)の技術


  光と影を自然に見せるためには、グラデーションの技術が重要です。鉛筆を使って徐々に濃い線を描くことで、滑らかなトーンの変化を作り出せます。
 
 グラデーションを描く際には、鉛筆の持ち方や力の入れ具合を調整し、線が目立たないようにすることがポイントです。また、紙を指やティッシュで軽くこすり、トーンをなじませることでも効果を得られます。 

(5) 反射光の描き方


蕨市教育委員会教育長賞 ランプの点(とも)る静物 2000 F30 鉛筆画 中山眞治


 反射光は、モチーフの周りの環境から反射された光です。これを描くことで、さらにリアルな描写が可能になります。反射光は通常、影の部分にほんのりと明るさを加える形で描かれます。
 
 物体の下部や、影のエッジ部分に軽く明るいトーンを加えることで、反射光を表現できます。この技法を使うと、影がより立体的に見えるようになります。

 反射光などの制作例では、上の作品の中のコーヒーミル・カップ&ソーサー・コーヒーポットなどにあたっている光加減を参照してください。

6 デッサンの練習方法



  デッサンの技術を向上させるためには、効果的な練習方法を実践することが重要です。

 計画的かつ継続的な練習を通じて、観察力や描写力を養うことができます。本章では、デッサンの効果的な練習方法について解説します。 

(1) 日常的なスケッチ


  毎日のスケッチは、デッサン力を向上させるための、最も基本的で効果的な方法です。身の回りの物や風景、人々をスケッチすることで、観察力と描写力が鍛えられます。
 
 スケッチブックを持ち歩き、空いた時間に簡単なスケッチを行うことを目指しましょう。短時間でも続けることが大切です。 

(2) モチーフを選ぶ


第1回個展出品作品 反射 1997 F10 鉛筆画 中山眞治


  特定のモチーフを選んで集中的に練習することも効果的です。

 例えば、手や足・顔のパーツ・動物・植物(花)・調理器具・野菜・果物などをテーマにして、繰り返し描くことで、そのモチーフの構造や形状を深く理解することができます。

 異なる角度や光の下で描くことで、より多面的な経験が得られます。尚、モチーフは、あなたの考え方ひとつで、何でも使えることを覚えておきましょう。上の作品を改めて観てください。

(3) 基礎練習の重要性


  基本的な線や形を描く練習も重要です。直線や曲線、円、四角形などの基本的な形を繰り返し描くことで、手の動きをコントロールする力が養われます。
 
 また、シェーディング(陰影技法)の練習として、グラデーション(階調)を描くことも効果的です。濃淡を自由にコントロールできるようになれると、デッサンの表現力が向上します。 

(4) 写実的な模写


  写真や実物を模写することは、リアリズム(写実)を追求するための良い練習方法です。模写を通じて、物体の正確な形や光と影の関係を学ぶことができます。
 
 細部まで観察し、正確に再現することを目指して描くことで、観察力が飛躍的に向上します。最初は簡単なものから始め、徐々に複雑なものに挑戦する順序が重要です。

 この順序を間違えて、いきなり複雑な形状及び模様や柄の入っているモチーフに挑戦しても、挫折する原因になってしまいますし、それこそ「修行状態」になるでしょう。^^

 一番のオススメは、絵画教室に通って、石膏モチーフ(立方体・直方体・球体・円錐・三角錐等)で、光と影の状態を学習することです。ただし注意点もありますので、下の関連記事も参照してください。

 自宅で制作する場合であれば、白い卵・白無地のカップ&ソーサー・白無地のマグカップなどが良いでしょう。 

関連記事:デッサンや鉛筆画初心者が絵画教室に通うべき理由!


(5) 自己評価とフィードバック(批評)


  描いたデッサンや鉛筆画を定期的に振り返り、自己評価を行うことも大切です。どの部分がうまく描けたか、どの部分が改善の余地があるのかを分析することで、次の練習に活かすことができます。
 
 また、他人からのフィードバックを受けることも有益です。友人やアートのコミュニティで意見を交換し、改善点を見つけましょう。 

(6) デッサンの教材と参考書


  デッサンの教材や参考書も活用することで、効率的に技術を習得することができます。基本的なテクニックから高度な技術まで、段階的に学ぶことができる教材を選びましょう。
 
 また、オンラインのチュートリアル(個別指導)や動画も有益です。自身のレベルに合った教材を見つけ、計画的に練習を進めてください。

7 よくあるミスとその対処法



 デッサンを始めたばかりの初心者の人には、共通するミスがいくつか存在します。

 これらのミスを理解し、適切な対処法を身につけることで、デッサンの技術を向上させることができます。本章では、よくあるミスとその対処法について解説します。 

(1) 過度な力の入れすぎ


  多くの初心者の人は、画面に鉛筆を強く接しすぎてしまうことがあります。
 
 これにより、線が太く不自然になり、修整も難しくなります。対処法としては、リラックスして、鉛筆を既述していますように「つまむよう」に持ち、柔らかい線を描く練習をしましょう。

 力を入れずに描くことで、細かい修整がしやすくなり、自然な仕上がりになります。 

(2) 観察不足


  モチーフを充分に観察せずに描き始めると、形やバランスが崩れやすくなります。デッサンの前に、モチーフをじっくり観察し、その形や光と影の関係を理解することが重要です。
 
 対処法としては、描き始める前にモチーフをじっくりと観察し、スケッチを頭の中で組み立てる練習を行いましょう。

(3) 比率の誤り


  モチーフの、各部分の比率を正確に捉えることは難しく、多くの初心者の人がこの点で失敗を経験します。比率が狂うと、全体のバランスが崩れてしまいます。
 
 対処法としては、グリッド(格子)を使って対象物を分割し、それぞれの部分を正確に描く練習を行いましょう。また、デッサンの途中で頻繁に全体を確認し、比率が正しいかを点検することも重要です。 

(4) 陰影の不足


  デッサンや鉛筆画では、陰影を施さなければ、平面的になってしまい成り立ちません。陰影を正確に描くことが、立体感を出すポイントになります。
 
 対処法としては、光源を確認し、明暗のコントラスト(明暗差)をしっかりつける練習をしましょう。光と影の位置を確認し、グラデーションを使って滑らかに陰影をつけることが必要です。 

(5) 線の乱用


  デッサンを仕上げる際に、不要な線を描きすぎてしまうと、作品が雑多な印象を与えてしまいます。対処法としては、描きたい線を明確にし、不要な線は「練り消しゴム」などで消すか、描かないように心がけましょう。
 
 少ない線で形を正確に捉える練習を行うことで、シンプルで洗練されたデッサンが描けるようになれます。 

(6) ペース配分のミス


  デッサンを描く際に、最初はゆっくりと慎重に描いていても、途中から急いで描いてしまうことがあります。
 
 これにより、全体の一貫性が失われてしまいます。対処法としては、デッサン全体のペース配分を考えて、計画的に進めることが重要です。

 終日制作して疲れた場合には、その時点でその日の制作は終了して、改めて別の日に取り掛かりましょう。

 折角制作内容が濃くなってきている時点で、無理やり終了させることはもったいないことです。

8 まとめ 


青木繁記念大賞展 奨励賞 郷愁 2001 F100 鉛筆画 中山眞治


 鉛筆デッサンは、絵を描く基本技術を学ぶための素晴らしいスタート地点です。初心者がデッサンを始める際に知っておくべき10の基本ポイントを以下にまとめました。
 
 これらのポイントを理解し、実践することで、デッサンの技術を着実に向上させることができます。
 
a. 基本的なツールを揃える
デッサンに必要な基本的なツールを揃えよう。鉛筆、消しゴム、スケッチブック、鉛筆削り、定規、フィキサチーフなどが必要です。
b. デッサンのための基礎知識を理解する
観察力、光と影の理解、パースペクティブ、比率とバランス、線の質とコントロールなどの基礎知識を学ぼう。
c. 鉛筆の持ち方と使い方をマスターする
鉛筆の基本的な持ち方やリラックスした持ち方、側面を使った描き方、筆圧の調整、持ち替えの重要性を理解し、実践しよう。
d. 基本的な線の描き方を習得する
直線、曲線、交差線、線の強弱、長い線と短い線の使い分けを練習して、線の描き方をマスターしよう。
e. 光と影のつけ方を理解する
光源の位置を確認し、光と影の基本的な描き方、グラデーションの技術、反射光の描き方を学ぼう。
f. 効果的なデッサンの練習方法を実践する
日常的なスケッチ、特定のモチーフを選んでの練習、基礎練習、写実的な模写、自己評価とフィードバック、デッサン教材の利用も組み合わせて練習をおこなおう。
g. よくあるミスとその対処法を知る
力の入れすぎ、観察不足、比率の誤り、陰影の不足、線の乱用、ペース配分のミスなどのよくあるミスを理解し、その対処法を実践しよう。
h. スケッチブックを活用する
スケッチブックへ日常的にスケッチを行い、練習の記録を残そう。これにより、自身の進歩を確認することができます。
i. モデルや実物を使ったデッサン
実際のモデルやモチーフを観察して描くことで、リアリズム(写実)を追求しよう。写真を参考にすることも有効です。
j. フィードバック(批評)を活用する
友人やアートのコミュニティからフィードバックを受け、自身のデッサンの改善点を見つけることは重要な意味を持ちます。
 
 これらの10の基本ポイントを実践することで、初心者でもデッサンの技術を着実に向上させることができます。
 
 ではまた!あなたの未来を応援しています。


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