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3-10.「一本目ツアー」花火大会

「夏」といえば皆さんはどんなイメージが浮かびますか?

何と言っても「花火」ですね。

全国規模を誇る新潟県「長岡花火大会」とかロマンティックな「諏訪湖花火大会」、前編「2-5.鞭も先に打たれた方が良い!」で述べた「ミュージック花火大会」など日本全国で数多くの花火大会があります。

夜の空を描く綺麗な花火は見るだけでロマンティックムードになり

恋にも落ちやすいし、それぞれのプライベートイベントにも楽しめる

夏の定番です。


旅行業界にも夏には「花火大会」のツアーが結構組まれています。

業界内競争も激しいので、もっと特別な花火、もっと珍し花火を開拓します。

一方、旅行会社で商品として初めて組まれたツアーを

初めて実施いわゆる「初売りツアー」を業界用語では「一本目ツアー」と言います。

出来たばかりのツアーを初めて行くのは参加されるお客様としてはわくわくになるべきです。

ところが、企画者や添乗員としては不安感もあります。

まだ、十分検証されてないので構成的に失敗する可能性もあるからです。

その責任をただのお詫びで済まない場合もあります。

2015年夏、

自分に3回目の花火大会ツアーのオーダーが下りました。

同年5月に1回目が「福島ミュージック花火」、

そして、このオーダーの前日に「熱海船上花火大会」が2回目でした。

この2回目ツアー終了時間と帰宅の終電の時間が間に合わず、

仕方なくて、ビジネスホテルで後泊したばかりでした。

先日の疲れがまだ残ったまま朝を迎えて「もう帰って休めば良いだろう」、

という錯覚中、

一通の電話が来ました。

……

そして翌日

また新たな「花火大会」ツアーバス添乗員席に座っている

自分を見つけました。(@_@)

しうです、花火次号地獄は夏の間無限循環します。

花火大会は大混雑、渋滞で勤務時間が夜遅くまで続くので添乗員としては疲れる仕事です。

といってもどんな仕事も自分が好きな仕事のみでするなんてあり得ないですね。

さあ、また行こうぜ!

今度は「山梨市花火大会(日帰り)」で、超ベテランの先輩との2台バスツアーでしたのでほっとしました。

ところが、このツアーがまさかの「一本目ツアー」でした。

誰も行ったことないツアー!

出来たばかりのツアー!

まあ、ベテラン先輩がいるのでいいだろう!

一本目ツアーは「先発」として後から続く人に役に立てる為、

資料写真を取ったり、各ポイント間の移動時間チャック、特異事項記録など

やることが多いです。

ここで問題追加、

花火大会だけでも精一杯なのに、

現地の農園で「桃狩り」もある!

ああ!

お客様としては嬉しいことです。

花火観に行くのに思いかけない桃狩りまで!


とろろが、一般的に花火大会会場は恐ろしいほど混雑です。

渋滞も必須です。

なので、なるべく早めに着いて、

さっさと帰る者が勝者です。


でも、指示は従うべきです。

「桃狩り」農場まで順調でした。

桃狩りが実は「桃一個狩り」ということだけ除いて…

(これって、「狩り」と言えるかな?)


農場から会場に行く道が混んでいました。

何となく暗い雲の様な嫌な予感が出ました。

実は、現場の混雑を防ぐため、時間制限を定め、

時間が過ぎると車両は通行止めになり、

指定場所で降りてシャトルバスで移動というルールがあったわけです。

観光バスも例外なし!

それが、渋滞で制限時間に間に合わず、

まさかの想定外事態がおこりました。

指定場所へ下車、

順番待ちで並んでシャトルバスへ乗り換え、

混雑なので途中で降りる、

会場まで約1キロを並んで歩く…

ここまで聞いてもし皆さんがお客様だったら

どんな反応をしますか?


怒るに決まっていますね!

「仕事の段取りが悪い!」

「一体、何を考えているんだ!」

先輩と自分はセットで怒られました。

渋滞に決まっているから

花火大会会場まで直行じゃなく、

とこかを寄る(行程を加える)のが

そもそも、無理なコースでした。


お詫びしながら、進みました。

やっと到着、指定席に案内しました。

花火を休楽しむ余裕なんてあるわけがないです。

旅行会社に報告した先輩には会社からの怒りが戻りました。

一体、どこが間違えたのか

落ち込んでいる先輩を慰安しながら

二人とも考えても、

指示通りした事しか思い出しませんでした。

もう経ったことは戻せません。

これからが大事です。

花火大会終了後の流れ、

道(動線)の下見(バス乗り場は離れていました。)、

後の流れシミュレーション、

「あっ、夕飯忘れた!」

「いいや、もう食べる場合じゃない!」

イベント終了。

夜遅い時間なので暗い会場で自分のお客様を

一人も残さず、把握してバス乗り場まで誘導する

ハードな作業でした。

混雑!混雑!

バス乗り場でもバスにすぐ乗れません。

バス待機場から順番で呼ばれて来るので

待つしかありません。

1時間待っても中々来ない…

疲れる、

お腹空く、

トイレへ行きたい、

眠い、

限界に極めたお客様のいらいら苦情が出ました。

空気はどんどん乱暴的になりました。

もしかしたら殴られるかも!

「おい、お金返せ!」

「おい、今度訴えるぞ!」

帰り道まで謝るしかなかったです。

企画者は自分じゃないけど、とにかく

ここでは自分がこのツアーの代表だから....

……

何となくツアーは終わりました。

旅行会社には予想とおり苦情が来ました。

「結婚記念日」イベントとして参加された方もいました。

自分が変えられない事態だったですが、

人間的にはとても申し訳なかったです。

清算作業で旅行会社でいろいろ反省会がありました。

他の添乗員だったらこんな結果を変えられたのか?

それは分かりません。

ただ、間違えたないのは先輩と自分は最善を尽くしました。

その努力を認めたお客様もいました。

アンケートでは、「渋滞や混雑など仕方無い部分もあったと思います。

その中で添乗員さんたちは努力しました。

あまりにも謝りすぎるのも良くないです。落ち着かないでください。

大変だったけど、今回の花火大会は最高でした!」

結局、このツアーは根本的に(時間的に)問題もあるという事を認められた様です。その後、続いたかどうかは聞いていませんでした。

先輩にも自分にも「トラウマ」を与えた厳しい思い出でしたが、

一人でも満足されたお客様がいれば

僕はまた頑張って立ち上がります!

「結婚記念日」として参加されたお客様、

本当に申し訳ございませんでした!

そして、先輩!

あの日は立派でしたよ!先輩は相変わらずベテランです!

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