見出し画像

雨の日の読書

雨の日に、昼間から電気をつけて家で本を読む。
そんなシチュエーションが、子ども時代から好きだったなと思い出す、雨の日。
今日は楽しみにしていた予定が止むを得ない事情でキャンセルになった。残念だが仕方ない。しばらく外出続きだったので久しぶりに家でゆっくりと溜まっていた本を読んだ。

 4月から担当する新しい仕事のデザインに関する学術的な本と、実用的なノウハウ本と、ハック系の本。『溶けるデザイン』は抽象度が高かったが、ユーザーの体験を生活の文脈からデザインするという基本的なユーザー設計について書いてあり面白かった。若い後輩が勧めてくれたのもあるが、だんだんこの手の本も、著者が自分より若くなっていくなあと奥付の著作者の紹介文をぼんやり眺める。

 他にはコンビニでうっかり手に取ってしまった『Tarazan』自律神経を整える[決定版]。メンタルケアのライフハックページに、パワハラにあっても「しょうがない上司だな〜受け流すのが正解!」という旨が書いてあったり、「孤食は健康に悪いので、昼食や夕食は同僚・友人を誘ってご飯を食べよう!」と書いてあって二度見する。この令和とコロナ禍に、現状を無視して過去の延長線上で物事を考えるのを、いつまで続けるのか、とソワソワする。

 最後にたどり着いた本は、京都にある大好きなカフェ「歩粉」のエッセイ兼レシピ本。といっても京都のカフェには行ったことはない。行ったことがあるのはもう何年も前に閉店した、恵比寿のお店。友人に教えてもらってから季節で変わるカフェメニューに惹かれ何回か通っていた。コロナでスコーンなどのお菓子セットが通販されるようになったので、通販で注文したこともある。数年ぶりに食べてもホロホロ崩れるようなスコーンの味は相変わらずじんわり染みた。レシピを見ると、何種類もの粉やこだわった調味料を調合した繊細な味だということがよく分かる。40歳でアメリカのポートランドに留学し、新しいお菓子作りのステージが開けた話を読んで、次に海外に行けるのはいつになるのかなと思いを馳せる。

 世界中どこにいても、本屋とパン屋があれば人生大体満足なんだよな、と悟ったのは、二十歳で上海にいる時だった。そんなことを思い出した。明日はベーグルを買いに行こう。健やかな一日のために。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?