父の再婚3

それから2週間。2回めの床屋はあっというまに来てしまった。確かに、髪を黒く染められたり、切られなければ、顔剃りとフェイシャルは最高だ。一万円のコースを2週間に一回母のお金で受けられる中学生は恵まれている。しかし、義理母の一存でどうされるかわからない床屋というのはある意味ロシアンルーレットだ。

義理母の車の中で私は、あの、今日はどういう髪型にするつもりですか?と言ってしまった。言ってからしまったと思った。今までは曲がりなりにも、髪を切られるのは嫌だ、床屋は嫌だとこっちの主張を言っていた。なぜか、今日はバトンを義理母に渡してお伺いをたててしまった。明らかに失敗だ。義理母は、そうね、あなたこの2週間生活態度良くなかったし、私への態度も反抗的、テストの点もダメよね。髪の毛を短く刈って厳しい躾けが必要だと思ったわ。女はね、髪は女の命って言って、髪の中に自我が宿るの。わかるかしら。つまり、髪を短く刈って自我を捨てさせ服従させることこそ本当の教育なの。でも、ムチだけでは教育とは言えないわ。教育にはアメも大切。顔剃りやエステで贅沢させて床屋は気持ちいいところ、エリさんになんでも話せて解放されるところというアメも必要なの。今日はまだ2回め、いきなり短くしてあなたを泣かすようなバカな真似はしないわ。

あなたは私が今言ったことをよく考えて自分の髪型を注文しなさい。

それから、髪を切って自我を捨てるとはどういうことか今日は私があなたに見本をみせてあげる、、

車はあっというまに床屋についてしまった。床屋につくとVIP室に通され、お茶が出され、店長、エリさん、義理母、私で談笑した。

義理母はこの子生活態度も悪いし、勉強もできない、本当は短く切らせて厳しく躾けたい。しかし、短く切るのは嫌だという。困ったものね。でも教育にはアメとムチが必要。今は床屋の気持ち良さを体で覚えさせ、病みつきになってから短く切らせ厳しく躾けたい。みたいな話を私の前で公然としていた。私はゾッとした。

結局私は切られるのが嫌で、毛先を揃えてもらうだけにした。

エリさんはとても残念そうだった。

エリさんは恥ずかしいワカメちゃんカットのような髪型にして後ろは短く刈り上げている。だから義理母に気に入られて私の専属につけられたのかな?と妙に納得してしまった。エリさんはいろいろ話してくれた。子供のときから髪フェチで、床屋に連れて行かれ、床屋で髪の毛を切られるとゾクゾクしていたこと。だから床屋になろうと子供の頃から決めていたこと、なども。

つづく

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