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業界インタビュー 障害福祉サービスの仕事

身近で働いている人がどんな仕事をしているのか、どんな課題を抱えているのか、といった話を蓄積していく業界インタビュー企画。今回は障害福祉サービスの仕事、特に就労移行支援と放課後等デイサービスの2つについて紹介します。過去の記事は下のマガジンをご参照ください。

就労移行支援について

これは、障害のある方が一般企業に就職できるようサポートするお仕事。求人募集サイトのようにただ企業を紹介するのではなく、職業訓練校のように毎日通ってもらって仕事に必要なスキルを身につけてもらいながら、どういった職場なら働けそうか一緒に考えてあげます。

就職できるかどうかは、「指示がきれいに入るかどうか」で大きく変わってくる。お願いしたことがスッと理解できる人なら就職先も決まりやすい。統合失調症や知的障害、発達障害などは指示が入りづらくて、2年かかっても見つからない、就職できてもその後のフォローが大変、というケースが多い。

そういう人は、一般企業ではなくて就労継続支援事業所というところで簡単な仕事から始めてもらう。これも少しレベルが高いA型と、易しいB型に分けられて、内職みたいに作業量に応じた成果報酬になったりする。

どんな障害が多い?

自力で通勤できるレベルの人しかこないので軽い障害が多かった。身体的障害であれば、難聴、弱視、あと内蔵系疾患などパッと見だと全く分からない子もいる。膠原病とか線維筋痛症といったマイナーな病気もある。精神的障害であれば発達障害、知的障害が多くて、そこに統合失調症とかうつ病とかが加わったりする。

ただ身体的障害であれば頭はクリアなので、福祉サービスを利用する人は少ない。基本的には精神的障害の子を見ていくことになる。

発達障害でもかなり幅が広くて、コミュニケーションを取るのは苦手だけど気質のいい人は就職しやすい。しゃべるのが上手くなくても、誰かがペンが落としたらすぐ拾って渡してくれるようなタイプは社会でもやっていける。

障がい者の皆さんも働きたいの?

本人が働きたいというより、親御さんの希望で働いてほしいから就労移行支援に来た、という方が多い。障害があることを隠しているから、近所の目を気にして形だけでも就職してほしい、とか、いい歳なんだから少しは働け、とか。

もちろん自分から働きたいとやってくる人もいる。家庭の事情で、親からは暴力を受けていて頼れず、兄弟とも折り合いがつかないから自分で働きたいとか。

放課後等デイサービス(放デイ)って何?

障がいのある小学生から高校生までを預かる学童保育みたいなもの。特別支援学校などの授業が終わったら、放課後に学校まで迎えに行って、施設の中で預かり、時間になったら家まで送り届けるサービスです。

未就学児を預かる場合は、放課後等デイサービスではなく児童発達支援という別の名称になってくるらしい。法律で決まっているそうです。

障がい児ってどんな子たち?

放デイは事業所ごとに同じ性質の子が集まる傾向にある。多動性ADHDでケンカしまくる子は大変。そんな子が集まると、あちこちでケンカしてひっちゃかめっちゃかになる。

知的障害がちょっと重めで自閉症の子たちが多かったときは、みんなでお散歩したり、ダンスしたり、歌を歌ったりと、保育園のようにみんなで同じことをやるようにしていた。

今働いているところはダウン症の子が多い。筋肉がつきにくく、身体が柔らかくて太りやすい。ダウン症の子は明らかに麺好きが多い。お弁当でも麺、家でもパスタ。確証はないけど、実体験でそういう傾向を感じる。

仕事で大変なことは?

福祉系の現場は全員で協力して支援する必要があるので、職員同士こまめに雑談して情報を仕入れることが大事。人間関係がうまく作れないと厳しい。
人間関係がうまくいかずに辞めていく人が多い。

人間関係がうまくいかない職場は、だいたいトラブルを起こす職員が常駐してるので、やる気のある人や気立てのいい人は辞めてしまい、不健康な人が濃縮されてしまう。若くて反抗しなさそうな女性をターゲットにして攻撃する人とか、休日タダ働きを当然と思って周りにも強いる人とか、あと逆に私がいなくなったらこの職場が回らなくなると思って辛いけど耐え続けて辞められない人とか。

そういうところでは仕事もうまく回らないので、健全に機能している職場に異動する方が妥当。近隣他店舗に移ることもよくある。辞めようとすると「どこに行っても同じだからね」とかぐちぐち言われるし、完璧な職場なんてないのも事実だけど、自分と気が合う職場、気が合う人を探すのは大事だから、移動して良かったなと思う。

ブラックな職場は淘汰されないの?

放デイは儲かるみたいで、ブラックなところもなくならない。預けたい親がいっぱいいるし、内情が分からないから、運営が悪くて子供が悪い待遇を受けていても、それに気付けない。

そういう職場は人手が足りなさすぎて、比較的手のかからない優秀な子は完全に放置されちゃう。すると、親が施設にきたとき自分の子は放置されてるな、って分かるので辞めちゃう。その結果、手のかかる子ばかりが残って余計に回らなくなる。

今の放デイの経営母体は、塾経営とかガソリンスタンドとかフランチャイズ飲食とか色々と手を出していて、放デイもその中の一つ。現場のことは全然分からないけど、売り上げが立っているからいいんじゃないの、という程度の認識。色んな事業の中で放デイが一番収入いいらしい。

そんな経営者だから、そもそも福祉のことを見下していて、ずっと安い給料で働かせればいい、とか考えていたりする。だから売り上げがあっても給料は上がらないし、職場はブラックなまま。

ブラックな経営者しかいないの?

今まで5ヶ所くらい転々としてきたけれど、みんな難ありで、上の人に良い人はあまりいない印象。家族経営の3代目で、ただ親から仕事を継いだだけの60代のおじいちゃんとか。たくさん働いていっぱい稼いで成長しよう、みたいな根性で生きているタイプ。

補助金を取るためには一定の要件を満たしてなきゃいけないけど、人件費を削るために職員を減らしすぎて補助金額が減ってしまったことに長いこと気付いてなかったとか。現場責任者が社長と「こいつらは一生安月給で働かせておけばいい」とかメッセージのやり取りしているPC画面をつけっぱなしでその辺に放置しているとか。そんな人ばかり。

最近は医療ケアが必要な子を受け入れると補助金の加算がつくので、そのために看護師を配置したいのだけれど、給料が安すぎて看護師が確保できない。医療現場の方が給料がいいから福祉に来てくれない。でも給料をあげようとしない。

福祉の仕事についてどう思いますか?

完璧主義とか妥協を許さない人には向かないと思う。理想的な状態を目指そうとすると、生産性のない人間は殺してしまえ、というやまゆり園の事件のようなことが起きてしまう。

いろんな人がいるし、うまくいかないこともいっぱいあるけど、そんなどうしようもない状態も面白いって思える方がいい。個人的には、障害の種類によって行動パターンが見えてくるのが面白い。もちろん個性があって一人ひとり違うけれど、ある程度共通する大きな枠が見えてくる。

それが障害のない大人にも当てはまって、攻撃的な人や差別的な人のパターンが見えてきて対処できるようになってきた。そういう人間関係が把握できるようになったら、どんな職場でも働きやすくなるかなぁ、と思う。

まとめ

福祉の経営者が全て悪い人ではないと思うけれど、やはり補助金事業は、お金目当ての悪い事業者が入ってきやすいんだなぁと思いました。そんな中でも頑張って働いている皆さんに感謝です。

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