嘘の欠片
あの人の言葉は
嘘の塊だなんて思っていた訳ではなく、
溜息をつくように、
吐く息の中に混じっていたのが
嘘の欠片だっただけのはなし。
そうして気付かない間に
不純物として吐き出された嘘は
口先に一瞬浮かび上がって
小さな飛沫みたいに飛んで来た。
些細なそれは
振り払えば何も感じずに地面に落ちて
嘘でもなんでもない気体となって
蒸発していくはずのものだったのかもしれない。
だけど僕にはその飛沫が粘着性を伴って絡みついて
振り解こうにもどうにもならなくて
あの人の嘘と向き合わなければならなかった。
不純物は空いた口に飛び込んで落下して
コロンと落ちた。
残響が響き渡る_
僕の中の空洞に落ちてきた_
誰も知らない嘘の行方、
燃やすでもなくただ此処に、其処に、底に。
2020.03.21
DANPEN
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