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「自分はないほうがいい」 みうらじゅんが語る「仕事術」

これまでに「ない仕事」を作り出してきたーー。今年60歳になったみうらじゅんさんはそう語ります。「マイブーム」や「ゆるキャラ」など、他の人が思いつかなかったアイデアを形にしてきました。そんな「ない仕事」をするには「自分をなくして仕事をしたほうがいい」というのが持論です。どういうことなのでしょうか? みうらさんの「仕事術」を聞きました。全2回インタビューの後編です。(篠原諄也

※この記事は2018年6月15日、ひとりを楽しむメディア「DANRO」で公開されました。

*前編「俺は趣味がないから、老後が心配だ」はこちら

戦略も営業もやる「一人電通」

――2015年に出版された『「ない仕事」の作り方』(文藝春秋)のなかで、みうらさんは「一人電通」だと言っていますね。企画以外にも、戦略、営業、接待まで全部やるんだと。

みうら:俺はそもそも才能に満ちあふれているわけじゃないから、こっちからいかないといけなかっただけの話で。でも、人付き合いは好きなのでね。たくさんの人たちに気に入ってもらえるにはどうすればいいか考えていた。自分の話ばかりしていても聞いてもらえないから、その人の話をちゃんと聞くようにしてね。そういう営業、わりとうまかったんですよ。雑誌の編集者と飲みに行って、「僕、この雑誌大好きで、こういう企画はどうでしょう? 書けるやついるんですよ」って持ちかける。説得できたら「実は書くの俺なんですけど」って(笑)。

――みうらさんから企画を持ち込むんですね。

みうら:これまでに「ない」仕事だから、向こうはわかんないでしょ。今でも新しい企画は、基本持ち込みですから。ずいぶん前だけど「ゆるキャラ」の連載をやりたいと思って、出版社に持ち込みしたんですが、「持ってきてもらわなくても、こっちから行きますのに」って言ってくれたんだけど、「いや、来る理由ないじゃないか」って(笑)

たくさんの本や置物が並ぶ事務所で語るみうらじゅんさん(撮影・齋藤大輔)

何千何万のものを「倉庫」で寝かせている

――「マイブーム」や「ゆるキャラ」などは、誰でも知っているほど世の中に広まりました。逆にブームにならなかったものは?

みうら:有名になったものなんて、たぶん2、3個くらいですから(笑)。それ以外の何千、何万ってやつは、うちの倉庫で寝ています。ワイン工場みたいなもので、熟成するのを待ってるんだ。いつか誰か、バカなものを見たくなるときがある。そのとき、サッと出せるようにね(笑)。それは世の中の常識が変わったときだね。

――たとえば、どういうものがあるんでしょう?

みうら:まだ、概念がないんですよ。概念がつかないと、そのものだけでは面白いと思ってもらえないから。でも、何かと何かが結びついて、別の概念になることがある。AとBを足したときに、Cになるときがある。「ゆるキャラ」は完璧にCになって世に出回ったんだと思いますよ。

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