見出し画像

光の中にたっていてね

【光の中にたっていてね】
銀杏BOYZのオリジナルメンバー最後の作品で、これ以降は峯田が1人で活動していくことになる、時代の節目となる作品。
"青春パンク"という恋愛や友情、激しく移り変わり揺さぶられる情景を歌うロックンロールの火付け役として現れたGOING STEADYの活動を引き継ぐ形で始まった銀杏BOYZは、若者に絶大な支持を得たGOING STEADYの熱気を纏ったまま、2枚の1stを発売する
【君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命】
【DOOR】では、より直情的に、より詩的に、より過激にその衝動を音楽に変換し、我々に訴えかけてきた
「全ての中途半端な人たちに銀杏BOYZの音楽を。僕はドアを叩く。開けてくれ。」
やるせない気持ちや追いやられるその感情を吹き飛ばすような音楽には、リスナーの心の奥を暴れさせるような魔法があり、いつまでも初期衝動を掻き鳴らし続けるロックバンドであった。
そんな銀杏BOYZの9年ぶりのアルバムとなった今作は足掛け7年と言う長い時間を経て作られた超大作であり、同時に3人のメンバーを失い、結果的にバンドとして銀杏BOYZ最後の作品となった。
【あいどんわなだい】
【光】
【17歳】
【ボーイズ・オン・ザ ・ラン】という4枚のシングルを全てシングルカットとは別のミックスで収録したこのアルバムの目を引く点はなんと言ってもその ノイズ である。
実験音楽と見紛うほどのノイズミックスは衝動的な音楽をより決定的なものとする。
この全曲ポピュラーミュージックとは言い難いミックスと、今までの"青春パンク"感のある銀杏BOYZとの乖離から、この作品を駄作と評価する人も少なくないが、この挑戦的な作品には、今までの銀杏BOYZ、ひいては峯田和伸が自身の視点、経験、感情を掻き鳴らすロックンロールといったものではなく、峯田和伸自身が一つの作品を監督、脚本したような、一つの映画で、一つの物語。
さまざまなページの中で描かれる情景を一つにまとめた、いわば本当に【アルバム】なのであると私は思う。
アルバムの構成としては、南沙織のカバーである【17歳】から始まり、少しずつ日が暮れていくような空気から、【新訳 銀河鉄道の夜】へと向かう。
真夜中から差し込める、たった一つの【光】の中をひたすらに走り続ける夜明けの【ボーイズ・オン・ザ ・ラン】。
最後に辿り着くのは、ありえないほどの衝撃的な感情を潜り抜けた先にある、いつも通りの平凡な一日。
それを終える【僕たちは世界を変えることができない】
峯田自身が東北大震災で受けた衝撃の衝動を、バンドとして初めて自身の視点でなく、新たな情景として。
自分たち自身を一糸纏わずさらけ出すことで現れる熱狂でなく、同じ表現を使うことなく失敗すると言うリスクをも捨てて自分たちが監督、表現者となる視点を描いたこの作品は、ノイズミックスという単純なものからでは到底表せない、"銀杏BOYZ史上最もチャレンジング"なアルバムなのです。さまざまな人間の、さまざまな視点から描かれる一つの世界。そんな写真のような作品こそが、
【光の中にたっていてね】なのです。

「ノイズってきもちーね」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?